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第十一章 彼らの選択

第百二十七話

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 「う……」

 うめき声が聞こえふと目をやると、レオナールがうずくまっていた。

 「レオ殿!」
 「……ずっと、発作は起きていなかったのに……。はぁ……はぁ……」
 「薬! 薬は?」

 ルーファスの言葉に弱弱しく、レオナールは首を横に振った。

 「ランフ!」
 「はい!」

 ランフレッドは、慌てて部屋を飛び出して行った。ブラッドリーを呼びに行ったのだ。

 (え? どういう事? レオナール王子って病気持ちだったの? 全然そんな素振りなかったのに!)

 「ダメだ。ちょっと見ててくれ」

 ルーファスは、イリステーナな達にそう言うと、奥の部屋に入って行った。
 イリステーナもティモシーも何が起きたのかわからなかった。
 バン!
 勢いよくブラッドリーが入って来ると、倒れ込んだレオナール―を抱き上げベットに横に寝かせた。

 「レオナール様。どうして薬を常備しておかないのですか……」

 そうレオナールに話しかけ、ブラッドリーは部屋を見渡す。

 「ルーファス王子はどちらに?」
 「あ、奥の部屋に……」

 指差しながらティモシーはそう答えた。そうするとブラッドリーは、その部屋に入って行った。

 「あの部屋って?」
 「調合室」

 ティモシーの質問にぼぞっとランフレッドは答えた。
 ブラッドリーは奥の部屋から出てくると、レオナールを少し起こし口の中に薬を流し込む。

 「口に含んで下さい。直ぐに楽になりますので……」
 「げっほ。はぁはぁ……はぁ……」

 次第に発作は治まって行く。

 「すみません。……ご迷惑を……お掛けました……」
 「少し横になりましょう」

 ブラッドリーは、レオナールをそのまま横に寝かせた。

 「一体何があって発作が……」

 ブラッドリーは振り返り問いかける。
 ルーファスは、チラッとティモシーを見て答える。

 「ティモシーの母親の一言が引き金だろうな」
 「え! ご、ごめんなさい! なんか、今日の母さんはいつもと違って別人で。あんな母さん、俺は初めて見た……」

 ティモシーは、謝ると俯いた。

 「虚勢を張っていたのかもな」

 ルーファスがぼそっと言う。

 「きっと……私達を遠ざけたかったのでしょう。彼女はもしかしたら……一人で全部背負う気なのかもしれま……せん」

 そうレオナールも言った。

 「え? それって、何をする気でいる……って……」

 顔を上げレオナールを見て話していたティモシーは途中で話をやめた。彼はすやすやと眠ったようだからだ。

 「ね、寝たのか? 先ほど混ぜた物って……」

 ルーファスが言うと、ブラッドリーは頷く。

 「この頃、あまり眠れないようでしたので……」
 「眠り薬混ぜたのかよ」

 ボソッとランフレッドは言う。

 「あなたって調合出来るのね」

 イリステーナの言葉にルーファスは片眉をピクッとさせる。

 「私は、薬師の国の王子なのですが?」
 「あ、あらごめんなさい」
 「まだ、医者の資格は持ってないけどな……」

 ボソッと言うランフレッドをチラッとルーファスは見ると

 「君は一言多いんだ!」

 と、言った。

 「俺、どうしたらいいんでしょうか? 母さんについて行った方がいいんでしょうか? それともこの国に残って一年間勤め上げた方がいいんでしょうか? ……でも、俺、ここに居ても一年間勤め上げれる気がしないんだけど……」

 ティモシーのこぼした言葉に誰も返事を返せなかった。
 結局の所、何もわからないままだったのだから。
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