【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
218 / 245

◆215◆ルイユの悲願

しおりを挟む
 何故かルイユは、空を見上げた。そして目を閉じる。まるで何かを思い出しているかの様だ。

 「魔女は、魔力の高い者を操る力があります。エルフがあなたを狙ったのは、魔女の力でしょう。エルフの中にもモンスターに枷を掛ける力を持った者がいます。魔女の封印にエルフが触れないように、人間に守らせていたのですが……」

 「いたのですがって。やっぱり昔にルイユが封印した相手なの?」

 「そのお手伝いをしただけです。今ならもしかしたら倒せるかもしれません」

 「ちょっと待て。魔女を倒せる剣を作ったんだろう? 何故それで倒さなかった?」

 コーリゼさんの言葉にそう言えばそうだと、僕達はルイユを見た。

 「封印があるとその剣を使えないのです。だから一度封印を解かなければなりません。ですが、あの時封印するのがやっとでした。今はまだ、封印が解けたといっても完全ではないのでしょう。だからその剣を始末したかった。それで剣を持っているあなたを発見し、街に襲撃を仕掛けたのでしょう」

 「で、どうしたらいいんだ?」

 「その剣を主様に。クテュールに渡して下さい」

 「え!? 僕!?」

 「彼にか? 君にではなく?」

 コーリゼさんが驚いて聞くと、ルイユはそうだと頷いた。
 僕に、コーリゼさんが剣を渡してくれたので、僕の剣を渡しておく。もし万が一、モンスターが襲ってきた時に武器がないと困るからだ。

 「来ましたか……」

 来たって……。
 振り向けば、少女が一人立っていた。

 「ミューラ……」

 コーリゼさんが、ぼそりと呟いた。
 え? 妹さん?

 「やはりその剣が封印の剣か。無駄な事を。もうあいつはいない。君と剣だけでは、私は倒せないぞ?」

 見た目10歳程の子供の話し方ではない。もしかして、ミューラちゃんに魔女が取り憑いているの?

 「エルフは連れて来なかったのですね? 縛るのも魔力を消費しますものね」

 「ふん。私一人で十分だ」

 そう言うと、ミューラちゃん基、魔女が魔法を放った!
 それはルイユではなく、僕達に向けてだ。ルイユが慌てて僕達を掴んで、その場からどけた。

 「ミューラやめるんだ! 聞こえてるよな? やめさせるんだ!」

 コーリゼさんが叫ぶ。だけど、魔女はニヤッとするだけだ。

 「彼女は、寝ている。どうしても助けたいのならその剣を渡せ」

 コーリゼさんは、躊躇なく剣を放り投げた。僕と交換した剣を……。魔女は、僕達が剣を交換した事に気づいてないみたいだ。

 「渡した。ミューラを解放しろ!」

 「いいが……この子は死ぬぞ」

 「な……嘘をつくな!」

 魔女の言葉にコーリゼさんは、魔女を睨み付けた。

 「嘘ではない。彼女は、私が憑依した時に死んだ。ただ体を保つ為に、この中にいてもらっているだけだ。あの日からずっとこの体の中で眠っている。嘘じゃないのは、この姿を見ればわかるだろう?」

 「だから10年前と同じ姿なのか……」

 「10年!?」

 僕は驚いてコーリゼさんに振り向く。彼は、愕然とした顔をしている。
 10年間、妹のミューラちゃんの為にずっと、剣の事を知るエルフを探していた。エルフじゃないけどやっと、魔女と剣の事を知るルイユに出会ったというのに、魔女を倒せてもミューラちゃんは救えない!

 突然、ルイユがコーリゼさんが捨てた剣に走った。
 魔女は、ギョッとする表情を一瞬するもルイユに魔法を放つ。それをどけると、魔女が剣を拾っていた。

 「ルイユ。ミューラを助けてくれ。魔女から解放してくれ!」

 コーリゼさんが叫ぶ。

 「聞きましたね? やましょう!」

 ルイユは、魔女を見つめつつ僕にそう言った。

 「無駄な事を。この剣は、ある条件の元、封印として発揮するのだろう? だったら私の手元にあれば、もうどうする事も出来ない。そうじゃないか? 奪いに来るのだったら来い! 返り討ちにしてやるわ!」

 ある条件の元?
 もしかして、僕にしか、チュトラリーにしか使えない剣? だから僕に持たせた? ちょっと待って。よく考えればそれって、僕が魔女にとどめを刺すって事だよね?
 そう思うと急に怖くなった。

 「ルイユ……僕……」

 震える声で僕がそう言うと、ルイユが僕の側に来た。
 そして僕をそっと抱きしめる。

 「お願いします。私にとっても悲願なのです」

 悲願ってやっぱり、僕の側にいたのってこの為だったの?
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...