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「収友。ホントにどこ行っちゃったのよッ」
明日夏は辺りを見回しながらイチとともに当てもなく農道を走っていた。
突然、イチはその場に立ち止まると、両耳をピンと立てて鼻を空に向け匂いを嗅ぎ始めた。
「イチ、どうしたの?」
明日夏がイチに声をかけたのも束の間、イチは勢いよく走り出した。
「ちょ、ちょっと! イチッ! ど、どこ行くのよ――ッ」
明日夏はつんのめりながらイチに引っ張られて山の方に走って行った。
「ゥオオ……アアアアア―――――ッ!」
収友の足元から青白い霧が沸き立つ。薄暗いアンダーライトに照らされた収友の口が女に向かって宣告をする。
「八つ裂きになって、死ねッ!」
しかし次の瞬間、収友の身体から放出された猛烈な圧力に地面が耐えきれず突如、足元が崩落した。
「ォああッ! アアアア―――!」
収友とクマ、そして少し離れた場所にいた女のほか、周りの木々を数本巻き添えにして土砂は数十メートル下の崖下に落ちていった。
陽は残り火の様な山吹色の光を空に残し、西の空に姿を消していった。影の色が薄くなる中、明日夏はイチに引かれるがままに山の奥に入っていた。
「イチ! そんなに引っ張らないで! 一体どこに行くのよ!」
「ハアッ、ハアッ……」
大きな口から赤い舌を出しながらイチは山の斜面を登ってゆく。
「イチッ。ちょっと……薄暗くってよく見えないんだからそんなに飛ばさないでって!」
明日夏は息を切らせてイチの後を必死に追う。そうしてイチに無理矢理引っ張られながらしばらく山の中を彷徨い続けていると、土砂が崩落した場所にたどり着いた。
「ゥワン! ワンワン! ハアハアッ」
イチは一鳴きすると足を止めた。
「エッ? ……土砂崩れ? ええッ! そんなにすごい雨降ってないでしょ、最近。な、何で?」
イチが崩れ落ちた土砂の山に近づくと、鼻の頭で土を掘り起こし始めた。
「……何やってんの? イチ」
イチは黙々と鼻を使って土を掘り起こす。明日夏はその様子を、訝しい顔をしながら黙って見つめていた。
「……ねぇ、イチ。……誰か、いるの? ……ま、まさか……ウソでしょ」
明日夏のまぶたが大きく開かれると、思い立ったかのようにイチの隣に駆け込んた。
「ちょッ、収友――ッ! いるのッ! ねえッ!」
明日夏は両手を土の中に突っ込むと、夢中になって土をかき出した。
「収―――――――ッ!」
いつの間にか明日夏の瞳からは涙がこぼれ落ちていた。指先を土まみれにしながら必死になって土をかき出す。
「いるなら返事して―――――ッ!」
土の中で明日夏の指先が柔らかいものに触れた。
「!」
明日夏の土をかき出す手の動きが勢いを増した。まるでモグラの様に十本の指をフルに駆使して崩落した土砂を次々と払い出していく。そして柔らかいものを覆う土を取り払うと、そこから黒い体毛が現れた。
「……な、何? この毛、……クマ?」
明日夏の顔が一気に青ざめる。そのまま憤慨した顔で後ろを向くと、イチに向かって大声で吠え立てた。
「何なのよッ! イチッ! 収友じゃないじゃないのッ!」
自分が出したその言葉に明日夏はハッとすると、思わず土にまみれた手で口元を抑えた。
「ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃ。……もしかして、あなたが街に出てきたクマなの? だとしたら何でこんなところに。……一体、何がどうしたっていうの?」
明日夏が不可解な顔をしたその時、イチが明日夏の股下を掻い潜って掘り起こした土の中に頭を突っ込んだ。
「わわっ! どしたのよ、イチ!」
イチは土砂の中にある何かを引っ張り出そうと何度も何度も大きく頭を動かし、ついに土の中から頭を出した。イチの口元には袖が噛まれていた。
「……エッ? ひ、人じゃない! ちょっとッ! 何なのよッ!」
明日夏はパニックになりながら袖を引っ張り上げる。クマの下敷きになっている袖を懸命に引き寄せると、土にまみれた真珠色の壮麗な手が顔を出した。
