英雄になんてなりたくないから!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
13 / 32

王子と一緒に 2

しおりを挟む
 合格試験という単語は聞いた記憶がある。変なのって思ったから覚えているけど、試験内容は覚えてない!

 「その様子だと知らない様だな。6階から少しスライムが強くなる。そのスライムを10階までに一人換算100体倒す試験だ。数のカウントは、魔石だから拾うのを忘れるなよ」

 ……王子に説明をさせてしまった。なんか情けなくなってきた。こんな事になるなら覚えておくんだったよ。

 「ありがとうございます。記憶力が悪くてすみません……」
 「君は、面白いな」

 面白い!? どこが? つまんないやつだろうに。

 何を話していいのかわからないので、後は6階までほぼ無言でついていった。ダンジョンの事を何も知らない僕に、語れるものなどない。

 青っぽい光を放つ魔法陣に乗っかると、とうとう6階に着いた。

 「あ、赤い……」

 さっきまで青いスライムだったのが赤いスライムになっていた。大きさはかわらず小さいけど。

 「魔法陣まで蹴散らせながら行くぞ」

 蹴散らす? 凄いな。普通は、スライムは雑魚か……。
 僕が剣を手に持つと、ガーナラルド王子も剣を手に持った。魔法は使わないんだ。

 スライムって弱いけど、小さくて足元にいるから攻撃すると腰にくるんだよね。しかも倒したら小さな魔石を探さないといけない。面倒くさい。
 僕達は、黙々と魔法陣に向かいながらスライムを狩って行った。

 9階に降りた時には、100体以上になっていた。もう狩らなくてもいいよね?

 「あの、ガーナラルド様。僕、100体以上になったので狩るのやめてもいいですか?」
 「……驚いたな」
 「え? まだ100体になってないですか?」

 僕より倒している様に見えたのに。

 「いやそうではなくて、自分が終わったから私の手伝いをするとか、自分の魔石を使って下さいとか言わないから驚いたのだ」

 どういう事だろう? なぜ僕が、王子の分まで狩らなくてはいけないの? 自分の分だけで精一杯だよ。

 「君はすぐに顔に出るな」

 ふふふと笑いながら言われた。僕、どんな顔つきだったんだ?

 「君は、媚びを売ったりしないのだな。嫌だとすぐに顔に出て、わかりやすい」

 げ。嫌な顔つきしちゃっていたのか。

 「す、すみません……」
 「責めているわけではない。むしろ嬉しい」
 「はあ……」

 Mっ気がある王子様ですか……。

 「なんだその表情は?」
 「え……」
 「凄く嫌そうだな。何か勘違いをしているみたいだから言っておく。あの三人なら試験だから倒す事をさせても、魔石を拾う事は彼らがするだろう。そういう事だ。だから驚いたのだ」

 そこまでするのか……。
 覚えがめでたくても別に僕には何のメリットもないからな。指導者になるだけだから。そこまでしなくてもいい。
 あ、でも王子にとってそれが普通? でもさっき、嬉しいと言ったよな?

 ふと王子を見ると、こっちをじーっと見ていた。
 しまった。放っておいてしまった。何か返事が欲しかったのかな?

 「えーと。僕には、そんな余裕はありませんでした」
 「っぷ」

 噴出して笑われてしまった!
 僕、そんなに変な事を言ったか?

 「百面相していると思ったらそんな答えか」

 バカにされてしまった。
 まあ試験の事も知らなかったのだから仕方ないけどさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...