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第5章 魔術師の正体
第38話
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リーフが目を開けると天井が見えた。
夢を見たようだ。心臓はバクバクと高まり、手が小刻みにまだ震えている。
(夢? いや、昔の記憶だ!)
チェチーリアに会いたい! 両親の事を知りたい! そして、思い出を思い出したい! そう思いつつ眠りについた。
リーフは、ゆっくりと体を起こす。
両親の顔も村人達の事も思い出した!
オルソとチェチーリアが言っていた山火事は、この日の事だろう。
リーフは、全て思い出したのだ!
(今、皆はどうしているだろう? 助かった? でも……)
あの後、落ち合う場所には誰も現れなかった。
思い出した七年前の魔術師は、二年前に襲ってきた魔術師と同一人物だろう。同じ紫色の髪だった。
(僕があの魔術師に、おばあちゃんの孫だと明かしたんだ……)
チェチーリアの孫だと魔術師に教えてしまったのが自分だと、リーフはそう思うと涙が溢れて来た。
それは仕方がない事だった。ただ最初に会ったのがリーフだったというだけで、子供はリーフとシリルしかいなく、すぐにわかった事だ。
(風にあたりたい)
リーフはそう思うと涙を拭き、扉へ向かう。
部屋に窓はない。廊下の突き当りに窓があったと思い出し、そこへ向かう。
皆寝ているのか廊下は静かだ。そっと窓に向かう。
外は白みかかっていた。夜明けだ。
窓を開けようとするが、この窓はフィックス窓で、固定されていて開けられない。
一階の出入り口から外に出るという方法もなくはない。だがまだ夜が明けきる前。止めれるかもしれない。それに今は、誰にも会いたくなかった。
(少しだけ……)
右手を窓にピタッとくっつけた。
城には二重に結界が張ってある。一つは敷地ごと囲っている大きな結界。そして、城の建物自体に施された結界だ。
建物自体に施された結界は、結界と一緒に物体も歪ませる事がリーフには出来た。そのお蔭で、ボシェロ家の離れも穴を開ける事が出き、ヘリムを連れだせた。
その術で、風を通す為に窓を歪ませようとした時だった。
「何をする気だ?」
その声にビクッと肩を震わす。
リーフは、声がした後ろにそっと振り返った。そこに立っていたのは、厳しい顔つきのダミアンだ。
「あ、えーと……」
「まさかと思うが、そこから逃げようとしているのか?」
リーフは、慌てて首を振る。
確かに結界に穴を開けようと思ったが、逃げる為ではない。だが今のリーフの行動を見れば、そう思われても仕方がない。
「す、すみません。風にあたりたくて窓を開けようかと思ったんです。でも開かない窓でした……」
本当の事だ。だが穴を開けて風を通そうとしていた。その前でよかったとリーフは思う。穴を開けていたならば、この言い訳は通用しないだろう。
「だったらあの時の様に、穴を開ければいいのではないか。君ならそれぐらい簡単に出来るだろう?」
突然現れたヘリムに、二人は驚く。スッと現れ余計な事を言った!
「あの時?」
そしてダミアンは、何をしたんだという目つきでリーフを見た。
「べ、別に何もしていません!」
リーフは慌てた。
不法侵入の様な事をした挙句、建物に穴を開けて犬だったヘリムを連れ出したなどと言えない。
この事は、アージェにも言っていない事だ。
「風にあたりたいんだろう?」
そう言ってヘリムは、窓に手をかざす。
ギョッとするリーフの横で、ヘリムは窓一枚分の穴を開けた。
結界に穴を開ける行為は、結界を壊すより難しい。結界を得意とする魔術師でなければ、物体ごと穴を開ける事はそうやすやすと出来ない。
リーフも開ける事は出来るが、長い間は無理だし大きさも犬だったヘリムが通れる大きさぐらいまでだ。
なのでリーフは、唖然としていた。
「さすが魔獣と言ったところか」
ダミアンも関心する。
「どうせなら、外であたったらどうだ」
城は高台に建っている。そしてその建物の五階なので、結構風が強く短い髪を揺らす程なのに、そう言ったヘリムはリーフを抱き上げた!
お姫様抱っこされたリーフは、驚きで固まった。
それを肯定と取ったのか、そのままヘリムは開けた穴から外へ飛び立つ。
「待ちなさい!」
予想だにしていない行動に、ダミアンは慌てて二人を追う。
穴から出て少しの所でヘリムは止まった。その横にダミアンも並ぶ。
そっして三人は、ジッと前を見つめた。そこにはあの魔術師が立っていた!
「どうやって敷地内に入った……」
驚いてダミアンは呟く。
サーッと強い風が吹いた。魔術師のローブはめくりあがり、顔が露わになる!