「……しゅう、と? ……この手、収友オッ! 何であんたがここにいンのよオ―――ッ!」
明日夏は半狂乱で叫びながらも持てるすべての力で収友を土塊から引っ張り出した。収友は気を失っていたが、クマの巨体がうまい具合に収友の上に覆い被さり、僅かなすき間ができていたため、土砂で窒息することもなくきれいな顔をしていた。
「収友。……収友。……起きて、収友ぉ」
明日夏は自分の膝に収友の頭を乗せ、優しく頬を擦る。イチは収友の顔に鼻を寄せて、しきりに匂いを嗅ぐ。
「……ぅ。……う……うう、ん」
収友の瞼がゆっくりと開く。……目の前には、暗い森の中に居て焦燥しきった明日夏の顔が見えた。
「ねェ……ちゃ、ん」
「収友オオッ!」
収友のかすれた声を聞くなり、明日夏は収友の身体に覆いかぶさって泣き叫んだ。イチはお尻がブレるほど大きくしっぽを振って収友の手のひらを思いきり舐め回した。
「……あーねーちゃん。なんで……俺がここにいるって、わかったの」
明日夏の膝枕に頭を乗せたまま収友は尋ねた。
「イチが、ここまで引っ張って来てくれたのよ! あんたたちの信頼関係が証明されたのねッ! ……でも、何でこんなところに。……しかもあんたクマの下敷きになってたのよ? 一体どうゆうことなのッ!」
眉間に皺を寄せて明日夏は収友に詰問する。
「…………。クマ。……クマッ!」
突然、収友は身を起こすと首を左右に振って辺りを見回した。そして収友から見て右斜めに、堆積した土砂から背中だけが露出しているクマの姿が見えた。収友はクマの方に駆け寄ると、その背中に右手を乗せた。
〈い、生き返ってくれェ! こっちに……戻って来てくれ―――ッ!〉
目を見開き、背中を擦りながら必死に心の中で叫ぶ。明日夏は収友の背中を黙って見つめた。
十分経ち、二十分が経過し、背中を見つめて三十分が過ぎた。明日夏はおもむろに立ち上がると、収友の右手に自分の手を置いた。
「この子を埋めて、帰りましょ」
収友は険しい目つきで自らの手を見つめると、涙声で答える。
「いやだ。僕は……コイツを助けるんだッ!」
「助けるって言ったって。……この子はね、あなたを庇う様にあなたに覆い被さっていたわ。だからあなたは土で窒息することなく助かったのね。……だから、ありがとうってお礼を言って……埋めてあげましょ」
「いやだって言ってるだろオ―――ッ!」
「収ッ! いいかげんにしなさいッ! この状態で……どうやったら生き返るって言うのよッ! 幼稚園児じゃないんでしょ! 出来る事と出来ない事の区別くらいわかる歳でしょ! 死んじゃったものはもう帰ってこないのよ! あんたがここで一晩中クマの身体揺すったって生き返ったりなんかしないのよッ! そんなことで生き返ったりするんなら私だって今頃幸せな暮らしができているわッ!」
収友の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。背中に置いていた手を強く握り締めると、嗚咽を漏らした。
「……ウッ。……ウウウッ。せっかく……ここまで連れて来れたのにィィ……助けてあげられなかった。アアァ……」
収友は握った拳をクマの背中に押し付けた。
「なんで僕がお前に助けられなきゃいけないんだよ―――ッ! 僕はお前を助けられなかったのにィィッ!」
収友の、歯を噛みしめる軋んだ音が明日夏の耳の中にいつまでも居座り続けた。
街灯も無い暗い夜道。秋の宙にはカシオペア座や山羊座、牡羊座が輝いている。
明日夏と収友、そしてイチは農道を静かに歩く。
「……そっか。残念だったわね。無事に山まで案内できたのに。でもホントに災難だったわね。あんな崩落事故に巻き込まれるなんて。……周りに誰も居ない状況であんなことに遭ったんじゃ普通、助からないわよ。イチに感謝しないとね」
「……うん、そうだね。周りには僕以外誰も……いなかったから。……イチに感謝しないとね」
収友の顔が無意識に険しくなった。
「今日は早々に寝ようね。疲れちゃったでしょ」
「……うん。早く眠って……クマのこと以外、全部忘れたい」
