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第53話 計画は大切ですよ
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当たり前だけどずっと走っていたら真っ暗になった。それも出て三時間程で、ちょうど山の中。明かりなどなく真っ暗。ランプで明かりを灯して走っていたけど、マトルドも怖いらしく走ってくれなくなった。
ここで夜を越す気?
「ねえ、マトルド。僕が引っ張ってあげるから走ってよう……」
ブルルルっと、嫌だと答えた様に頭を振って動いてくれない!
「チェト、どうしよう。怖いよう」
『だから計画性を持てと言ってあっただろう。ロマドなら朝早く発てば、その日のこの時間にはついていただろう』
「え? それ発つ前に言ってよう~」
『……まあ、あれだ。動かないんだったらここで野宿だな』
「え~!! こんな山の中で?」
『仕方がないであろう。われがいる。心配するな』
「チェト~」
チェトをギュッと抱きしめる。
『私もいるわ。ここで休みましょう』
『そうだな。ここで休もう』
「うん」
僕は、マトルドを引っ張って脇へ入った。大きな木を背に座り込む。ランプの明かりがあるとはいえ、自分の周り以外は真っ暗だ。
『ところでロマド。寝るのに必要な物はないのか?』
「え? あ、チェト達用のお布団持って来るの忘れたね!」
『違うわ! ロマドが寝る用にだ。毛布とか外套とか羽織るモノもないのか?』
あ、僕の事か。チェトは優しいなぁ。
「うーん。野営するつもりなかったから。外套も事もすっかり忘れてた」
『少しは学べ! 使う気がなくても用意しないといざという時に困るだろう。というか、困った事になっているではないか』
「うん。ごめんね。寒い?」
僕は、チェトを抱きしめた。
『だから……そうではないと言っている』
「うん。ごめんね。僕、ダメダメだね。やっぱり、冒険者に向いていないかな?」
『そ、そんな事はないと思うぞ。何事も経験だ。ロマドも経験を積めばきっと普通の冒険者になれるだろう』
「ありがとう、チェト」
『あまあまねぇ。寒くない? くっついていいわよ』
『おぬしもだろう』
「ありがとう。二人共。村に行ったら買うよ」
『う、売っているといいな』
「うん」
気づけば、マトルドも近くで座り込んでいた。マトルドも疲れたよね。
「あ、いけない! 馬って何食べるの? 草だけでいいの?」
『食べたくなれば食べるだろう。ただ水は必要だから水辺に寄ってほしい』
「うん。わかった。朝、水辺に行こう」
チェトがいてよかった。
□
ちゅんちゅんと可愛い鳥のさえずり、木々の優しいささやきが聞こえる。なんで?
『おーい。いつまで寝ているのだ。あまり遅くまで寝ていると、村に着くのが夜中になるぞ』
村? 村!!
そうだった。冒険の途中だった。
「あ、おはよう……」
『おはよう』
『おはよう、ロマド。起きたようね。さあ水辺に行きましょう』
「うん? あれ? マトルドは?」
『先に水辺に行った』
「そう……うん? 二人共何故か凄く汚れているね……ぎゃ~~!!」
チェトは赤く染まっていた! これは血じゃない? よく見るとサザナミもそうだ。黒いからわかりづらいけど。
『だ、大丈夫だ。一角兎を食しただけだ』
「え~~!!」
『角は、ちゃんと持って来たわよ』
「ぎゃ~~!! 血だらけ! もう二人共何やってるのさ!!」
僕が寝ている間に、お腹が空いて一角兎を食べちゃったみたいだ。うん。二人を責めてはいけない。僕が寝坊したからお腹を空かせたんだ。
「とりあえず、水辺に行って体を洗おう!」
『わかった。こっちだ』
走って水辺に行くとマトルドが全身濡れた状態で、草を食べている。
『我らも水浴びをしよう』
『そうね』
「うん。そうして。その間にマトルドを洗うから」
石鹸を出し草を食べているマトルドをシャンプーする。
「いい子だね。うん? あれ、ちょっと血がついている?」
チェト達と触れたんだ。食べなくても汚れちゃてるよ。
「あ、どうやってジャバーしようか?」
桶なんて持ってきてない。
「あ……」
泡が付いたまま水の中へ入って行った。
いいのかな、あれ?
『さあ、われも頼む』
『私もお願いするわ』
「うん。ふんふんふふん♪」
二人もアワアワになり、水の中に飛びこんだ。
乾かす方法がないので、三人共ブラッシングのみ。でもつやつやとフワフワになった。
角も洗うとピカピカになった。
「じゃ、誰もいないし、僕も走るよ」
マトルドの手綱を持って走り出した。
道に戻って道なりに走ると凄い光景に出くわした。何故か道の脇が赤黒く汚れていた。もしかしてここまで来て、一角兎を倒したのかもね。
次からは、肉の確保が問題かも。せめて焼いて食べさせないと!
