呪縛の聖騎士、戻るために『女』として奮闘す?!

結城里音

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第6話 王女の戯れと下着選び。時々、防具新調

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あらすじ
 防具職人ガルドの工房、アルヴァレス工房にてラントの過去。エルフェシア人や古代魔法の存在が分かったものの、未だ謎のままだった。そんな謎を残しつつも、当初の目的でもある下着と防具を揃えることになるラントたち。
 仲間も増えてガルドの娘、セリーネ。ドラクシオンの住人であり魔族医師の助手、メリッサも同行する事になったのだが、前途多難で一朝一夕には行かない者たちが、皇国へと向かっていた......。


***


「なぁ、姉貴。うまくやれるなら、やらしてみねぇか?」

 魔族領ドラクシオン王城では、姉妹3人が集まり長テーブルを囲んでいた。王城から数騎のグリフィン部隊が飛び立つのを目撃した衛兵が、国王マルケスに知らせる前に直属の上司でもある王女たちに連絡が入ったのだった。
 どうやら、4人居る王女の末っ子。グリエリが数名の人員を連れて国を出たと言う知らせを聞いて招集する事になっていた。
 すぐ上の姉、イレイナスは栗色の髪をいじりながらも、放任主義のような言葉を並べ立てる。

「その、ラントだっけ? そいつは、うちらと人間の架け橋かも知れねぇんだろ」
「なら、大丈夫じゃね? なれなかったら、ウチラで可愛がればいいだけだろ...」

 腰に手を置きながら話す様子は、どこか楽観視しているようにも見える。

「もぅ、イレイナスは......」
「グリエリが皇国に向かったのは確実だろうけど、今。どんなときかわかってる?」
「わかってるよ。戦ってる場合じゃねえんだろ?」
「そうよ。向こうもこっちも疲弊してるんだし......」

 銀色に灰色が混じったようなつややかな髪をなびかせながらも、盤面に広がる地図を眺めながらメガネを上げる。タイミングがあまりにも悪く、思案を巡らせても良い答えが見いだせずにいた。
 そんなマクスウェルを揶揄するようにして、ちょっかいを出す。

「ウェル姉は、お気に入りのメガネを作った工房が、大丈夫かどうかだろ?」
「それ、うちらじゃ作れねぇから。みんな壊しちまう...不器用なんだ...」
「そうね、力が有り余ってるものね、あなたみたいに......」
「あんっ? 何か言ったか? ウェル姉......」
「えぇ? そうかしら? イレイナス......」

 完全に売り言葉に買い言葉。
 血の気が多く、口が達者なふたりはいつもこうして舌戦が始まる。しかし、このときは更に上の姉がいた。

「......まったく、あなた達は......」

 盤面を見下ろしながらも、漏れ出る魔力の濃さにふたりがたじろいでしまう。

“びくっ!”
“ぞわっ!”

「......やべっ」
「セ、セラフィナ姉さま......」

 黒曜石のような澄んだ黒髪は、魔力に呼応するように宝石のように光り輝く。同時に、そのスラリとした見事な体が露わになり、第1王女の風格が現れだす。恐怖と威圧、そしてほんの少しの慈愛を込めた魔力は、妹ふたりの魔力すら凌駕する。

「ふぃ、フィナ姉。本気で言い争ってるわけじゃねぇから...」
「そ、そうですよ? 姉さま。お遊びです、お遊び......」
「んぅ、そうね。つい...グリエリも勝手に動くし...まったく......」

 そういうと、溢れ出た魔力がスッとおさまる。同時に気圧されるほどの威圧もなりを潜め、ふたりの姉妹も胸をなでおろす。

『やべぇ、やっぱりフィナ姉は半端ねぇ......』
『伊達に、小さな村ひとつを滅ぼしてないわね......』

 この世界の住人は魔法こそ使えるものの、魔石に依るものが大きい。ドラクシオンの主要産物でもあり収入源だ。元々、内包する魔力が膨大な魔族とは違い、微々たる魔力を魔石で強化することで発動することができる人では大違いだった。
 そんな中で腹を立てたセレフィナは、自身を誹謗した村を文字通りに廃村にするほどの魔力を持ち合わせていた。

