貴方を忘れる

戒月冷音

文字の大きさ
39 / 157

第38話

しおりを挟む
「もういい、もういいよ。大丈夫だ」
その声は、私の耳の後ろから聞こえる。
「コンラート、様?」
名前を呼ぶと、肩に手を置きゆっくりと体を起こす。
「うん・・・」
そう返事をした後、ゆっくりと目を開くと、さっきまで、少し不安な色を含んでいた瞳は、スッキリとしていた。

「悩みは?」
「君のお陰で、なくなったよ」
「私の、お陰?」
「そう、俺はこの・・・オッドアイが、嫌いだったんだ。
 子供の頃から、皆と違う。そして、婚約者にも、気持ち悪いと言われた。
 父と母は、皆と同じだと言うけど、俺は同じ色の瞳の方がいいと思っていた。
 だから、友は少なく、誰の目も見れなかったんだ。
 でも今君が、その気持ちをなくしてくれた」
「私、そんなこと、言った?」
「言ったよ。父と母と同じだって。
 確かに、俺の瞳は父のものと母のものだ。そして両目に紫。その紫が同じだと」
「えぇ・・・確かに、そう言ったわ」
「そのお陰で、気付けたんだ。
 右は父、左は母から受け継いだ。
 そこに、紫が入った。
 だから、この色になった。そう、思うことにした」
コンラート様はそう言うと、私の前に座り直し、まっすぐ私を見た。

私には、前の婚約者の記憶がほとんどないが、アントニーと言う名前の婚約者がいた。
多分・・・こんな風に向かい合って座り、お茶をしたことがあると思う。
けれど、覚えていない以上、殿方とのお茶は、これが始めてと言うことになる。

でも・・・
「あ、あの、そんなに、見つめられては・・・」
「ん~・・・ごめんね。でも、見ていたいんだ」
そう言われた私は、少しうつむき加減で、クッキーを食べる。
少し除き見ると、コンラート様はにっこりと微笑みながら、コーヒーを飲んでいる。

私達はそのまま、30分くらい無言で過ごした。
その間、少しでもコンラート様に慣れようと顔を上げるが、コンラート様の無言の微笑みに、見事撃沈されたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

石ころの結婚

有沢楓花
恋愛
 ――政略結婚。  ぼんやりものでその辺の石ころを自認する、子爵令嬢ハリエットの婚約者・ルークは、第三王子の婚約者である伯爵令嬢・イーディスを見つめ続けていた。  あろうことか婚約式で恋に落ちたハリエットは、彼の視界に入るためにとイーディスの取り巻きになる。  しかしそこにあったのは、一見仲睦まじく見える第三王子とイーディス、その義弟からのイーディスへの片思いと、大人の事情に振り回されるばかりの恋だった。  ハリエットは自分の想いは秘めたまま、ルークを応援しようと決めたが……。  この作品は他サイトにも掲載しています。

自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき
恋愛
令嬢エルアナは、ヴィンセントという婚約者がいた。 しかし彼は虚言癖のあるいとこ、リリアンの嘘に騙されてエルアナとの大切な約束を破り続ける。 「すまない、リリアンが風邪を引いたらしくて……」 エルアナが過労で倒れても、彼はリリアンの元へ走り去る始末。 ついに重大な婚約披露パーティまでも欠席した彼に、エルアナは婚約者への見切りをつけた。 「さようなら、ヴィンセント」 縋りつかれてももう遅いのです。

妹を選んで婚約破棄した婚約者は、平民になる現実を理解していなかったようです

藤原遊
恋愛
跡継ぎとして育てられた私には、将来を約束された婚約者がいた。 ――けれど彼は、私ではなく「妹」を選んだ。 妹は父の愛人の子。 身分も立場も分かったうえでの選択だと思っていたのに、 彼はどうやら、何も理解していなかったらしい。 婚約を破棄し、妹と結ばれた彼は、 当然のように貴族の立場を失い、平民として生きることになる。 一方で、妹は覚悟を決めて現実に向き合っていく。 だが彼だけが、最後まで「元に戻れる」と信じ続けていた。 これは、誰かが罰した物語ではない。 ただ、選んだ道の先にあった現実の話。 覚悟のなかった婚約者が、 自分の選択と向き合うまでを描いた、静かなざまぁ物語。

冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─

あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」 没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。 しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。 瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。 「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」 絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。 嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。

醜女公爵令嬢の私が新婚初夜に「お前の事は愛することはない」と言われたので既成事実を作ったら、冷酷騎士団長の夫が狂ったように執着してきました

スノウマン(ユッキー)
恋愛
醜女と馬鹿にされる公爵令嬢レティーナは、自分とは違い子供は美形になって欲しいと願う。その為に国一番のイケメンである女嫌いで笑わない事で有名な冷酷な騎士団長カイゼルの子種が欲しいと考えた。実家も巻き込み政略結婚でカイゼルと結婚したレティーナだったが彼は新婚初夜に「お前の事は愛することはない」と告げてきた。だがそれくらいレティーナも予想していた。だから事前に準備していた拘束魔法でカイゼルの動きを封じて既成事実を作った。プライドを傷つけられカイゼルは烈火の如く怒っているだろうと予想していたのに、翌日からカイゼルはレティーナに愛を囁き始めて!?

夫に君も愛人を作ればいいと言われましたので

麻麻(あさあさ)
恋愛
「君も愛人を作ればいい」と夫に言われたので売り言葉に買い言葉で出会った愛人候補は自分が魔法使い伯爵と言いました。 全15話。プロローグから4話まで一挙公開。 翌日からは20時に2話ずつ公開。11日は最終話まで3話一挙公開。 登場人物 マーリン・ダグラス 結婚2年目にして夫の不倫を問い詰めたら黒だった令嬢。母に聞かされた結婚は夫となる人を大事にという言葉を守ってるが夫のギルバートにブチギレてこの度愛人を探すと決める。 デミトリアス・ドラモンドまたはアロン マーリンが仮面舞踏会で知り合った自称魔法使い伯爵。次の日にマーリン好みの執事アロンに姿を変えて彼女の屋敷に来る。 ギルバート・ダグラス マーリンの夫で伯爵。ギルと呼ばれている。愛人を作れば発言をした。 シェリー・モーヴ ギルバートの愛人 エミリー マーリンの親友で既婚者。 ララとリリー マーリンの屋敷のメイド達。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

絵姿

金峯蓮華
恋愛
お飾りの妻になるなんて思わなかった。貴族の娘なのだから政略結婚は仕方ないと思っていた。でも、きっと、お互いに歩み寄り、母のように幸せになれると信じていた。 それなのに……。 独自の異世界の緩いお話です。

処理中です...