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気持ちの置き所
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「静流君は今回のこと、どう思ってた?」
今更だけど聞いてみたくなって口を開く。
言葉遊びをしているだけでは前に進めない。
「それは婚約解消のこと?
一連の流れ?」
「どっちも…かな?」
僕の言葉に静流君は考え込む。
「そうだなぁ…オレは、婚約解消じゃなくて婚約破棄。護にも向こうのΩにも慰謝料を請求して責任の所在をはっきりさせて、その上で全ての関係を断つ事が1番無難な終わり方だったと思ってた。
これは、一連の流れにも関係してくるんだけど…護は誤解してたんだ」
「誤解?」
思わぬ言葉に聞き返してしまう。
〈誤解〉だなんて、いったい何を言い出すのだろう?
「光流と護の婚約はいつでも解消できるって言うのは言ってあったよね?どちらかに好きな人ができたり何らかの理由ができたら話し合いの上婚約が解消できるってはじめに決めてあったんだよ。小学生の頃から決められるんだ、途中で心変わりしても仕方がない。その時は円満に話し合いでって、聞いてたでしょ?」
この言葉に僕は頷く。確かにそれは聞かされていた言葉。だから僕は…。
「その言葉を重くみて光流が頑張ってたのは知ってるよ。その覚悟も、その想いも、オレが1番近くで見てきたんだからね。
でもね、護はそうじゃなかった…。
護は光流との婚約、違うな。結婚を強要されてた。親から事あるごとに〈光流のことをちゃんと引き留めろ〉〈早く自分のものにしてにしまえ〉そう言われていたそうだ」
静流君は言いながら深いため息をつく。
「自由意志のはずが強要されていたんだ。義務という言葉で縛り付けられていては身動き取れなくなってもおかしくはない」
「じゃあ、僕のこと好きじゃなかったの?」
言ってしまった自分の言葉に傷付く。
僕はあんなにも恋焦がれていたのに、それなのにあの想いが一方通行だっただなんて…。
「それは違うよ。
光流のことは好きだっただろうし、大切にしていたのも本当だ。
近くで見ていてその気持ちに嘘があったとは思わない。
ただ、それ以上に大切に思う相手ができてしまったせいで護が自身雁字搦めになってしまい今回の事に繋がったのだと思ってる…」
さっきまでは軽く言葉遊びをしていたのに、気付けば重い空気がこの空間を支配している。
「詳細を聞いたところでどうにもならないし、言い訳じみた事は聞きたくないから追求はしなかった。ただ、婚約のそもそもの定義を聞いた護はショックを受けていたよ…。
光流が挑発フェロモンに当てられて毎回体調を崩してたこと、そのストレスでヒートが乱れた事。
光流が早い段階で護の裏切りに気づいていたことを伝えた時には愕然としていたよ」
静流君は事実だけを淡々と伝えてくれる。
「そして、護が番を持ったことによってそのショックでヒートによる眠りについた事を伝えた時にはショックを受ける以上のもっと大きな痛みを耐えているように見えた。
オレとちゃんと話のできる環境を整えていたら違ったのかもな…。それなりに親しくしていたつもりだったけれど、それでも友達になれてなかったのかもしれない。オレは護にとってはそこまで気安い関係ではなかったんだな」
そう言って〈ごめんね〉と謝る。
静流君は何も悪くないのに。
悪いのは甘えてばかりだった僕なのに。
話を聞く限り護君も悪くないのだろうか?
なら、悪いのは僕だけなのだろうか?
考えれば考えるほど気持ちの置き所をどこに持っていけばいいのかわからなくなる。
僕の気持ちは必要のないものだったのだろうか。
僕が護君に好意を向けなければ防げた事だったのが。
考えても考えても気持ちはループするだけで終点が見えない。
僕が悪い?
僕は悪くない?
護君が悪い?
護君は悪くない?
静流君が…。
向こうのお父さんが…。
護君のΩが…。
「光流!」
突然大きな声がして静流君に腕を掴まれる。
「包帯、取れちゃうよ?」
その顔を見ると悲しそうな顔をして掴んだ僕の腕を見ている。僕の腕は包帯が取れかけ、内出血した肌が見えてしまっていた。
無意識のうちに掻きむしってしまったらしい。
「先生、呼ぼうか」
静流君の言葉に僕は頷くことしか出来なかった。
今更だけど聞いてみたくなって口を開く。
言葉遊びをしているだけでは前に進めない。
「それは婚約解消のこと?