「まぁ、あの子も“バカ”じゃないもの」
「おおごとにはならないでしょ」
「だな、グリエリだって馬鹿じゃねぇからな」
「そうね。末っ子とはいえ、王女だもの」

 そんな長女の膨大な魔力に気圧されながらも、落ち着きを取り戻すふたり。

「でもまぁ......あの子もおバカなことをしたら......」
「......ただじゃ置かないけど」

 少しだけ溢れた魔力が赤色の瞳を輝かせる。
 黒髪と相まってその威圧感だけで、相手を倒してしまいそうなほどだった。

「ふぃ、フィナ姉! 抑えておさえて!!」
「ね、姉さん、ご立腹ですね...」
「どうして、ウェル姉は平気なんだよ!」
「それはもう、妹ですから...」
『......って、震えてるじゃねぇか!』

 にじみ出る膨大な魔力とその威圧に、思わず身震いをしてしまうマクスウェルと、魔力の流れに飛ばされそうになってしまうイレイナス。そしてまた、スッとおさまる魔力に姉妹ふたりは振り回されることのほうが多かった。

「ごほん......取り乱したわね......」
「いいえ。あの子が悪いんですから...」

 テーブルを囲みながら姫3人が集まって考えたものの、結局のところ介入しないことがまとまり、もしもの際に備えることになった。

ーー

 靡く翼、鋭いくちばし、そして立派な体躯。そこにまたがる華奢な金髪の少女は、軽やかでふんわりとした髪を揺らしながら、優雅に漂う姿はその装飾と相まって、明らかに王族の風格を放っていた。

「ここに居るはずよね。ラントとかいうヤツ」
「そのはずです。グリエリのお嬢」

 小柄な体は騎乗しているグリフィンに子供が乗っているようにも見えるものの、その実。このグリフィンは彼女、グリエリが使役している魔獣だ。
 ドラクシオンの家紋にもグリフィンがあしらわれ、代々王族はグリフィンに騎乗して戦場を闊歩するのが習わしだった。そんな王女の末っ子が、ひょっこりと現れていた。当然、グリフィンに騎乗して現れたのだから下は大騒ぎ。

「警戒! 警戒!! グリフィン部隊だ!」
「臨戦態勢!!」

 城壁の上空を滑空しながら計画を練っていたものの、足元が騒がしくなれば気が散ってしまう。ワラワラと城壁をつたい集まってくる兵士たちを見下ろし、次第に腹が立ってくるようで......。

「あたしも、人間は好きだけど......」
「ねぇ、処していい? 少しくらい...」

 宝石のように澄んだ翡翠色の瞳が、スッとくすんだかと思うと魔力が溢れ出てくる。流れ出る魔力は霧散するようにして、周囲を黒い霧で淀ませてしまう。その魔力は人に良いはずもなく、兵士たちの体力が削られてバタバタと倒れ始める。
 人のほとんどが魔石による強化をすることで魔法を放つことができる。そのため、天然の魔石などは内包する魔力によっては人が扱えるものではなくなる。そうなると、主要産地でもある、魔王国に依存することになる。

「ほら、もう少し魔力を出せば......」
「や、止めてくださいよ。グリエリ姉御!」
「そうですよ! 魔王国も戦後でやばいんですから!」
「むぅっ、そうね......」

 そう言うと、漂っていた魔力をスッと収める。
 上空を包んでいた魔力の流れが消え、兵士たちが立ち直り始めるものの、戦々恐々としていた。

「姉御。今です。姿を...」
「ん。そうね。戦いに来たわけじゃなかったね......」
「いきましょう」

 数名で皇国まで訪れたグリエリは踵を返すように、城壁のそばから退散するようにして姿を消す。そのことで、門を守っていた衛兵も事なきを得たようだった。

「......な、何だったんだ......あれ......」
「と、とにかく...いなくなってくれてよかったよ...」
「俺らだけじゃ対応できないからな~」

 冷や汗を拭いながらも、衛兵たちはそれぞれ疲労困憊だったものの、それぞれの持ち場へと戻っていったのだった。


***


 魔力風。
 強力な魔力を持つ風が魔王国ドラクシオンの方角から吹くことによる、自然災害のひとつで、ごく稀に皇国にも被害が及ぶ。そのため、皇国には魔力結界が張られているものの、多くの市民たちは魔力に依存していた。
 生活の一部として魔力炉に動力源と、貴重な生活インフラを支える事になっていた。ただそれらは、膨大な魔力を有する魔族由来の魔力には弱い。そのため、専用の容器に入れられて、住人の生活を豊かにすることにつながっていた。

「うーん......?」

 城壁からそれなりに離れていた商業区の一角にあった、セリアとラントの母親でもあるイザベルのブティックの中だったこともあり、そこまで影響はなく周囲の誰も気がつく様子はなかった。ただひとりを除いては......

