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★アリーヤサイド
(あら。そう言えば、その原因の二人の声を今日も執務室で聞いてないわ。)
偶然なのかわざとなのか、多分後者だとは思うがアリーヤの執務室からは毎日必ずと言っていい程レオナルドとリリアーナの笑い声が響いていた。
(今日も出掛けているのかしら?)
2日続いて彼らの声が聞こえないなど、アリーヤからすれば、遮音魔法だと言われた方が納得できる。が、以前も言った通り、遮音魔法は多少魔法を齧った者なら使える魔法だが、2時間に1度はかけ直す必要がある。
魔力が多ければ1度の詠唱で長時間かける事も可能だが、それでも多少の疲れは見えるはず。
だいたい魔法を使うには詠唱が必要だ。昨日は執務室に入る時にオーランドは小さく唱えていた気もするが、今日はオーランドが詠唱している所を聞いてはいない。
自分もミリーも遮音は使えるが、もちろん自分達も唱えていない。
紅茶を口に含みつつオーランドを見やると、体のだるいアリーヤとは真逆で、彼は少しの疲れも見えずナルシスト全開で鬱陶しく腹立たしい。
(……あの二人はどこで油を売っているのかしら…)
アリーヤはため息を漏らしては、もう一度紅茶を飲んでいると「バン」と急に執務室の扉が開くと同時に
「アリーヤ!お前、俺の仕事をしてないらしいな!婚約者の分際で何故言うことを聞かない!妃になる為の勉強と思ってわざわざ俺の執務をさせてやってると言うのに!」
「そうですよ!レオがアリーヤさんを思ってさせているのに…寧ろ自分から引き受けるべきだと思います!」
と声が響く。レオナルドとリリアーナだ。先程の疑問はすぐに解消されてしまった。
(まさか、ここに油を売りに来るなんて……)
昨日今日と2人の笑い声が聞こえない代わりに、不覚にも直接会ってしまっているが、これはこれでかなりのストレスだ。「殿下…」アリーヤが口を開くが「よしなさい、アリーヤ」とオーランドがそれを制す。
「ノックもせず、急に入ってきて大声をあげる行儀のなっていない不審者を殿下と呼ぶなど、礼儀正しい王太子殿下に失礼だ。」
「お、お兄様……?」
二人が入ってきても、我関せずと悠々と長い足を組んで紅茶を飲んでいたオーランドが、ソファから立ち上がる。そしてその長い足をレオナルドの方に向けて歩いていき、レオナルドだけをじっと見ては「ふむ」と顎に手をやっている。
レオナルドよりも身長の高いオーランドは、どうしてもレオナルドを見下ろす形になっている。しかしレオナルドは見下されているのだと感じて、怒りで顔を赤くする。まぁ、実際オーランドはそれも計算して「見下ろす」では無く「見下して」いるのだろう。
因みにオーランドはリリアーナには少しの視線も向けていない。徹底的に目に入れたくないらしい。
リリアーナはレオナルドに腕を絡めてはいるものの、目の前に来たオーランドに頬を染め熱い視線を送り「オーランド様…」と熱ぽく媚びるように呼んでいる。昨日言われた事はすっかり忘れているようだ。
「やはりよく似ているが王太子殿下の偽物だ。殿下はこんなにジャラジャラと悪趣味な指輪を付けるような方じゃない。おまけに王太子殿下の婚約者である公爵令嬢を『さん付け』で呼ぶような女性を侍らせるなど多方『影武者』だろう。役割を忘れ自分を殿下と思い込むとは。彼の頭の出来にはいっそ同情すら覚える」
「お兄様……」
明らかに本物のレオナルドに向かってなんと言う事を言うのか…いい気味だと思いつつも、昨日の今日で流石に不敬過ぎないだろうか。アリーヤはオーランドの言葉にハラハラしてしまう。
「さて。影武者殿。貴殿はレオナルド王太子殿下ではない。勝手に殿下の仕事を取り上げ、アリーヤの所に書類を持ってくるなど犯罪だ。影武者ごときが勝手に内容を読んで判断して良い代物では無い。それとも影武者殿は、無知で愚鈍なアリーヤにすら出来る仕事を、殿下には出来ないと仰るのかな?そうであるなら殿下に対して何たる不敬!殿下は唯一無二の優秀で尊きお方!」
