【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
233 / 245

◇230◇話はまとまった

しおりを挟む
 「ルイユ。最初から話してくれ。今度はちゃんと聞く」

 「わかりました。お話しします」

 ロドリゴさんが、僕達を抱きしめたままルイユに言うと、彼女は頷きケアリーヌさん達と魔女を封印した事を話し、僕達が再び魔女を封印した事も話した。

 「そうか。そのケアリーヌという者と同じ考え方が出来る者を探すか……。ハッキリ言って不可能に近いな。それならケアリーヌが何か残した物を探した方が早いと思うが。ないのか?」

 「だいぶ昔の事で、しかも私も生まれる場所がその時々で違う為、ケアリーヌ様がどの場所にいたのかもさえわかりません。ただ、コーリゼがいた村がわかれば、探す手立てがあるかもしれません」

 ロドリゴさんの提案に、ルイユが答える。

 「……探しに行っていいの?」

 僕が聞くと、ロドリゴさんは頷いた。

 「魔女の話は本当だろう。だとしたら今の私達に出来るのは二つ。一つは、ケアリーヌが考えた方法で魔女を殺す事。もう一つは、ルイユを殺さず魔女だけ殺す事。けど最初の方法は無理なんだろう?」

 僕は、無理だと頷く。

 「ルイユを全面的に信じたわけじゃない事だけは言っておく。だが、クテュールがチュトラリーなのは間違いないだろう。クチュール、どうせならジーンも連れて行け」

 「え!?」

 まさか、ロドリゴさんがそんな事を言うとは思わなかった。

 「どうせ、動物に見える様にしてあるのだろう? あのモンスターは、君に忠実だからな」

 「うん」

 僕は頷いた。

 「俺も一緒に行ってもいいよね?」

 「本来なら行くなと言いたいが、お前の気がすまないだろう?」

 イラーノも頷く。

 「あとは、アベガルさんだな」

 「アベガルさん?」

 「私と一緒で全てを信じたわけではないだろう? 絶対に何かを企んでいる。できれば、彼の監視から逃れれば……」

 「そうすると、これを取って頂かないといけませんね」

 ロドリゴさんの言葉に、ルイユはそう言って左手を上げた。手首には、冒険者の証がついている。

 「それって、本物なのか?」

 「えぇ。冒険者にして頂いたのですが、これに感知できる細工がしてあるようなので……」

 「え? そうなの?」

 イラーノが驚いて、声を上げる。
 やっぱりロドリゴさんが言う様に、信用はしてないみたいだ。

 「あいつ、追える様にする為とはいえ、モンスターだと知っていて冒険者登録をするなんて! それを外すには、冒険者ギルドに設置してあるアイテムで外すしかない」

 「やはりそうですか。これをもし無理やり外したらばれますか?」

 「いや、壊さない限りばれはしないが……って!」

 ロドリゴさんが大丈夫だと言っている途中でルイユは、本来のモンスターの姿に戻った。勿論、冒険者の証は外れている。
 久しぶりに見たモンスターの姿のルイユだ。
 僕は、自然にルイユを抱き上げギュッとする。
 人間の姿もいいけどやっぱり、モンスターの姿の方が僕はいいなぁ。

 「ダミーの冒険者の証を持って来る」

 ため息をしつつロドリゴさんは、部屋を出て行った。

 『主様すみません。主様がそこまで追い詰められているとは思わずに……』

 僕は、ううんと首を横に振る。

 「ねえ、ルイユ。次に生まれ変わったら人生を謳歌してほしい」

 『主様。ありがとうございます。ですが、主様に出会わない時は、謳歌していると思いますよ。いえ、違いますね。今も十分謳歌しています』

 「うん。よかった」

 「まだ、やっていたのか……」

 戻って来たロドリゴさんが、僕がまだルイユをギュッとしているのを見て呆れた様に言った。

 「ルイユ。人の姿になったらこれをつけろ」

 ルイユは、僕の腕からすり抜けると、人間の姿になった。

 「偽物の冒険者の証ですか?」

 「いや、本物の冒険者の証だ。いいか、今日の宴の席には全員参加する事になっている。だからそれを付けておけ。きっとあるかチェックしているはずだ」

 「わかりました。ありがとうございます」

 ルイユは渡された冒険者の証を左腕につけた。
 僕達も参加するんだ……。

 「ところで、彼、コーリゼは本当に女性なのか?」

 「みたいだね。俺達は見て確認はしていないけど、妹もお姉ちゃんって言っていたし」

 「まあ、女だったなんて嘘をついても何も得はないが……。執念だな。もしスキルも何もないのなら男だって冒険者を続けるのは大変だ」

 コーリゼさんが本当に女性だと聞いたロドリゴさんは、頷きながら言った。

 「……クテュールは、コーリゼも救った事になるのか」

 「え?」

 「生きる気力の話だ。ここまでやってきたのは妹を助ける為だろう? しかも魔女から解放できたが、助ける事ができなかった。新たな目的を持つ事で、生きていく活力になるって事だ。あの場でルイユを殺していたらコーリゼは、死を選んでいただろうな。役目は終わったと……」

 僕達は、ハッとする。
 それもそうだ。もし妹が生きていれば、冒険者を辞め一緒に暮らすという選択肢もあった。でも、助けられなかった。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...