ここで夜を越す気?
「ねえ、マトルド。僕が引っ張ってあげるから走ってよう……」
ブルルルっと、嫌だと答えた様に頭を振って動いてくれない!
「チェト、どうしよう。怖いよう」
『だから計画性を持てと言ってあっただろう。ロマドなら朝早く発てば、その日のこの時間にはついていただろう』
「え? それ発つ前に言ってよう~」
『……まあ、あれだ。動かないんだったらここで野宿だな』
「え~!! こんな山の中で?」
『仕方がないであろう。われがいる。心配するな』
「チェト~」
チェトをギュッと抱きしめる。
『私もいるわ。ここで休みましょう』
『そうだな。ここで休もう』
「うん」
僕は、マトルドを引っ張って脇へ入った。大きな木を背に座り込む。ランプの明かりがあるとはいえ、自分の周り以外は真っ暗だ。
『ところでロマド。寝るのに必要な物はないのか?』
「え? あ、チェト達用のお布団持って来るの忘れたね!」
『違うわ! ロマドが寝る用にだ。毛布とか外套とか羽織るモノもないのか?』
あ、僕の事か。チェトは優しいなぁ。
「うーん。野営するつもりなかったから。外套も事もすっかり忘れてた」
『少しは学べ! 使う気がなくても用意しないといざという時に困るだろう。というか、困った事になっているではないか』
「うん。ごめんね。寒い?」
僕は、チェトを抱きしめた。
『だから……そうではないと言っている』
「うん。ごめんね。僕、ダメダメだね。やっぱり、冒険者に向いていないかな?」
『そ、そんな事はないと思うぞ。何事も経験だ。ロマドも経験を積めばきっと普通の冒険者になれるだろう』
「ありがとう、チェト」
『あまあまねぇ。寒くない? くっついていいわよ』
『おぬしもだろう』
「ありがとう。二人共。村に行ったら買うよ」
『う、売っているといいな』
「うん」
気づけば、マトルドも近くで座り込んでいた。マトルドも疲れたよね。
「あ、いけない! 馬って何食べるの? 草だけでいいの?」
『食べたくなれば食べるだろう。ただ水は必要だから水辺に寄ってほしい』
「うん。わかった。朝、水辺に行こう」
チェトがいてよかった。
□
ちゅんちゅんと可愛い鳥のさえずり、木々の優しいささやきが聞こえる。なんで?
『おーい。いつまで寝ているのだ。あまり遅くまで寝ていると、村に着くのが夜中になるぞ』
村? 村!!
そうだった。冒険の途中だった。
「あ、おはよう……」
『おはよう』
『おはよう、ロマド。起きたようね。さあ水辺に行きましょう』
「うん? あれ? マトルドは?」
『先に水辺に行った』
「そう……うん? 二人共何故か凄く汚れているね……ぎゃ~~!!」
チェトは赤く染まっていた! これは血じゃない? よく見るとサザナミもそうだ。黒いからわかりづらいけど。
『だ、大丈夫だ。一角兎を食しただけだ』
「え~~!!」
『角は、ちゃんと持って来たわよ』
「ぎゃ~~!! 血だらけ! もう二人共何やってるのさ!!」
僕が寝ている間に、お腹が空いて一角兎を食べちゃったみたいだ。うん。二人を責めてはいけない。僕が寝坊したからお腹を空かせたんだ。
「とりあえず、水辺に行って体を洗おう!」
『わかった。こっちだ』
走って水辺に行くとマトルドが全身濡れた状態で、草を食べている。
『我らも水浴びをしよう』
『そうね』
「うん。そうして。その間にマトルドを洗うから」
石鹸を出し草を食べているマトルドをシャンプーする。
「いい子だね。うん? あれ、ちょっと血がついている?」
チェト達と触れたんだ。食べなくても汚れちゃてるよ。
「あ、どうやってジャバーしようか?」
桶なんて持ってきてない。
「あ……」
泡が付いたまま水の中へ入って行った。
いいのかな、あれ?
『さあ、われも頼む』
『私もお願いするわ』
「うん。ふんふんふふん♪」
二人もアワアワになり、水の中に飛びこんだ。
乾かす方法がないので、三人共ブラッシングのみ。でもつやつやとフワフワになった。
角も洗うとピカピカになった。
「じゃ、誰もいないし、僕も走るよ」
マトルドの手綱を持って走り出した。
道に戻って道なりに走ると凄い光景に出くわした。何故か道の脇が赤黒く汚れていた。もしかしてここまで来て、一角兎を倒したのかもね。
次からは、肉の確保が問題かも。せめて焼いて食べさせないと!
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