英雄になんてなりたくないから!

すみ 小桜(sumitan)

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王子と一緒に 1

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 誰が王族の言う事を止められると言うのか。結局僕は、ガーナラルド王子の後をついて行く。
 誰だ! 王子の機嫌を損ねたやつは!

 「面白くないって顔だな」
 「え……」

 しまったぁ。顔に出ていたか。

 「なぜ僕と? 先輩方との方が安全なのに」
 「安全? それは君と行っても変わらないだろう? まあ、10階の敵を君が倒せるかわからないがな」
 「10階!?」
 「……君は学校に行っていなかったのか?」
 「いえ、行っておりました」

 習う事だったのか。にしてもバカ正直に10階まで行かなくてもよくないか? 王族なら免除されるだろうに。

 「僕は、全く役に立ちませんが宜しいですか?」

 最初に言っておこう。もしかしたら5階までにする気になるかもしれない。

 「別に構わない。特別扱いされるのが嫌なだけだからな。君にも悪かったと思っている。本来はもう一人は君につくはずだった」
 「はぁ……」

 別に指導者は、一人でいいけどね。

 「何をしている? 先に行って待っているのではないのか?」

 クルッと振り向くと、指導者の三人が後ろをついてきていた。

 「し、しかし……」
 「わ、わかりました。お待ちしてます」
 「くれぐれも気を付けてな」

 最後の言葉は、僕に向けられたセリフだ。
 何をどう気を付けれと? そこを教えて欲しいんだけどなぁ。

 「はぁ。行ったか」

 いや違う階でこっそりいるかもね。
 そう言えば、レメゼールさんがいないな。10階に行って待っているのかな?

 「そう言えば、君のスキルはどんなのだ? 増殖だかというスキルだったか」

 他人の事なのに覚えてるんだ。

 「階を下りる度に名前の通りスキルが増えるスキルですが、ダンジョンから出てしまえば全て消えてしまいます。僕には扱いが難しいスキルでした。ガーナラルド様が羨ましいです」

 ホーリーライトは、光魔法だ。光魔法は、どの属性のモンスターにも効果がある魔法。しかも範囲魔法らしい。複数をいっぺんに倒せるなんて、羨ましい。
 唯一習った魔法で覚えていた魔法だ。
 万が一授かるならこれがいいと思ったからね。

 「羨ましいか? 私は君のそのスキルの方がいいと思うけどな」
 「そうですか? どんなに凄いスキルでも消えちゃうんですよ? しかも覚えるのはランダムの様なので、あてにできません」
 「そうなのか? それは使い勝手が悪いな。だがある程度下の階に行けば、それなりの数のスキルになる。そうなれば、使えそうなスキルを手に出来るのではないか?」

 それは、元々強い者の考え方では? 弱ければ下になんて行けませんって。
 弱くても王子の様に装備がよければいいかもしれないけどね。

 「僕は弱いので、スキルなしで下になんて行けません」
 「まあ一人では無理だろうが、複数ならそれまでカバーできるだろう?」

 それって、パーティーを組んだりギルドに入ればいいだろうって事なんだろうか?

 「アドバイスありがとうございます」

 まあいいや。王子の機嫌を損ねたら指導者の道は閉ざされるから穏便に返しておこう。

 「アドバイス? 私は君と同じ新人だ。アドバイスにはならないだろう?」
 「……そうですか。そういう考え方もあると言う事ですね」
 「そういう事だ。ところで試験の仕方はわかってるのか?」
 「試験?」
 「……君は、全く何も知らないのか? いわゆる最初から合格しかない試験だから合格試験とも言われる試験だ。今から行うのだが……」

 げ。どうしよう。わからないや。
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