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第十四章 パンドラの箱
第百六十一話
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「俺、協力はしないって言っただろ? ここを出る方法が見つかったんだ。母さんと一緒に行くよ」
「てめぇ」
片膝を付き腹に手をやりながら、トンマーゾはティモシーを睨む。
「最初からつけておけばいいものを付けておかないからでしょ?」
そう言ってエイブも一階に下りてきた。
ガチャッとドアが開く音が聞こえ皆、ドアに注目した。
「迎えに来ましたよ」
そう言ってミュアンが入って来た。その後ろにはザイダがいた。
「ご、ごめんなさい。指輪を奪われて……」
消え去りそうな声でザイダが言った。
「ザイダさん! 無事でよかった」
エイブは、彼女に駆け寄る。驚く事にミュアンは、彼には攻撃を仕掛けなかった。エイブは無事にザイダの元に駆け寄った。
「母さん。俺、母さんと行くからだからお願いが……」
「ティモシー。まずは組織の人間を何とかしてからにしましょうか」
言い終わるか終わらないか、二階から魔術がミュアンに放たれた。それは、ミュアンの結界によって吸収される。
「ちょっと! 俺達もいるんだけど!」
「うるさいわね! だったら後ろから襲うぐらいしなさいよ!」
チャンスはいくらでもあっただろうと言われるも、エイブは魔術は使えない。武器すら持っていない。攻撃を出来るはずもない。それはクレも知っている事である。
「無茶言うなよ!」
言い返したエイブは、下りて来たクレを見てハッとする。彼女は、レオナールの首筋にナイフを突きつけながら下りてきた。
「あなたが人質になるとはね……。ティモシー、早くこっちにきなさい!」
「………」
ティモシーは戸惑う。レオナールは死ぬ気かもしれないと思ったからだ。
「行きなさい、ティモシー」
レオナールはそう声を掛けるも、ティモシーは横に首を振る。
「母さんお願い、レオナール王子も助けて!」
「助けたいのならあなたが助けなさい」
「え?!」
返したミュアンの言葉にティモシーだけじゃなく、皆驚いた。それは、レオナールを助ける気はないとも捉える事が出来るからである。
「わかっているでしょう? 私達は、その王子の国に狙われているのよ? 何故助けなくてはならないのかしら?」
言われてみればそうだ。助ける義理などない。
「あら? もう一人の王子は助けたって聞いたけど?」
「彼を助けたのは、陛下にお願いされたからよ」
陛下の命令だったからだと言う。
「もう母さんはどうしてそんな事ばかり!」
ティモシーは、クレに走り出した!
「あぁ、もう!」
人質だったレオナールを突き飛ばすように放すと、迫りくるティモシーにナイフを切りつける! それをスッとかわすと同時に腹に蹴りを入れる! クレは、そのまま後ろに蹴り飛ばされた!
カラランとナイフがクレの手から落ち転がる。彼女は、一発で伸びたようだ。
「なるほどな。さっきの蹴りは、まぐれじゃなかったわけだ」
クレが手放したナイフを拾いつつ、トンマーゾは言った。
「ティモシーって、体術みたいのが出来るの?」
驚いてエイブは言う。
「まあ、かじった程度ですけどね」
「あれが、かじった程度なんだ……」
少し呆れた様にエイブはミュアンに返した。
「俺達を素直に開放してよ!」
「……わかった。出て行けよ」
ため息交じりにトンマーゾは言った。この状況では勝てないとわかったからだ。レオナールも人質にならない。ティモシーも魔術を封じてもダメだともわかった。そして……
「エイブ! 覚えておけよ! 裏切りやがって!」
「俺が何をしたと?」
「お前以外いないだろう? 指輪の事教えられるのは!」
精神体になれば連絡を取り合えると言っているのだった。ティモシーの居場所がわかったところで、指輪の事まで筒抜けのはずがない。今エイブは、ミュアンの側にいる。きっとエイブが魔術が使えない事もミュアンは知っているのだろうとトンマーゾは推測した。
「まさか、ミュアンと手を組むとはな……」
「「え?!」」
ティモシーとレオナールは驚いてミュアン達を見た。言われてみれば、彼女達が来る直前にエイブは一階に下り、直ぐにザイダに駆け寄った。その彼は完全にスルーされそのまま彼女の後ろにいた。
自然の動きに見えるが、ミュアンから攻撃も受けずその後彼女から離れてもいない。
「何それ? どういう事?」
「ティモシー。行きますよ」
そこ言葉と同時に突然、トンマーゾは倒れた。
「え?」
「眠らせただけです。で、レオナール王子あなたはどうします? ここに残りますか?」
「行きましょう。レオナール様」
二階から下りて来たブラッドリーが代わりに答えた。