七年前と同じ紫色の髪の魔術師だった!
夢を見たようだ。心臓はバクバクと高まり、手が小刻みにまだ震えている。
(夢? いや、昔の記憶だ!)
チェチーリアに会いたい! 両親の事を知りたい! そして、思い出を思い出したい! そう思いつつ眠りについた。
リーフは、ゆっくりと体を起こす。
両親の顔も村人達の事も思い出した!
オルソとチェチーリアが言っていた山火事は、この日の事だろう。
リーフは、全て思い出したのだ!
(今、皆はどうしているだろう? 助かった? でも……)
あの後、落ち合う場所には誰も現れなかった。
思い出した七年前の魔術師は、二年前に襲ってきた魔術師と同一人物だろう。同じ紫色の髪だった。
(僕があの魔術師に、おばあちゃんの孫だと明かしたんだ……)
チェチーリアの孫だと魔術師に教えてしまったのが自分だと、リーフはそう思うと涙が溢れて来た。
それは仕方がない事だった。ただ最初に会ったのがリーフだったというだけで、子供はリーフとシリルしかいなく、すぐにわかった事だ。
(風にあたりたい)
リーフはそう思うと涙を拭き、扉へ向かう。
部屋に窓はない。廊下の突き当りに窓があったと思い出し、そこへ向かう。
皆寝ているのか廊下は静かだ。そっと窓に向かう。
外は白みかかっていた。夜明けだ。
窓を開けようとするが、この窓はフィックス窓で、固定されていて開けられない。
一階の出入り口から外に出るという方法もなくはない。だがまだ夜が明けきる前。止めれるかもしれない。それに今は、誰にも会いたくなかった。
(少しだけ……)
右手を窓にピタッとくっつけた。
城には二重に結界が張ってある。一つは敷地ごと囲っている大きな結界。そして、城の建物自体に施された結界だ。
建物自体に施された結界は、結界と一緒に物体も歪ませる事がリーフには出来た。そのお蔭で、ボシェロ家の離れも穴を開ける事が出き、ヘリムを連れだせた。
その術で、風を通す為に窓を歪ませようとした時だった。
「何をする気だ?」
その声にビクッと肩を震わす。
リーフは、声がした後ろにそっと振り返った。そこに立っていたのは、厳しい顔つきのダミアンだ。
「あ、えーと……」
「まさかと思うが、そこから逃げようとしているのか?」
リーフは、慌てて首を振る。
確かに結界に穴を開けようと思ったが、逃げる為ではない。だが今のリーフの行動を見れば、そう思われても仕方がない。
「す、すみません。風にあたりたくて窓を開けようかと思ったんです。でも開かない窓でした……」
本当の事だ。だが穴を開けて風を通そうとしていた。その前でよかったとリーフは思う。穴を開けていたならば、この言い訳は通用しないだろう。
「だったらあの時の様に、穴を開ければいいのではないか。君ならそれぐらい簡単に出来るだろう?」
突然現れたヘリムに、二人は驚く。スッと現れ余計な事を言った!
「あの時?」
そしてダミアンは、何をしたんだという目つきでリーフを見た。
「べ、別に何もしていません!」
リーフは慌てた。
不法侵入の様な事をした挙句、建物に穴を開けて犬だったヘリムを連れ出したなどと言えない。
この事は、アージェにも言っていない事だ。
「風にあたりたいんだろう?」
そう言ってヘリムは、窓に手をかざす。
ギョッとするリーフの横で、ヘリムは窓一枚分の穴を開けた。
結界に穴を開ける行為は、結界を壊すより難しい。結界を得意とする魔術師でなければ、物体ごと穴を開ける事はそうやすやすと出来ない。
リーフも開ける事は出来るが、長い間は無理だし大きさも犬だったヘリムが通れる大きさぐらいまでだ。
なのでリーフは、唖然としていた。
「さすが魔獣と言ったところか」
ダミアンも関心する。
「どうせなら、外であたったらどうだ」
城は高台に建っている。そしてその建物の五階なので、結構風が強く短い髪を揺らす程なのに、そう言ったヘリムはリーフを抱き上げた!
お姫様抱っこされたリーフは、驚きで固まった。
それを肯定と取ったのか、そのままヘリムは開けた穴から外へ飛び立つ。
「待ちなさい!」
予想だにしていない行動に、ダミアンは慌てて二人を追う。
穴から出て少しの所でヘリムは止まった。その横にダミアンも並ぶ。
そっして三人は、ジッと前を見つめた。そこにはあの魔術師が立っていた!
「どうやって敷地内に入った……」
驚いてダミアンは呟く。
サーッと強い風が吹いた。魔術師のローブはめくりあがり、顔が露わになる!
七年前と同じ紫色の髪の魔術師だった!
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