オーランドは相手に反論の隙を与えず、舞台俳優の如く大仰によどみなく話していたかと思うと、急に一度言葉を区切り、少しだけ視線を強め甘く
「だからこそ『王太子』なのだ。努努お忘れなきよう」
圧のある低い声で囁く。さながら悪魔の脅しのように見えたのは自分だけではないだろう。レオナルドは勿論、近くで聞いていたミリーも顔を青くしている。
対してこんな彼に更に頬を染め、胸を強調し女をアピール出来るリリアーナの心臓は、オーランドと同じ強さなのかもしれない。
「と言う事で、経験不足で、力量不足な若輩の我々は地道に処理を行わねばならないゆえ、貴殿にはお帰り願おう」
最後までリリアーナの事は数には入れなかったな…とアリーヤがどこか遠い目をしていると、オーランドは何かを呟く。するとレオナルドとリリアーナは「え?」「わ!おい!」などと慌てながら自ら後ろ歩きをし、ミリーがそれに合わせ完璧なタイミングでドアを開け、執務室の外へと出ていった。
「お兄様、今のは?」
「今の?ああ、影武者殿が勝手に出ていった理由か?簡単な事だ。」
そう言ってオーランドは、またも詠唱を小さく唱えると、アリーヤの足元に小さな風を起こす。それを避けようと動くと、アリーヤはまるでダンスを優雅に踊っているように見える。
「影武者殿には当たると多少だが痛みを感じるように風を少し強めた。故に不格好ながらもきちんと避けてくれてね。しかし、まぁ、子供でもできる単純な風魔法だ」
確かに魔法自体は生活魔法レベルで、詠唱自体もとても簡単なものだが、この技術は余程でないと難しいだろう。視界の範囲内とは言え子供でも使える魔法で、人を思い通りに動かせるなど考え方によっては恐ろしい魔法になってしまう。
アリーヤは深く考えるのをやめ今日はいっそう早く眠ろうと心に決めた。
(あら。そう言えば、その原因の二人の声を今日も執務室で聞いてないわ。)
偶然なのかわざとなのか、多分後者だとは思うがアリーヤの執務室からは毎日必ずと言っていい程レオナルドとリリアーナの笑い声が響いていた。
(今日も出掛けているのかしら?)
2日続いて彼らの声が聞こえないなど、アリーヤからすれば、遮音魔法だと言われた方が納得できる。が、以前も言った通り、遮音魔法は多少魔法を齧った者なら使える魔法だが、2時間に1度はかけ直す必要がある。
魔力が多ければ1度の詠唱で長時間かける事も可能だが、それでも多少の疲れは見えるはず。
だいたい魔法を使うには詠唱が必要だ。昨日は執務室に入る時にオーランドは小さく唱えていた気もするが、今日はオーランドが詠唱している所を聞いてはいない。
自分もミリーも遮音は使えるが、もちろん自分達も唱えていない。
紅茶を口に含みつつオーランドを見やると、体のだるいアリーヤとは真逆で、彼は少しの疲れも見えずナルシスト全開で鬱陶しく腹立たしい。
(……あの二人はどこで油を売っているのかしら…)
アリーヤはため息を漏らしては、もう一度紅茶を飲んでいると「バン」と急に執務室の扉が開くと同時に
「アリーヤ!お前、俺の仕事をしてないらしいな!婚約者の分際で何故言うことを聞かない!妃になる為の勉強と思ってわざわざ俺の執務をさせてやってると言うのに!」
「そうですよ!レオがアリーヤさんを思ってさせているのに…寧ろ自分から引き受けるべきだと思います!」
と声が響く。レオナルドとリリアーナだ。先程の疑問はすぐに解消されてしまった。
(まさか、ここに油を売りに来るなんて……)
昨日今日と2人の笑い声が聞こえない代わりに、不覚にも直接会ってしまっているが、これはこれでかなりのストレスだ。「殿下…」アリーヤが口を開くが「よしなさい、アリーヤ」とオーランドがそれを制す。
