【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
217 / 245

◇214◇魔女と剣

しおりを挟む
 話があると言いながら無言でルイユは歩く。

 「街を出るのか?」

 少し驚いてコーリゼさんが問う。
 ルイユが向かっていたのは門だった。
 さっき襲ってきたモンスターがまだいるかもしれないし、エルフと一緒に待機しているかもしれない。今出るのは危険だと僕でも思う。

 「追っ手をまかなくてはいけませんから」

 ルイユの答えに、なるほどとコーリゼさんは頷いた。
 アベガルさん達の尾行なんだろうけど、街の外へ出て大丈夫かな?
 まあルイユが居れば大丈夫なんだろうけど。
 街を出て暫く歩けば、道のわきは森だ。
 ワザとなのか、ルイユは何度も後ろを振り返った。
 この道を歩くのは僕らのみ。普通は、馬車を利用するみたいだ。
 僕達は、森へ入った。
 何度もルイユが振り返ったお蔭で、追っ手は見える範囲にはいなかった。相手も僕達が森へ入るのはわかっていると思う。

 「失礼します」

 僕とコーリゼさんをルイユは、脇に抱え浮き上がる。

 「ちょっと! ルイユ!?」

 「おい!」

 僕達が驚くもそのまま、凄いスピードで森を移動する。

 「!」

 どうするのこれ。絶対にコーリゼさんに変に思われる。って、もしかして隠す気ないとか?
 ルイユは、僕達を川のほとりまで連れて行った。
 コーリゼさんは、はぁっと心底安堵したように息を吐き座り込む。

 「大丈夫ですか?」

 「あぁ。しかしあなたは一体何者なんだ? ただの錬金術師じゃないだろう?」

 コーリゼさんは、座ったままそうルイユに聞いた。

 「ただのというか、私は錬金術師ではありません」

 「ルイユ!?」

 一体何をこの人に話す気?

 「なるほど。錬金術師じゃないって事をクテュールも知っているって事か」

 慌てる僕をチラッと見てコーリゼさんが言った。

 「私は、魔法使いです。で、錬金術師は主様です」

 「主様? はぁ?」

 ルイユが主様といいながら僕を見たので、コーリゼさんも僕を見て驚いている。

 「ルイユ、一体何? どうして?」

 「本当に君が錬金術師なのか?」

 「えーと……」

 「その話は、後でゆっくりと。今は違う話をしたいのですが宜しいですか?」

 「うん? だろうな。で、俺に話ってなんだ? 魔法使いだと俺に暴露したんだから何か協力してほしいとか?」

 「えぇ。察しがいいですね。魔女、ご存知ですよね?」

 魔女!? そうだ。ルイユなら知っているかもしれないから聞こうと思っていたんだった。やっぱり知っていたんだ。
 あれ? コーリゼさんが魔女と口にしたのを知らないよね?
 コーリゼさんも驚いた様にルイユを見上げていた。

 「魔女の事を知っているのか?」

 「えぇ。知っています。あなたが狙われたのは、それに関してですよね?」

 「なぜエルフに狙われているか俺もわからない。俺は逆に、エルフに会って話を聞きたかったんだが、今の状況じゃ無理っぽいな」

 そう語ったコーリゼさんは、小さくため息を漏らす。その顔は、悲しげだ。

 「何があったのかお話頂けませんか? お力になれるかもしれません」

 ルイユが、僕以外の人を自分の意思で助けようとしている? 何で? もしかしてそれが、僕を助ける事になるから?

 「………」

 力になれるかもと言われたけど、コーリゼさんは俯き、話す事を躊躇している。

 「ではこう言えば伝わりますか? 我々なら魔女を倒せるかもしれません」

 そのルイユの言葉に、コーリゼさんはガバッと顔を上げた。

 「本当か?」

 そう問いながらコーリゼさんは立ち上がる。

 「絶対とは言えませんが、可能性はあります」

 コーリゼさんは、少し考え込んだ。
 そして、話す事を選んだみたい。

 「俺の村には、魔女が封印されていた……」

 そう言って話し出した。

 「代々村の者が守るその封印を妹のミューラが解いてしまった。たぶん、長い年月封印してあったから封印が弱まっていたのかもしれない。俺は、唯一魔女を倒せる剣を持って村を出た」

 その剣って、コーリゼさんが腰にさげている剣?
 うん? 倒せる? 何故剣を持って出たの? 倒したいんじゃなかったの?

 「何故剣を持って? 魔女を倒せる剣なんだよね?」

 「その剣を使って倒せますが、村の者では無理だったからです」

 僕の疑問に、ルイユが知っているかの様に答えた。
 僕とコーリゼさんは、驚いてルイユを凝視する。
 そう言えば剣を手にした時に、様子が変だった。その剣だと気づいたから……。

 「あなたはもしかして、どうすれば剣で魔女を倒せるかご存知なのか?」

 「えぇ。知っています」

 やっぱり知ってるんだ。
 ずっと昔にルイユが携わった封印なんだろうか? でなければ、自分から協力なんてしないよね?
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...