『なんなんだ? あの魔力は......』
『...ま、いっか』
『別に、向かってくるわけじゃないし...』

 着替えさせられていたラントにとっては、都合よく“気を紛らわせる”のには都合が良かった。思えば、入る時からあべこべだった。

--

 少しだけ前、ラントたち御一行4名は、ブティックの前で呆れ果てていた。というのも、外観はそのままで見知ったものだったものの、なぜか一部だけが変わっていた。

「こんな名前だった?」
「......違うと思います。というか、この名前って...」
「母さん......いくら、ラントが女の子になって嬉しいからって......」
「店の名前、変えなくても良いでしょ!」

 少し前、厳密に言えば。ラントがイザベルの元に行く前までの店名が、イザベルの名を冠した名前だったが、その後。すげ替えられたようで......。

「......シャルメ・ラントって......」
『魅力的なラントですか? イザベルさん。店名で告白しないでください......』
『しかも、こんな大ライ的に.........』
「い、イザベル様、ラントさんが好きなんですね...」
「あぁ、まぁね」
「はぁぁぁ......と、とりあえず、行きましょ。ラント」
「だね...」

 自覚がない。というわけではなかったものの、ここまでとは思ってもいなかった。
 そんなやり取りを経て、店内へと入ったもののそんなイザベルが選んだ従業員ということもあり、店員もノリノリだった......。

「はぁぁぁぁ。かわいいっ!」
「何でも似合いますね! これ、あれも!」
「は、はぁ......」

 レース使いのおしゃれなものから、布地の少ない大胆なもの。そしてもはや隠れてるのすら危ういもの。そして、ほぼヒモだけのものまで、一通り着せられてしまったラント。

「はわわわぁぁ......」
「これくらい刺激的でも......!」
「刺激的すぎです! 却下で!」
「えぇぇっ......はい」
『た、楽しんでる......』
『まったく、イザベルさんといい、イザベルさんが選ぶ人と言い......』
『こういう人を望んで集めてるのか? はぁぁ......』

 ブティックが女物を扱っていることや、店内に女性しかいなかったこと。不思議と女体化した影響か、なぜか恥ずかしくなかった。

『これも、女になった影響...男なら照れるが...』
『オレ。今、女だしなぁ......』
『それに、自分の体だし......はぁ』
『というか、落ち着かない...』

 鏡に映る自分の姿を見たとしても、さして興奮することもなく。こういうものだと納得してしまう。むしろ、ラントの姿に興奮しているのは別のようで、腰に手を置きながら鏡に向かう様子を、恥じらいながらもガッツリ指の間から見ている子がいた。

「はわわわわぁぁ」
『......う、美しい。はぁぁぁ~』
『まったく、セリーネちゃんに毒じゃ......なさそうかな?』

 結局の所、無難なデザインで纏めたラントは、その布地の少なさに戸惑いつつ、エルダの工房へと向かう。
 ガルドと同じ防具工房ではあったものの、どこかおしゃれな装飾が並び、女性冒険者が立ち寄りやすい店内になっていた。

「ん? ようやく来たか。ん? どうした? ラント......」
「いや、落ち着かなくて......」
「ラントったら、女になってまで男物履かないの!」
「だって、あれのほうが落ち着くから...」
「今は、女の子! 見えない所もおしゃれをするの。いい?」
「わ、わかったよ...はぁ......」

 詰め寄られてのけぞりながらも、結局。受け入れる事になり、ガックリと肩を落としてしまった。そんなラントにクスクスと渇いた笑みをこぼしながら、肩に手を乗せる。

「まぁ、女はそういうもんさ。化粧もそのひとつさ...」
「け、化粧......は、はい。オレ、苦手です......」
「ははは。まぁ、慣れだ慣れ」
『慣れたくねぇ......オレ、元。男なんだから......』
『まぁ、少しはするよ? それでも、あそこまでガッツリ...』
『......たしかに“化”粧だ......』