一連の流れ?」
「どっちも…かな?」
僕の言葉に静流君は考え込む。
「そうだなぁ…オレは、婚約解消じゃなくて婚約破棄。護にも向こうのΩにも慰謝料を請求して責任の所在をはっきりさせて、その上で全ての関係を断つ事が1番無難な終わり方だったと思ってた。
これは、一連の流れにも関係してくるんだけど…護は誤解してたんだ」
「誤解?」
思わぬ言葉に聞き返してしまう。
〈誤解〉だなんて、いったい何を言い出すのだろう?
「光流と護の婚約はいつでも解消できるって言うのは言ってあったよね?どちらかに好きな人ができたり何らかの理由ができたら話し合いの上婚約が解消できるってはじめに決めてあったんだよ。小学生の頃から決められるんだ、途中で心変わりしても仕方がない。その時は円満に話し合いでって、聞いてたでしょ?」
この言葉に僕は頷く。確かにそれは聞かされていた言葉。だから僕は…。
「その言葉を重くみて光流が頑張ってたのは知ってるよ。その覚悟も、その想いも、オレが1番近くで見てきたんだからね。
でもね、護はそうじゃなかった…。
護は光流との婚約、違うな。結婚を強要されてた。親から事あるごとに〈光流のことをちゃんと引き留めろ〉〈早く自分のものにしてにしまえ〉そう言われていたそうだ」
静流君は言いながら深いため息をつく。
「自由意志のはずが強要されていたんだ。義務という言葉で縛り付けられていては身動き取れなくなってもおかしくはない」
「じゃあ、僕のこと好きじゃなかったの?」
言ってしまった自分の言葉に傷付く。
僕はあんなにも恋焦がれていたのに、それなのにあの想いが一方通行だっただなんて…。
「それは違うよ。
光流のことは好きだっただろうし、大切にしていたのも本当だ。
近くで見ていてその気持ちに嘘があったとは思わない。
ただ、それ以上に大切に思う相手ができてしまったせいで護が自身雁字搦めになってしまい今回の事に繋がったのだと思ってる…」
さっきまでは軽く言葉遊びをしていたのに、気付けば重い空気がこの空間を支配している。
「詳細を聞いたところでどうにもならないし、言い訳じみた事は聞きたくないから追求はしなかった。ただ、婚約のそもそもの定義を聞いた護はショックを受けていたよ…。
光流が挑発フェロモンに当てられて毎回体調を崩してたこと、そのストレスでヒートが乱れた事。
光流が早い段階で護の裏切りに気づいていたことを伝えた時には愕然としていたよ」
静流君は事実だけを淡々と伝えてくれる。
「そして、護が番を持ったことによってそのショックでヒートによる眠りについた事を伝えた時にはショックを受ける以上のもっと大きな痛みを耐えているように見えた。
オレとちゃんと話のできる環境を整えていたら違ったのかもな…。それなりに親しくしていたつもりだったけれど、それでも友達になれてなかったのかもしれない。オレは護にとってはそこまで気安い関係ではなかったんだな」
そう言って〈ごめんね〉と謝る。
静流君は何も悪くないのに。
悪いのは甘えてばかりだった僕なのに。
話を聞く限り護君も悪くないのだろうか?
なら、悪いのは僕だけなのだろうか?
考えれば考えるほど気持ちの置き所をどこに持っていけばいいのかわからなくなる。
僕の気持ちは必要のないものだったのだろうか。
僕が護君に好意を向けなければ防げた事だったのが。
考えても考えても気持ちはループするだけで終点が見えない。
僕が悪い?
僕は悪くない?
護君が悪い?
護君は悪くない?
静流君が…。
向こうのお父さんが…。
護君のΩが…。
「光流!」
突然大きな声がして静流君に腕を掴まれる。
「包帯、取れちゃうよ?」
その顔を見ると悲しそうな顔をして掴んだ僕の腕を見ている。僕の腕は包帯が取れかけ、内出血した肌が見えてしまっていた。
無意識のうちに掻きむしってしまったらしい。
「先生、呼ぼうか」
静流君の言葉に僕は頷くことしか出来なかった。
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