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◇122◇騎士団のアベガル
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リリンは、リュックの中で寝ているみたい。
まあ、しゃべられたら大変だからこのまま寝ていてくれたらいいかな。
「お前達、モイクナチ街に行くんだよな? 見ない顔だな」
僕の隣に座る冒険者がジッと僕達を見て言った。
歳はたぶん、40代後半。
がっしりとした体格に銀色の胸当てに肩当て。
何かやたらとでかい剣を座るのに邪魔らしく、腰から外して足の間に立て手で支えていた。その手には、白いグローブをはめている。
髪と同じ紺色の瞳は、僕よりイラーノを捉えていた。
何か威圧が凄いというか、人がいっぱいいるのにこの人、把握しているの?
それとも僕達の様なひよっこって、かなり少ないとか?
もしかして、ギルドマスターとかじゃないよね!?
「ぼ、僕達初めてそこに行くので……」
「だよな。女がいるパーティーなんて目立つもんな」
僕が答えると、驚く様な事を言った。
どうやらイラーノを女だと思ったみたい。だからジッと見ていたのか。
「俺……男だけど?」
「男!? 女が男装しているのかと思ったよ。あ、悪い。俺は、ギルド騎士団のアベガルだ。宜しくな。何かあれば、騎士団を頼れよ」
「騎士団をですか?」
イラーノが言うと、アベガルさんが驚いた顔つきになる。
「お前ら何も聞かされずに出て来たのか? どこから来た?」
何か凄く疑われているというか、騎士団を知らないとまずいの?
色々聞いて来る暇がなかったから……。
ノラノラシチ街からって言ったらまずいよね?
「えっと、レッド村から……」
「村? そこから近くのギルドに通っていたのか? 珍しいな。まあいいや。ギルド騎士団とは、冒険者の秩序などを見守る役目をしている。なのでジョブも騎士だ。事務所は、ギルドの二階。で、皆俺と同じ格好をしている」
「ご親切にありがとうございます。俺は、イラーノです」
「僕は、クテュールです」
何とか誤魔化させたみたいだ。
僕とイラーノは、ホッと安堵する。
「イラーノ。お前はよからぬ連中に狙われやすいだろう。女だと誤魔化す為に剣を下げて男装をしていると思われる。俺も思ったしな。女が冒険者になるとしたら魔法を使えるなどなの何かしら才能があった時だ。フードを被った方がいいかもな」
「フードですか。考えてみます」
そっか。帽子だけじゃ男に見えないのか。後ろから見れば男なんだけどね。男なのにね。
街に行ったら外套を買った方がいいかも。
「そうだな。街についたら色々案内してやるよ。それも仕事の一つだ」
僕達は、顔を見合わせた。
騎士と一緒にいれば、変な奴も寄ってこないだろう。
「お願いします」
イラーノがそう答えると、アベガルさんがうむと頷いた。
モイクナチ街に着くまでの間、アベガルさんが色々話を聞かせてくれた。
街のギルドは、細かく分かれているらしい。
討伐、護衛、採取、薬剤、道具、鑑定、雑役とあり、それぞれの分野で活躍しやすいように登録も可能だ。
建物は一緒らしいから凄く大きな建物かも。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
五時間程たった頃、高い塀が見えて来た。
あれはよじ登るのは無理だ。
で、近づいてわかったけど塀は、道を挟んで二つあった。
馬車が止まったので僕達は、道の右側に降り塀を見上げる。
「凄いね」
「うん……でも何で分かれてるんだろう?」
イラーノの言葉に頷きながら僕は呟いた。
「あぁ。道の向こう側は住宅街。冒険者が多いから分かれているんだ。あっちは、一々チェックして入る事になる。で、こっちはスルー。ほぼ冒険者しかいない」
アベガルさんが説明をしながら進み始め、僕らは慌ててついて行く。
門に立った門番は、アベガルさんに頭を下げている。
塀の中に入って驚いた!
建物が塀に負けずに高い。
左の建物から馬の鳴き声が聞こえて来た。かなり大きい馬小屋だ。たぶん。ここからでは、馬は見えない。
「あぁ、この建物は俺達騎士団の馬小屋だ。まあ馬を持っている商人や冒険者の馬も預かっているがな。三か所の門の横に馬小屋があって、馬小屋から直接外へ出ていける様になっている」
「へえ。すごーい」
イラーノは、キラキラした目で馬小屋を見ていた。
そう言えば、ジーンを置いてきちゃったけど大丈夫かな?
僕は、イラーノをつんつんと突いた。
「ねぇ。ジーンどうしよう」
「うーん。街に勝手に入って来ないならアベガルさんと別れてから合流しよう」
「うん……そうだね」
前に勝手に入らない様に言ったから大丈夫だろう。
『着いたの?』
「うわぁ」
僕は慌ててリュックを前に持って来て手を突っ込み、リリンの口を塞いだ。
忘れていたよ。ビックリした。
「うん? 何だ? 何を入れている?」
そう言ってアベガルさんが、リュックを引っ張り中を覗く。
「あ……」
「兎? ペットを連れて来たのか? ダメとは言わないが……」
「えっと。僕以外に懐かなくって……」
「そうだよね。俺も撫でさせてもらえない」
はあ。とため息交じりでイラーノが言う。
話を合わせてくれてたよりも本音ですね。
「まあそういう事ならいいか。兎なら草を食べさせればいいから食費はかからないと思うが、ペットは自己責任だからな。そこら辺に離して食料として狩られても、文句は言えないから気を付けろよ」
「マジ!?」
気を付けよう。
街の近くでは、離さないでおこう。
まあ、しゃべられたら大変だからこのまま寝ていてくれたらいいかな。
「お前達、モイクナチ街に行くんだよな? 見ない顔だな」
僕の隣に座る冒険者がジッと僕達を見て言った。
歳はたぶん、40代後半。
がっしりとした体格に銀色の胸当てに肩当て。
何かやたらとでかい剣を座るのに邪魔らしく、腰から外して足の間に立て手で支えていた。その手には、白いグローブをはめている。
髪と同じ紺色の瞳は、僕よりイラーノを捉えていた。
何か威圧が凄いというか、人がいっぱいいるのにこの人、把握しているの?