「仕方がないとはいえ、この人と一緒なんてね……」
ボソッとエイブは呟いた。本当にエイブはミュアンと繋がっていたんだと驚くティモシーだった。
「てめぇ」
片膝を付き腹に手をやりながら、トンマーゾはティモシーを睨む。
「最初からつけておけばいいものを付けておかないからでしょ?」
そう言ってエイブも一階に下りてきた。
ガチャッとドアが開く音が聞こえ皆、ドアに注目した。
「迎えに来ましたよ」
そう言ってミュアンが入って来た。その後ろにはザイダがいた。
「ご、ごめんなさい。指輪を奪われて……」
消え去りそうな声でザイダが言った。
「ザイダさん! 無事でよかった」
エイブは、彼女に駆け寄る。驚く事にミュアンは、彼には攻撃を仕掛けなかった。エイブは無事にザイダの元に駆け寄った。
「母さん。俺、母さんと行くからだからお願いが……」
「ティモシー。まずは組織の人間を何とかしてからにしましょうか」
言い終わるか終わらないか、二階から魔術がミュアンに放たれた。それは、ミュアンの結界によって吸収される。
「ちょっと! 俺達もいるんだけど!」
「うるさいわね! だったら後ろから襲うぐらいしなさいよ!」
チャンスはいくらでもあっただろうと言われるも、エイブは魔術は使えない。武器すら持っていない。攻撃を出来るはずもない。それはクレも知っている事である。
「無茶言うなよ!」
言い返したエイブは、下りて来たクレを見てハッとする。彼女は、レオナールの首筋にナイフを突きつけながら下りてきた。
「あなたが人質になるとはね……。ティモシー、早くこっちにきなさい!」
「………」
ティモシーは戸惑う。レオナールは死ぬ気かもしれないと思ったからだ。
「行きなさい、ティモシー」
レオナールはそう声を掛けるも、ティモシーは横に首を振る。
「母さんお願い、レオナール王子も助けて!」
「助けたいのならあなたが助けなさい」
「え?!」
返したミュアンの言葉にティモシーだけじゃなく、皆驚いた。それは、レオナールを助ける気はないとも捉える事が出来るからである。
「わかっているでしょう? 私達は、その王子の国に狙われているのよ? 何故助けなくてはならないのかしら?」
言われてみればそうだ。助ける義理などない。
「あら? もう一人の王子は助けたって聞いたけど?」
「彼を助けたのは、陛下にお願いされたからよ」
陛下の命令だったからだと言う。
「もう母さんはどうしてそんな事ばかり!」
ティモシーは、クレに走り出した!
「あぁ、もう!」
人質だったレオナールを突き飛ばすように放すと、迫りくるティモシーにナイフを切りつける! それをスッとかわすと同時に腹に蹴りを入れる! クレは、そのまま後ろに蹴り飛ばされた!
カラランとナイフがクレの手から落ち転がる。彼女は、一発で伸びたようだ。
「なるほどな。さっきの蹴りは、まぐれじゃなかったわけだ」
クレが手放したナイフを拾いつつ、トンマーゾは言った。
「ティモシーって、体術みたいのが出来るの?」
驚いてエイブは言う。
「まあ、かじった程度ですけどね」
「あれが、かじった程度なんだ……」
少し呆れた様にエイブはミュアンに返した。
「俺達を素直に開放してよ!」
「……わかった。出て行けよ」
ため息交じりにトンマーゾは言った。この状況では勝てないとわかったからだ。レオナールも人質にならない。ティモシーも魔術を封じてもダメだともわかった。そして……
「エイブ! 覚えておけよ! 裏切りやがって!」
「俺が何をしたと?」
「お前以外いないだろう? 指輪の事教えられるのは!」
精神体になれば連絡を取り合えると言っているのだった。ティモシーの居場所がわかったところで、指輪の事まで筒抜けのはずがない。今エイブは、ミュアンの側にいる。きっとエイブが魔術が使えない事もミュアンは知っているのだろうとトンマーゾは推測した。
「まさか、ミュアンと手を組むとはな……」
「「え?!」」
ティモシーとレオナールは驚いてミュアン達を見た。言われてみれば、彼女達が来る直前にエイブは一階に下り、直ぐにザイダに駆け寄った。その彼は完全にスルーされそのまま彼女の後ろにいた。
自然の動きに見えるが、ミュアンから攻撃も受けずその後彼女から離れてもいない。
「何それ? どういう事?」
「ティモシー。行きますよ」
そこ言葉と同時に突然、トンマーゾは倒れた。
「え?」
「眠らせただけです。で、レオナール王子あなたはどうします? ここに残りますか?」
「行きましょう。レオナール様」
二階から下りて来たブラッドリーが代わりに答えた。
「仕方がないとはいえ、この人と一緒なんてね……」
ボソッとエイブは呟いた。本当にエイブはミュアンと繋がっていたんだと驚くティモシーだった。
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