「ノックもせず、急に入ってきて大声をあげる行儀のなっていない不審者を殿下と呼ぶなど、礼儀正しい王太子殿下に失礼だ。」
「お、お兄様……?」
二人が入ってきても、我関せずと悠々と長い足を組んで紅茶を飲んでいたオーランドが、ソファから立ち上がる。そしてその長い足をレオナルドの方に向けて歩いていき、レオナルドだけをじっと見ては「ふむ」と顎に手をやっている。
レオナルドよりも身長の高いオーランドは、どうしてもレオナルドを見下ろす形になっている。しかしレオナルドは見下されているのだと感じて、怒りで顔を赤くする。まぁ、実際オーランドはそれも計算して「見下ろす」では無く「見下して」いるのだろう。
因みにオーランドはリリアーナには少しの視線も向けていない。徹底的に目に入れたくないらしい。
リリアーナはレオナルドに腕を絡めてはいるものの、目の前に来たオーランドに頬を染め熱い視線を送り「オーランド様…」と熱ぽく媚びるように呼んでいる。昨日言われた事はすっかり忘れているようだ。
「やはりよく似ているが王太子殿下の偽物だ。殿下はこんなにジャラジャラと悪趣味な指輪を付けるような方じゃない。おまけに王太子殿下の婚約者である公爵令嬢を『さん付け』で呼ぶような女性を侍らせるなど多方『影武者』だろう。役割を忘れ自分を殿下と思い込むとは。彼の頭の出来にはいっそ同情すら覚える」
「お兄様……」
明らかに本物のレオナルドに向かってなんと言う事を言うのか…いい気味だと思いつつも、昨日の今日で流石に不敬過ぎないだろうか。アリーヤはオーランドの言葉にハラハラしてしまう。
「さて。影武者殿。貴殿はレオナルド王太子殿下ではない。勝手に殿下の仕事を取り上げ、アリーヤの所に書類を持ってくるなど犯罪だ。影武者ごときが勝手に内容を読んで判断して良い代物では無い。それとも影武者殿は、無知で愚鈍なアリーヤにすら出来る仕事を、殿下には出来ないと仰るのかな?そうであるなら殿下に対して何たる不敬!殿下は唯一無二の優秀で尊きお方!」
オーランドは相手に反論の隙を与えず、舞台俳優の如く大仰によどみなく話していたかと思うと、急に一度言葉を区切り、少しだけ視線を強め甘く
「だからこそ『王太子』なのだ。努努お忘れなきよう」
圧のある低い声で囁く。さながら悪魔の脅しのように見えたのは自分だけではないだろう。レオナルドは勿論、近くで聞いていたミリーも顔を青くしている。
対してこんな彼に更に頬を染め、胸を強調し女をアピール出来るリリアーナの心臓は、オーランドと同じ強さなのかもしれない。
「と言う事で、経験不足で、力量不足な若輩の我々は地道に処理を行わねばならないゆえ、貴殿にはお帰り願おう」
最後までリリアーナの事は数には入れなかったな…とアリーヤがどこか遠い目をしていると、オーランドは何かを呟く。するとレオナルドとリリアーナは「え?」「わ!おい!」などと慌てながら自ら後ろ歩きをし、ミリーがそれに合わせ完璧なタイミングでドアを開け、執務室の外へと出ていった。
「お兄様、今のは?」
「今の?ああ、影武者殿が勝手に出ていった理由か?簡単な事だ。」
そう言ってオーランドは、またも詠唱を小さく唱えると、アリーヤの足元に小さな風を起こす。それを避けようと動くと、アリーヤはまるでダンスを優雅に踊っているように見える。
「影武者殿には当たると多少だが痛みを感じるように風を少し強めた。故に不格好ながらもきちんと避けてくれてね。しかし、まぁ、子供でもできる単純な風魔法だ」
確かに魔法自体は生活魔法レベルで、詠唱自体もとても簡単なものだが、この技術は余程でないと難しいだろう。視界の範囲内とは言え子供でも使える魔法で、人を思い通りに動かせるなど考え方によっては恐ろしい魔法になってしまう。
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