 ぼんやりと脳裏によぎるのは、イザベルが気合をかけてメイクを始めようとした時の、あの血走った目だった。もう、やる気満々の目に、さすがにこりごりだ。

「ところで、防具の方は......」
「ん? それならできてるぞ?」
「後は、ラント。あんたのサイズに合わせればいいだけだ」
「ありがとうございます! エルダさん」

 それまで、どこかの令嬢のように、様式ばったフリルがふんだんにあしらわれたフォーマルドレスに袖を通していたラント。しかし、今度は冒険者のように動きやすさ重視になっていた。

「おおっ......!」
「綺麗です! ラントさんっ!」
「ふーん。孫にも衣装ね~」
「......セリア。褒めてる? それ......」
「ふんっ...」

 動きやすさと可憐さを併せ持ったその防具は、騎士団としてのガッチリとしたプレートとはまた違い、たしかにオシャレさが出ていた。

「ハーピーの羽根を使ったイヤリングに、ハルトヴィーンのなめし革のジャケット」
「ディアウルフのスカートは、動きやすさ重視だな」
「あぁ、そうそう。ポーチもハルトヴィーンのなめし革でできてる」
「どうだ? 動きやすいだろ?」
「はいっ! たしかに! 武器もショートソードですし...」
「あぁ、それはおまけだ。一応、耐魔系の魔法は付与してあるが...」
「ありがとうございます!」

 そういうと、ポンポンとその場で飛び跳ね、動きやすさを確認する。ふわりと風に舞う髪や、澄んだその瞳が興奮した様子で輝く。新しい防具に胸を躍らせるも、セリアに止められてしまう。

「ラント、そのへんに......」
「何だよ~今。楽しい所...」
「いや、スカートでジャンプするな! 丸みえよ!」
「あ......す、すまん......」
「もぅ、ラントさんったら......」
「あははは。さすがラントだね!」
「......うぅっ」

 新しい防具に胸が躍り、そのままの感情が動きに出てしまっていた。改めて言われてスカートを抑えたのだった。

「でもまぁ、一応。蹴り技もイケるからな? ラント...」
「場合によっては、その恥じらいも武器になるから」
「それだけは覚えておいたほうがいいぞ?」
「それって...」

 自慢げに椅子の背もたれに体を預けながらも、ニマッと笑みを見せる。それは、元々冒険者という経験が相まっていた。

「......世の中には、“見せる”ことで油断を誘うこともできるからな」
「元“男”のあんたなら、わかるだろう?」
「......たしかに」

 腕を組み顎を手に乗せながら考えるほどに、その手段も考えられる。見せるのは恥ずかしいものの、相手の隙きを作るのなら都合がいい。ただ、ラントの後ろにいたふたりが良しとするはずもなく......

「そんなの、だめに決まってるでしょ! 見せて隙きを作るとか...」
「そ、そうです! ラントさんのを見て良いのは私達だけです!」
「そうよ。って、えっ? セリーナちゃん?!」
「え、あっ......」

 純真な感情を発露しながらもラントの貞操が、絶妙に守られていた。そんな愛らしいふたりに、ケラケラと笑い声が店内に響く。

「ふふっ、あははは。ラント、あんた。愛されてるな」
「そうみたいです」

 楽しそうに笑みをこぼしながらも、工房の一角を借りてセリーナの退魔装飾の装着にかかる事になっていく。


***


 それは、バックルに行われる特殊な装飾。耐魔の紋章を掘る作業だったものの、一応の簡易的な耐魔が付与されているため、ある程度は刻印された紋章効果を緩めることはできたこともあり、見も心も身軽になっていた。

「お任せください! ラントさんっ!」
「しっかりと、良いものを作って見せますから!!」

 ガッツポーズをして見せるセリーネを工房に残し、ラントたちは一度。工房を後にする。街を歩きながら時間を潰そうと考えたものの、魔族医師の助手でもあったメリッサはいつの間にか姿を消していた。