青白い弓張月の光は天空から三つの影を朧げに照らしていた。
明日夏は辺りを見回しながらイチとともに当てもなく農道を走っていた。
突然、イチはその場に立ち止まると、両耳をピンと立てて鼻を空に向け匂いを嗅ぎ始めた。
「イチ、どうしたの?」
明日夏がイチに声をかけたのも束の間、イチは勢いよく走り出した。
「ちょ、ちょっと! イチッ! ど、どこ行くのよ――ッ」
明日夏はつんのめりながらイチに引っ張られて山の方に走って行った。
「ゥオオ……アアアアア―――――ッ!」
収友の足元から青白い霧が沸き立つ。薄暗いアンダーライトに照らされた収友の口が女に向かって宣告をする。
「八つ裂きになって、死ねッ!」
しかし次の瞬間、収友の身体から放出された猛烈な圧力に地面が耐えきれず突如、足元が崩落した。
「ォああッ! アアアア―――!」
収友とクマ、そして少し離れた場所にいた女のほか、周りの木々を数本巻き添えにして土砂は数十メートル下の崖下に落ちていった。
陽は残り火の様な山吹色の光を空に残し、西の空に姿を消していった。影の色が薄くなる中、明日夏はイチに引かれるがままに山の奥に入っていた。
「イチ! そんなに引っ張らないで! 一体どこに行くのよ!」
「ハアッ、ハアッ……」
大きな口から赤い舌を出しながらイチは山の斜面を登ってゆく。
「イチッ。ちょっと……薄暗くってよく見えないんだからそんなに飛ばさないでって!」
明日夏は息を切らせてイチの後を必死に追う。そうしてイチに無理矢理引っ張られながらしばらく山の中を彷徨い続けていると、土砂が崩落した場所にたどり着いた。
「ゥワン! ワンワン! ハアハアッ」
イチは一鳴きすると足を止めた。
「エッ? ……土砂崩れ? ええッ! そんなにすごい雨降ってないでしょ、最近。な、何で?」
イチが崩れ落ちた土砂の山に近づくと、鼻の頭で土を掘り起こし始めた。
「……何やってんの? イチ」
イチは黙々と鼻を使って土を掘り起こす。明日夏はその様子を、訝しい顔をしながら黙って見つめていた。
「……ねぇ、イチ。……誰か、いるの? ……ま、まさか……ウソでしょ」
明日夏のまぶたが大きく開かれると、思い立ったかのようにイチの隣に駆け込んた。
「ちょッ、収友――ッ! いるのッ! ねえッ!」
明日夏は両手を土の中に突っ込むと、夢中になって土をかき出した。
「収―――――――ッ!」
いつの間にか明日夏の瞳からは涙がこぼれ落ちていた。指先を土まみれにしながら必死になって土をかき出す。
「いるなら返事して―――――ッ!」
土の中で明日夏の指先が柔らかいものに触れた。
「!」
明日夏の土をかき出す手の動きが勢いを増した。まるでモグラの様に十本の指をフルに駆使して崩落した土砂を次々と払い出していく。そして柔らかいものを覆う土を取り払うと、そこから黒い体毛が現れた。
「……な、何? この毛、……クマ?」
明日夏の顔が一気に青ざめる。そのまま憤慨した顔で後ろを向くと、イチに向かって大声で吠え立てた。
「何なのよッ! イチッ! 収友じゃないじゃないのッ!」
自分が出したその言葉に明日夏はハッとすると、思わず土にまみれた手で口元を抑えた。
「ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃ。……もしかして、あなたが街に出てきたクマなの? だとしたら何でこんなところに。……一体、何がどうしたっていうの?」
明日夏が不可解な顔をしたその時、イチが明日夏の股下を掻い潜って掘り起こした土の中に頭を突っ込んだ。
「わわっ! どしたのよ、イチ!」
イチは土砂の中にある何かを引っ張り出そうと何度も何度も大きく頭を動かし、ついに土の中から頭を出した。イチの口元には袖が噛まれていた。
「……エッ? ひ、人じゃない! ちょっとッ! 何なのよッ!」
明日夏はパニックになりながら袖を引っ張り上げる。クマの下敷きになっている袖を懸命に引き寄せると、土にまみれた真珠色の壮麗な手が顔を出した。
