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◇212◇僕らの味方なんだよね

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 コーリゼさんが、そう言ったところでアベガルさんが納得するとは思えないけど。

 「君もあの晩の光景を見ていたんだろう?」

 アベガルさんが言う。あの晩の光景。キュイが来た時の夜の事だろう。

 「あぁ、見ていた。クテュールは、彼女を説得していた」

 「説得? あぁ、そうだったな」

 アベガルさんが、コーリゼさんの言葉に頷く。

 「『もういいから、やめよう』そう言っていただろう。ずっとどういう意味かと思っていた。もういいから。この意味はなんだろうってね。きっと彼女の気持ちをわかっていたんだと思う。気づいていたんだろう?」

 って、コーリゼさんが僕に投げかけて来た。
 あのセリフをそう取っているとは……。
 僕を助ける為の行為を止めただけだったんだけど。

 「あぁ、わかった! そういう事にしてやる。はぁ……」

 「いや、わかってないだろう?」

 「まだ言うか!」

 何か知らないけど、アベガルさんとコーリゼさんが言い合いを始めちゃったよ。

 「あなたがルイユとエルフが結託していると思っているのなら、今の状況はあり得ない。モンスターを操っていたのは、エルフなんだろう? ここまでして襲って来たんだ。相手は、本気だった」

 「わかっているさ。それは……。だが腑に落ちない事があるからどうしてもな。ルイユの行動が、チグハグなんだよな」

 そりゃそうだ。目的は、僕を助ける為なんだから。
 フッとコーリゼさんは笑う。

 「彼を助ける為と考えれば、一貫してるんじゃないか? 彼らを解放したのは、あの襲撃を信じたからだろう? つまりクテュール達の疑いが晴れた。真の目的はそれだった」

 驚く事をコーリゼさんは言う。
 この人、マドラーユさんとは違った意味で怖い……。

 「イラーノを襲ったのもクテュールを助ける為。そして今も、命をかけてクテュールを助けた。俺も一緒に助けてもらったけど、優先順位は彼だったよ。ルイユは、本当に彼が大切なんだと思うが?」

 その言葉に、アベガルさんは僕達を見た。

 「なるほどな。復讐は諦めていたが俺達が二人を連れ去った為に、作戦を決行したって事か」

 コーリゼさんの話が説得力あったのか、アベガルさんが納得し始めたんだけど。
 またフリだけかもしれないが、何とか解放されるかもしれない。

 「実際、あのでかいモンスターは何も仕掛けてこなかった。本当に復讐なら襲わせる何かをしただろう」

 何か嫌な汗が出て来た。
 僕達の味方なんだよね? って聞きたくなる。
 僕らの手の内をアベガルさんに暴露されている感じがするんだけど。

 「なるほどな。俺はずっとルイユがエルフと繋がっていると思っていた。違うというなら今回のエルフの目的はなんだ?」

 「俺かもしれない……」

 アベガルさんの問いに、そう言ったのはイラーノだ。

 「俺を襲ったオスダルスさん達は、アベガルさんが追っていたエルフとは違ったから、アベガルさんが追っているエルフは俺が本当は男だとは知らない。だから盗賊に襲われた時に、俺が男装した女性だと思ったんだ。見ていたんだよきっと」

 「なるほどな。しかしモンスターまで仕掛けて来るか?」

 「モンスターは囮だったんだよね? 手薄になった街中で、俺を襲うつもりだった。けど俺は、街の外に逃げ出した。見つけたエルフが、モンスターを集合させて襲わせたんだ。なりふり構わなくなってきてるんだよね?」

 「うーん。そこまでするのか?」

 「実際しているではありませんか」

 「そうだ。どんな理由であれ、隠すつもりないみたいだな」

 ルイユが言うと、コーリゼさんもルイユに同調した。
 アベガルさんは、倒れたモンスターの山を見つめる。

 「わかった。取りあえずは街に戻るか」

 アベガルさんがそう言った。
 僕達は頷く。
 今回の事で、ルイユがエルフ側じゃないとわかってくれるといいんだけど。
 後、コーリゼさんには気を付けないといけないかもしれない。
 勘がいいというか鋭い。

 僕達が街に戻り門をくぐると、驚く事にマドラーユさんが待っていた。

 「ルイユさんよね?」

 「えぇ。そうよ」

 「凄い格好ね……」

 血まみれの服装を見て、マドラーユさんは驚いて言った。
 きっと、本当に驚いているんだと思う。

 「どう? 私の所にこない? そっちよりいいと思うけど」

 「おい!」

 「あら? あなたが束縛出来るのは、その三人よね? それとも私を捕らえようとしたように、ルイユさんも無理やり捕らえる気?」

 「それは……」

 「そうですね。別に私達は何もしていませんし、クテュール達も一緒にお伺いしても宜しいですか?」

 「勿論よ。コーリゼさんも是非」

 「そうだな」

 コーリゼさんがそう言って返すと、全員アベガルさんを見た。
 エルフ達が襲った理由が、結局わかっていない。渡したくはないだろうけど、ここは街中だ。下手な事は出来ない。
 それをわかっていて、マドラーユさんはここで待ち構えていたんだ。

 「どうぞ。構いません。用件がある時は、こちらからお伺いいたしますので」

 アベガルさんの後ろから返事が返って来た。メリュドガさんだ。

 「そうありがとう。では、馬車に乗って」

 アベガルさんとメリュドガさんの二人を残し、僕達は馬車に乗りマドラーユさんが泊まっている宿へと向かった。
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