「あれ? メリッサさんは?」
「えぇ、入る時はいたのですが、何やら用事があるようで...」
「あの方も忙しいですからね。エリオン様と回られているのではと...」
「まぁ、あれほど、魔法に見識のある方も少ないからね......」
「私達も、基本は魔石便りですし、魔法を直接行使できるのは、魔族の特権ですし」
「まぁね......」

 街を散歩するラントのイヤリングには、ラント用の魔石があしらわれていた。

--

 商業区の細い路地へと入ったところにその姿はあった。
 メリッサよりも少しだけ小さく、そして愛らしいその姿と目深にフードを被っていてもわかる金色の金髪と翡翠色の瞳は、もはや隠すことのできない王族の証だった。

「どうして、こんな所におられるんです! グリエリ様!!」

 少しだけ前、ラント達と一緒にいたメリッサだったが、フードを目深に被ったグリエリが取り巻き数名を連れて路地に入っていく所を目撃したのだ。溢れ出る魔力を器用に消して人間に化けたものの、同族の彼女にはバレてしまった。

「もぅ。ラントという人物が気になってしょうがないのよ」
「で、強いの? 賢いの? どっち?」
「はぁぁ、グリエリ様。それに、あなた方まで止めなかったのですか?」
「今は、交戦などご法度でしょうに...」

 キリッとした眼差しで取り巻きの男たちを見据える。その様子は、助手と言うよりも幹部のひとりのような眼差しをしていた。ギョロリと見据える視線に取り巻きもたじろぐ。

「俺らも止めたっすよ。でもグリエリの姉御が......」
「そうっす、どうしても行くって。確かめてみたいって...ねぇ、姉御!」
「そうよ! 私の目で確かめたいもの」
「はぁぁ。まったく......」

 両手を腰にあてながら、ドヤッと胸を張ってみせる。その姿こそ威厳はあったものの、していることは子供の好奇心そのものだ。

『なんて無謀な......』
『今の状況を理解しておられない......』
『変にこじれたらどうするんですか......』
『まったく......』

 頭を抱えながらも、どうにか帰ってもらうことはできないものかと思案を巡らせるも、ふと。疑問が残る。

「そ、そうです! お姉さま方には言われたのですか?」
「そ、それが、姉御が......」
「はい、言うなと」
「はぁぁぁ......やっぱりですか......」

 たしかにそうだ。
 すぐ上のイレイナスは好戦的でも無謀ではない。さらにその上となると知略家で柔軟さの塊とも言えるマクスウェルがいる。更にその上ともなれば、そもそもこんな無謀なことは望まないし、放っておくはずがない。そんな3人が放っておくということは......。

『姉さま方......』
『......楽しんでますね。これ......』
『もう、戯れが過ぎます。王女様方......』
『......グリエリ様は何を考えているか......』

 路地の壁に手を突き、ガックリと肩を落としていたメリッサ。その後ろでは何やら作戦を練っているのか、声が漏れ聞こえる......。

「はぁ? 姉御、さすがにそれは......」
「冗談が過ぎますぜ。悪漢に襲われてる“フリ”なんて......」
「それを、俺らがやれと」
「他に誰がいるの? 他の子たちはグリフィンを戻させるために、返しちゃったし...」
「そうですけど......」
「はぁぁ......わかりやした。フリで良いんですね?」

 後ろで行われる作戦計画に、頭を悩まされてしまったメリッサ。

「もう、どうなっても知りませんからね」
「姉さま方が介入してこないのなら、そういうことですし......」
「えぇ、良いわよ? メリッサ。あ、それと......」

 立ち去ろうとするメリッサに詰め寄るようにして、詰め寄ると...

「......バラしたら許さないしないわよ?」
「......ごくり」

 キラリと光る翡翠色の瞳は内容こそ伴っていないものの、第4とは言え王女の風格を持っていた。

「......邪魔しませんよ」
「それでいいわ!」
「まったく......」
『姉さま方は、本当にお戯れを......』

 頭を抱えながらも、すぐにラントやセリアの元に戻るわけにはいかないメリッサは、しばらくエリオンの元に戻ることにしたのだった。その後ろには、楽しいことを見つけた子供のように、満面の笑みを見せるドラシオン第4王女、グリエリの姿があった。
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