俺は毛沢東!?

王太白

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「さあ、私室まで逃げてきてしまえば、もう安心じゃ。こんな所までは、元帥といえども入ってこられんからのぅ」
 みゆ婆はホッとしたように陽気につぶやくが、健作は顔色が悪く、苦しそうだった。私室に入るなり、ベッドに倒れこんでしまう。
「どうしたんじゃ? 苦しいのか?」
 みゆ婆はあわてて健作の額に手を当てる。
「いかん。すごい熱じゃ。主治医のリー医師を呼ばねば」
 みゆ婆の要請に応じて、毛沢東の主治医のリー医師が入室する。リー医師はじっくり診察すると、ホッと胸をなでおろしたように言った。
「ご心配には及びません。強いストレスから来る、一過性の発熱と腹痛です。安静にしていれば、半日で治まるでしょう。とにかく今日は早めに休ませてください」
 みゆ婆もホッとしたように、いすに崩れ落ちる。
「良かった。主席、大事に至らずに、本当に良かった……」
 しまいには、みゆ婆は健作に抱きついて泣き出した。
「では、それがしはこれで失礼いたします。くれぐれもお大事に」
 リー医師は一礼して退室する。とりあえず、私室の扉には「面会謝絶」の札をかけることで、当面の危機は乗り切ったが、このままでは、いつ元帥どもに下克上されるかわからない。
(それというのも、健作が親に過保護に育てられたために、毛沢東のような権力争いも革命戦争も体験しておらんためじゃ。毛沢東は学生時代に、町を占領しようとした軍閥の兵士たちに対し、町の学生や市民を率いて戦い、兵士たちを撃退したという武勇伝もあるからな。健作とは器が違いすぎる。健作は欲望も少ない替わりに、覇気も無いからのぅ……)
 しばらく考えこんだ末に、みゆ婆はリン元帥を呼び出すことにした。もっとも、当時のリン元帥といえば、器に注がれた水を怖がるため、妻がリンゴやマントウに含ませた水分を摂らせている、狂犬病のような状態だったが。
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