この兄、厄介につき~実は溺愛されてたなんて聞いてません!~(不定期更新)

ナナシの助

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★アリーヤサイド


「見て、アリーヤさん!私レオからこんな大きな指輪を貰ったの!」

いきなり執務室に現れたリリアーナが大きなピンクダイヤモンドの指輪を見せてきた。ふわふわさせたピンクブロンドの髪と、ハニーブラウンの瞳を持つ可愛らしいリリアーナにそれはとても良く似合うが

(その指輪、昨日も見たわ…)

毎日見せびらかしに来なくて良いのに…そんな事より今は彼女を注意しなくては。

「ノックなしに執務室に入る事も、勝手に名を呼ぶ事も淑女以前の問題──!!」

声が出ない。アリーヤは何度も声を出そうとするが音にすらならない。リリアーナはそんなアリーヤを見てクスクスといやらしげに嗤っている。

(殿下……お兄様まで……)

いつの間にかリリアーナの両隣にはおとぎ話の騎士のように立っている。二人も同じように自分を嘲笑するが、二人の手はリリアーナの腰に回っている。  

(どうして…お兄様……)
 
いつしか3人は消え、アリーヤは上も下も右も左も自分がどこにいるのか分からない、ただただ薄暗い、粘つくような世界に立っていた。その中でリリアーナとレオナルドの嗤い声とリリアーナを優しく呼ぶオーランドの声がアリーヤの頭の中に木霊する。

それと同時に、はっきりとしない利休鼠色(緑色を帯びた灰色)の靄が視界の端を這い回る。そしてやはりどこかで見たような光が一瞬きらめく。 耳の奥では不協和音のような囁きが響く。
 
「煩い、煩い!煩い!」

アリーヤは喉が痛くなるまで泣き叫ぶ。しかし声が音になることは無い。それどころか、叫ぶたびに喉が引き裂かれるような錯覚に陥り、霞は先程よりもを更に纏わりついているような気さえする。気のせいか色も少しだけ鮮やかになっている気がする。

「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!」 

ふと足元が消えたのが分かった。このままでは落ちる──!!得体の知れない薄気味悪いどこかで見た色の渦が、深淵の底から自分を飲み込もうと迫ってきていた。
  
何かを掴もうとして手を伸ばした瞬間、アリーヤはハッと目が覚める。
 
「……夢?」 

美しい銀糸が顔に張り付き、身体中が冷や汗をかいているのが分かる。心臓がばくばくと煩い。

アリーヤはミリーから建国神話のおまじないの言葉をいつものように聞き、オーランドの言う通りに普段より早めに寝た。

「なんで忘れていたのかしら…」

昨日と同じ、だけど昨日と少し違う夢だった。似たような夢を見たのは、今日もレオナルドとリリアーナに会ったせいだ。

(あの二人が絡むとろくな事が無いわね…)

オーランドは視界に入れたくないほどリリアーナを嫌っている。ゆえに有り得ないはずなのにオーランドが夢とはいえ、あちら側に居るのが少し苦しかった。

「……っ!」
 
起き上がると頭に小さな痛みが走った。しかしそれもほんの一瞬の事だ。アリーヤは少しでも嫌な気分を変えたくて、部屋にある水差しには手を出さず調理場へと向かう。今日もまた調理場の光が漏れている。中を覗けば

「お兄様…」
「やぁ、私のアリーヤ。今日も来たのか?」

髪をおろしたオーランドは更に美しく色気が溢れ出ており、またしても、見てはいけないものを見た気分になった。いつもと違う優しい雰囲気と甘く自分を呼ぶ声に先程とは別の意味で心臓が煩く鳴るが、これまた昨日と同じ状況に、まだ夢の中のような気がしてくる。

「み、水を飲もうと……」

アリーヤは思わず不安に駆られ、逃げるように視線を逸らして答える。「今日も少し歩きたかったのか?」首を傾げるオーランドの髪がサラリと肩から滑り落ち、昨日と同じように兄だと言うのにその艶やかさに呑まれてしまいそうになる。
 
「え、ええ。そうです。」

アリーヤが頷くと、オーランドはどこか心配気にアリーヤを見つめ、頬に手をやりアリーヤの目の下を親指で撫でる。

「酷い顔をしているな…」

オーランドは自分の事のように苦しそうに呟くと、静かに立ち上がり、昨日と同じようにグラスに水を入れ、アリーヤにそっと渡す。口に入れると、ほのかに甘味を感じる。チラリとオーランドを見れば、アリーヤの意図が伝わったのか

「甘い水が飲みたいと言っていたからな。作り方は企業秘密だがね。」

と優しく微笑む。自分の為に作ってくれていたと言う事実と、彼の美しい微笑みに鼓動が跳ねる。きっと2人きりの調理場。昼間より艶かしくも甘いオーランド。そんな空気の中で自分の苦手な優しい微笑みを向けられたせいだ。

「ありがとう……ございます。」 

アリーヤは赤くなっていく頬を隠すように、俯き小さく礼を言う。オーランドはそんなアリーヤをあやす様に優しく頭を撫でる。

(なんだろう……すごく気持ちいい……ずっとこうされていたい)

アリーヤはまたしてもいつの間にか目を閉じていた。
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