【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
234 / 245

◆231◆酒は飲んでも飲まれるな

しおりを挟む
 「やはり、ここの酒は美味しいですな」

 アベガルさんが言った。ご機嫌だ。
 ロドリゴさんが用意してくれた宴の席。
 向かい側には、アベガルさん、マドラーユさんにコーリゼさん、ルイユが座っている。
 僕の列には、ロドリゴさん、ダイドさん、イラーノ。そして僕。

 おいしいとアベガルさんだけではなく、マドラーユさんもお酒を結構飲んでいるんだけど大丈夫なのかな?
 今回、アベガルさんは魔女などの話を振ってこない。
 身構えていたけど、大丈夫そうだ。マドラーユさんがいるからかな?

 「そうだ。一つ聞こうと思っていたのだが、ロドリゴさんとルイユはお知り合いですか?」

 唐突に、アベガルさんが聞いて来た。
 どういう意味だろう?

 「ここでそれを聞くのですか?」

 と、何故かロドリゴさんがそう返す。
 うん? 僕を見ている?
 ……あ! そうだった。
 前回は、モンスターの姿のままだったから会った事がない事になり、ロドリゴさんがルイユと会ったのは、今日が初めてって事になるんだ。

 「彼が連れて来ました……」

 ロドリゴさんがそう言うと、皆が僕を見た。

 「そう聞いたのか。信じたのかそれ?」

 アベガルさんに言われたロドリゴさんは、ルイユをチラッと見る。

 「まさかイラーノより先に、そういう人を連れて来るとは思わなかったですが……」

 「ほ、ほっといてよ」

 「あら、イラーノには私がいるじゃない」

 「………」

 マドラーユさんがからかう様に言うと、ロドリゴさんが本気で彼女を睨んだ。

 「あら何よ。素性もはっきりしていて、ルイユよりはいいでしょう? というか、よく許す気になったわね。彼女が何をしでかしたか聞いてはいるでしょう? アベガルさんも許しちゃったようだし」

 「別に許してなどいませんが? 連れて来たと言っただけだ。まずは二人共、一人前の冒険者になってからだな!」

 「そうだな。俺も監視はしている。それと、何度も言っているが、あなたが関与する事でもない」

 「ふん。絶対に何か企んでるくせに……」

 酔っているのか、小声にもなっていない。
 そして、コーリゼさんだってとぶつぶつ言っているんだけど……。

 「あなたの場合、教えて貰えなくて面白くないだけだろう?」

 「何よ。あなたなんて、職権乱用してるくせに!」

 あぁまた、始まった。
 ここに来るときも言い合いをしていたんだよね、この二人。
 巻き込まれないうちに逃げよう。

 「さて、僕はもう部屋に戻ります」

 「じゃ俺も」

 僕が立ち上がると、イラーノも続いて立ち上がる。

 「では、私も……」

 ルイユも立ち上がった。

 「あ、ルイユってどっちに泊まるの?」

 「どっちとは?」

 「だから彼の所に泊まるの? それとも宿?」

 マドラーユさんは、なんていう質問をしているんだ!
 さっきの流れからだと、ロドリゴさんが許さないって事になる。いやその前に、イラーノと同じ部屋なんだけど。

 「宿ですよ。ご心配なく」

 「だったらまだ付き合いなさいよ!」

 「酔っ払いの相手など、ごめんです」

 そう返すと、僕の方へスタスタとルイユは来る。
 さすがルイユだ。マドラーユさんにストレートに言った。
 僕達は、逃げる様に建物の外に出る。

 「ルイユ、覚えていたら明日、何か言われるよ……」

 イラーノが心配そうに言った。

 「あら別に私は、聞き流しますのでかまいません。それより向かいましょうか」

 ルイユの言葉に僕達は頷いた。
 これからキュイ達の所に行くつもり。
 僕達を尾行している者もいないみたいだし、皆が酒を飲んでいるからこっそり向かうにはちょうどいい。
 アベガルさんは、本当に一人で僕達を見張るみたいだ。
 まあ感知するアイテムを持たされてはいたけどね。そこら辺は、抜かりない。

 「どこへ行くんだ?」

 後ろから声が掛かり驚いて振り向くと、コーリゼさんだ。

 「びっくりした……」

 「俺も逃げて来た。で、どこへ行く? 宿はあっちだが?」

 街の外へ出る為に門へ向かって歩き出そうとしていた僕達は、冒険者ギルドの方を向いているが、宿は逆側だ。

 「主様のお部屋で少しくつろごうかと思いまして」

 「じゃ、俺も一緒に行くかな」

 「え……」

 僕が驚くと、コーリゼさんはクスッと笑った。

 「で、本当はどこへ?」

 僕の態度で嘘がバレたという、二人の視線が痛い。

 「しかたありませんね。彼もご招待しましょうか」

 「え!? ルイユそれは……」

 僕達は、街に来たキュイに会いに行くと言うのに、ルイユはそう言った。
 一緒に連れて行って大丈夫だろうか。
 結局追い返しても不信感が残るだけだからと、連れて行く事になった。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...