「……しゅう、と? ……この手、収友オッ! 何であんたがここにいンのよオ―――ッ!」
明日夏は半狂乱で叫びながらも持てるすべての力で収友を土塊から引っ張り出した。収友は気を失っていたが、クマの巨体がうまい具合に収友の上に覆い被さり、僅かなすき間ができていたため、土砂で窒息することもなくきれいな顔をしていた。
「収友。……収友。……起きて、収友ぉ」
明日夏は自分の膝に収友の頭を乗せ、優しく頬を擦る。イチは収友の顔に鼻を寄せて、しきりに匂いを嗅ぐ。
「……ぅ。……う……うう、ん」
収友の瞼がゆっくりと開く。……目の前には、暗い森の中に居て焦燥しきった明日夏の顔が見えた。
「ねェ……ちゃ、ん」
「収友オオッ!」
収友のかすれた声を聞くなり、明日夏は収友の身体に覆いかぶさって泣き叫んだ。イチはお尻がブレるほど大きくしっぽを振って収友の手のひらを思いきり舐め回した。
「……あーねーちゃん。なんで……俺がここにいるって、わかったの」
明日夏の膝枕に頭を乗せたまま収友は尋ねた。
「イチが、ここまで引っ張って来てくれたのよ! あんたたちの信頼関係が証明されたのねッ! ……でも、何でこんなところに。……しかもあんたクマの下敷きになってたのよ? 一体どうゆうことなのッ!」
眉間に皺を寄せて明日夏は収友に詰問する。
「…………。クマ。……クマッ!」
突然、収友は身を起こすと首を左右に振って辺りを見回した。そして収友から見て右斜めに、堆積した土砂から背中だけが露出しているクマの姿が見えた。収友はクマの方に駆け寄ると、その背中に右手を乗せた。
〈い、生き返ってくれェ! こっちに……戻って来てくれ―――ッ!〉
目を見開き、背中を擦りながら必死に心の中で叫ぶ。明日夏は収友の背中を黙って見つめた。
十分経ち、二十分が経過し、背中を見つめて三十分が過ぎた。明日夏はおもむろに立ち上がると、収友の右手に自分の手を置いた。
「この子を埋めて、帰りましょ」
収友は険しい目つきで自らの手を見つめると、涙声で答える。
「いやだ。僕は……コイツを助けるんだッ!」
「助けるって言ったって。……この子はね、あなたを庇う様にあなたに覆い被さっていたわ。だからあなたは土で窒息することなく助かったのね。……だから、ありがとうってお礼を言って……埋めてあげましょ」
「いやだって言ってるだろオ―――ッ!」
「収ッ! いいかげんにしなさいッ! この状態で……どうやったら生き返るって言うのよッ! 幼稚園児じゃないんでしょ! 出来る事と出来ない事の区別くらいわかる歳でしょ! 死んじゃったものはもう帰ってこないのよ! あんたがここで一晩中クマの身体揺すったって生き返ったりなんかしないのよッ! そんなことで生き返ったりするんなら私だって今頃幸せな暮らしができているわッ!」
収友の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。背中に置いていた手を強く握り締めると、嗚咽を漏らした。
「……ウッ。……ウウウッ。せっかく……ここまで連れて来れたのにィィ……助けてあげられなかった。アアァ……」
収友は握った拳をクマの背中に押し付けた。
「なんで僕がお前に助けられなきゃいけないんだよ―――ッ! 僕はお前を助けられなかったのにィィッ!」
収友の、歯を噛みしめる軋んだ音が明日夏の耳の中にいつまでも居座り続けた。
街灯も無い暗い夜道。秋の宙にはカシオペア座や山羊座、牡羊座が輝いている。
明日夏と収友、そしてイチは農道を静かに歩く。
「……そっか。残念だったわね。無事に山まで案内できたのに。でもホントに災難だったわね。あんな崩落事故に巻き込まれるなんて。……周りに誰も居ない状況であんなことに遭ったんじゃ普通、助からないわよ。イチに感謝しないとね」
「……うん、そうだね。周りには僕以外誰も……いなかったから。……イチに感謝しないとね」
収友の顔が無意識に険しくなった。
「今日は早々に寝ようね。疲れちゃったでしょ」
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