そして、夜明けが訪れた

いといしゅん

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仮想・現実

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夢を見ていた。
いや、夢というよりは記憶と言った方が正しいか。
その記憶は私がここにくる前のことだ。
私は確かに聞いた。聞こえてしまった。
騒がしかった商店街を静寂に包み込んだあの大きなブレーキ音を。
私は見た。見てしまった。
私の目前へと迫る巨大な影を。
私は気づいた。気づいてしまった。
彼が私を庇うように影の前に立ちはだかり、私を突き飛ばす瞬間を。
全身を不快すぎる悪寒がめぐる。
それにともなって吐き気が込み上げてくる。
見ていた夢ーー記憶は、いつのまにか白く、いや、黒く……
いや、無色になって虚無へと溶けていった。
記憶が虚無へと飽和した。
私は何か大きな喪失感を抱く。
そこに残ったのは、わずかな悪寒と未だ無くならない吐き気だけだった。
未だ無くならない?
さっきまでも吐き気があったのだろうか。
ポッカリと空いた心の穴を突き刺すように吐き気が増してくる。
私は虚無が広がる記憶の中で一人悶絶していた。
そこで私は気づく、そうかこれは夢なのだとーーーーーー

そこでやっと目が覚めた。
全身に汗をかいていて、服はぐしょぐしょに濡れていた。
「夢、か……」
そう呟いた。その直後、身体中に悪寒がはしり、吐き気が込み上げてくる。
ダメだ。あの現場を思い出すな。
私は一人、部屋の中で悶絶するのだった。

--------------

夢を見ていた。
過去にこんなことを体験した記憶はないからうきっとただの夢なんだろう。
でもなぜだかこの夢は親近感があって、異常なほど身近に感じられる。
本当になぜなのだろう。
僕は確かに聞いた。聞いてしまった。
僕の名前をただただ悲しそうに叫ぶ彼女の声を。
僕は見た。見てしまった。
僕の方へと必死に手を伸ばす彼女を。そして、その手は僕に触れるどころかどんどんと離れていってしまうことを。
僕は気づいた。気づいてしまった。
自分の体は既に自由がないことを。
全身を不快すぎる悪寒がめぐる。
それにともなって吐き気が込み上げてくる。
夢の中で僕の体が崩れた。
崩壊したのだ。
僕の身体は夢の世界へと溶け、飽和した。
僕は自分の身体を探した。
いや、体なんて本当はどうでもよかった。
僕は自分の心を探した。
僕の心はどこにいってしまったのか。
大きな喪失感が僕を襲う。
しかし僕は気づく、そうかこれは夢なのだとーーーー

そこでやっと目が覚めた。
全身に汗をかいていて、服はぐしょぐしょに濡れていた。
「夢、か……」
そう呟いた。その直後、身体中に悪寒がはしり、吐き気が込み上げてくる。
あれは夢だ。現実とはなんの関係もない。
僕は一人、部屋の中で項垂れるのだった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

堅他不願@お江戸あやかし賞受賞

 受験勉強など木っ端微塵になりそうな出だしですね。

2019.06.16 いといしゅん

木っ端微塵になりますね(確信)(笑)

解除

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