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荒野に生きる青年ウォルター
第4話 親子の絆
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父達が帰ってきたのは襲撃から2時間程経ってからだった。
聞けば父達も放牧中に襲われたのだという。
ここでも兄の射撃は群を抜いており、父と共に数名を射殺して撃退したらしい。
しかし、それまでの襲撃とは違って本格的な物であった事に不安を感じた父の判断で急いで帰宅してくれたのだ。
『父さん…ビリーが、家が…』
夕陽に照らされた父がどんな顔をしていたのか、僕は自責の念と力なさに項垂れて顔を上げる事ができないでいた。
だが父は想像を超える強い男だった。
僕の方へ向き直ると肩を力強く掴み、真っ直ぐな瞳で言い放った。
『男がこの程度の事で悄気るな!
家ならまた建てれば良い。
それよりも大事な事があるだろう!』
ビリー…!僕は何よりも大切な弟の姿を思い起こした。
疲れきった全身に再び力が漲るのを感じる。
どうすればいいのか、答えはもう出ていた。兄の方へ視線を向けると帽子を上げて余裕の笑みを浮かべている。
ビリーを取り戻す!僕達は焼け落ちた家を後に馬へと跨がった。
____________________
ヴァンの牧場に到着する頃には太陽は地平線の彼方《かなた》へと沈もうとしていた。
辺りは薄い暗闇に包まれつつある。
僕は逸る気持ちを抑えられずに館へ乗り込もうと踏み出したが、直後に父は手を引いて僕を制止させ、頭を押さえて低い体制をとらせながら耳打ちした。
『こっちは3人しかいないんだ。
それにビリーがどこに囚われているのか分からない内は下手に動こうとするな』
兄も頷いて父の意見に同意した。
僕は冷静さを欠いていた事を反省し、父にどうすれば良いのかを改めて尋ねた。
『いいか、このまま1時間も待てば完全に陽が落ちて夜になる。
暗闇に紛れて館に近付き、ビリーの居場所を突き止めるんだ』
1時間…ビリーは直ぐそこなのに、夜まで待たなければならないなんて!
拳を握り唇を噛み締めていた心情を察してくれたんだろう、ウィリアムが軽く僕の胸を小突いて言った。
『落ち着けよワット。ビリーを助けるんだろう?
これからヒーローになるってのに、そんな湿気た顔をするな』
僕は急に幼い頃のあだ名で呼ばれた事で奇妙な懐かしさを思い出していた。
ずっと昔、牧場の隅で父に内緒で持ち出した銃を使って空き缶を的にして遊んでいた頃の記憶。
何度やってもかすりもしない僕を見かねて兄は射撃の手解きをしてくれたっけ。あの頃から兄には銃の腕で全く敵わなかったなぁ。
『その後に銃声を聞いて飛んできた父さんから拳骨をもらったのを今でも憶えてるぞ』
僕は 戯けながら兄へ10年越しの抗議をしたが、ウィリアムは笑い声を圧し殺しながら 惚けた表情で知らん振りを決め込んでいた。
聞けば父達も放牧中に襲われたのだという。
ここでも兄の射撃は群を抜いており、父と共に数名を射殺して撃退したらしい。
しかし、それまでの襲撃とは違って本格的な物であった事に不安を感じた父の判断で急いで帰宅してくれたのだ。
『父さん…ビリーが、家が…』
夕陽に照らされた父がどんな顔をしていたのか、僕は自責の念と力なさに項垂れて顔を上げる事ができないでいた。
だが父は想像を超える強い男だった。
僕の方へ向き直ると肩を力強く掴み、真っ直ぐな瞳で言い放った。
『男がこの程度の事で悄気るな!
家ならまた建てれば良い。
それよりも大事な事があるだろう!』
ビリー…!僕は何よりも大切な弟の姿を思い起こした。
疲れきった全身に再び力が漲るのを感じる。
どうすればいいのか、答えはもう出ていた。兄の方へ視線を向けると帽子を上げて余裕の笑みを浮かべている。
ビリーを取り戻す!僕達は焼け落ちた家を後に馬へと跨がった。
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ヴァンの牧場に到着する頃には太陽は地平線の彼方《かなた》へと沈もうとしていた。
辺りは薄い暗闇に包まれつつある。
僕は逸る気持ちを抑えられずに館へ乗り込もうと踏み出したが、直後に父は手を引いて僕を制止させ、頭を押さえて低い体制をとらせながら耳打ちした。
『こっちは3人しかいないんだ。
それにビリーがどこに囚われているのか分からない内は下手に動こうとするな』
兄も頷いて父の意見に同意した。
僕は冷静さを欠いていた事を反省し、父にどうすれば良いのかを改めて尋ねた。
『いいか、このまま1時間も待てば完全に陽が落ちて夜になる。
暗闇に紛れて館に近付き、ビリーの居場所を突き止めるんだ』
1時間…ビリーは直ぐそこなのに、夜まで待たなければならないなんて!
拳を握り唇を噛み締めていた心情を察してくれたんだろう、ウィリアムが軽く僕の胸を小突いて言った。
『落ち着けよワット。ビリーを助けるんだろう?
これからヒーローになるってのに、そんな湿気た顔をするな』
僕は急に幼い頃のあだ名で呼ばれた事で奇妙な懐かしさを思い出していた。
ずっと昔、牧場の隅で父に内緒で持ち出した銃を使って空き缶を的にして遊んでいた頃の記憶。
何度やってもかすりもしない僕を見かねて兄は射撃の手解きをしてくれたっけ。あの頃から兄には銃の腕で全く敵わなかったなぁ。
『その後に銃声を聞いて飛んできた父さんから拳骨をもらったのを今でも憶えてるぞ』
僕は 戯けながら兄へ10年越しの抗議をしたが、ウィリアムは笑い声を圧し殺しながら 惚けた表情で知らん振りを決め込んでいた。
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