それとも僕達の様なひよっこって、かなり少ないとか?
もしかして、ギルドマスターとかじゃないよね!?
「ぼ、僕達初めてそこに行くので……」
「だよな。女がいるパーティーなんて目立つもんな」
僕が答えると、驚く様な事を言った。
どうやらイラーノを女だと思ったみたい。だからジッと見ていたのか。
「俺……男だけど?」
「男!? 女が男装しているのかと思ったよ。あ、悪い。俺は、ギルド騎士団のアベガルだ。宜しくな。何かあれば、騎士団を頼れよ」
「騎士団をですか?」
イラーノが言うと、アベガルさんが驚いた顔つきになる。
「お前ら何も聞かされずに出て来たのか? どこから来た?」
何か凄く疑われているというか、騎士団を知らないとまずいの?
色々聞いて来る暇がなかったから……。
ノラノラシチ街からって言ったらまずいよね?
「えっと、レッド村から……」
「村? そこから近くのギルドに通っていたのか? 珍しいな。まあいいや。ギルド騎士団とは、冒険者の秩序などを見守る役目をしている。なのでジョブも騎士だ。事務所は、ギルドの二階。で、皆俺と同じ格好をしている」
「ご親切にありがとうございます。俺は、イラーノです」
「僕は、クテュールです」
何とか誤魔化させたみたいだ。
僕とイラーノは、ホッと安堵する。
「イラーノ。お前はよからぬ連中に狙われやすいだろう。女だと誤魔化す為に剣を下げて男装をしていると思われる。俺も思ったしな。女が冒険者になるとしたら魔法を使えるなどなの何かしら才能があった時だ。フードを被った方がいいかもな」
「フードですか。考えてみます」
そっか。帽子だけじゃ男に見えないのか。後ろから見れば男なんだけどね。男なのにね。
街に行ったら外套を買った方がいいかも。
「そうだな。街についたら色々案内してやるよ。それも仕事の一つだ」
僕達は、顔を見合わせた。
騎士と一緒にいれば、変な奴も寄ってこないだろう。
「お願いします」
イラーノがそう答えると、アベガルさんがうむと頷いた。
モイクナチ街に着くまでの間、アベガルさんが色々話を聞かせてくれた。
街のギルドは、細かく分かれているらしい。
討伐、護衛、採取、薬剤、道具、鑑定、雑役とあり、それぞれの分野で活躍しやすいように登録も可能だ。
建物は一緒らしいから凄く大きな建物かも。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
五時間程たった頃、高い塀が見えて来た。
あれはよじ登るのは無理だ。
で、近づいてわかったけど塀は、道を挟んで二つあった。
馬車が止まったので僕達は、道の右側に降り塀を見上げる。
「凄いね」
「うん……でも何で分かれてるんだろう?」
イラーノの言葉に頷きながら僕は呟いた。
「あぁ。道の向こう側は住宅街。冒険者が多いから分かれているんだ。あっちは、一々チェックして入る事になる。で、こっちはスルー。ほぼ冒険者しかいない」
アベガルさんが説明をしながら進み始め、僕らは慌ててついて行く。
門に立った門番は、アベガルさんに頭を下げている。
塀の中に入って驚いた!
建物が塀に負けずに高い。
左の建物から馬の鳴き声が聞こえて来た。かなり大きい馬小屋だ。たぶん。ここからでは、馬は見えない。
「あぁ、この建物は俺達騎士団の馬小屋だ。まあ馬を持っている商人や冒険者の馬も預かっているがな。三か所の門の横に馬小屋があって、馬小屋から直接外へ出ていける様になっている」
「へえ。すごーい」
イラーノは、キラキラした目で馬小屋を見ていた。
そう言えば、ジーンを置いてきちゃったけど大丈夫かな?
僕は、イラーノをつんつんと突いた。
「ねぇ。ジーンどうしよう」
「うーん。街に勝手に入って来ないならアベガルさんと別れてから合流しよう」
「うん……そうだね」
前に勝手に入らない様に言ったから大丈夫だろう。
『着いたの?』
「うわぁ」
僕は慌ててリュックを前に持って来て手を突っ込み、リリンの口を塞いだ。
忘れていたよ。ビックリした。
「うん? 何だ? 何を入れている?」
そう言ってアベガルさんが、リュックを引っ張り中を覗く。
「あ……」
「兎? ペットを連れて来たのか? ダメとは言わないが……」
「えっと。僕以外に懐かなくって……」
「そうだよね。俺も撫でさせてもらえない」
はあ。とため息交じりでイラーノが言う。
話を合わせてくれてたよりも本音ですね。
「まあそういう事ならいいか。兎なら草を食べさせればいいから食費はかからないと思うが、ペットは自己責任だからな。そこら辺に離して食料として狩られても、文句は言えないから気を付けろよ」
「マジ!?」
気を付けよう。
街の近くでは、離さないでおこう。
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