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★アリーヤサイド
食事に入浴が終ると、アリーヤは欠伸が出そうになる。淑女として口を大きく開ける事は何とか阻止したが、もししていたらスコーンが丸々一個簡単入ってしまう程に、大きい口を開けていただろう。
昼間散々眠ったから今夜はなかなか眠れないだろうと思っていたが、体は今までの仕事量や、レオナルドとリリアーナの対応に思った以上にストレスで疲れているらしい。
(頭痛も相変わらず取れないし、早く眠るのが一番ね。)
アリーヤがベッドに入るとミリーが静かに
「お嬢様に『分け隔てない幸福が永遠に続きますように』」
といつものように優しく頭を撫でる。
「ミリーにも。『分け隔てない幸福が永遠に続きますように』」
アリーヤもいつものように返し眠る。
* * *
「見て、アリーヤさん!私オーランド様からドレスと大きな指輪を貰ったの!」
いきなり執務室に現れたリリアーナが、大きな新緑と海とが混ざったようなパライバトルマリンの指輪に、上品な金のドレスを見せてきた。波打つピンクブロンドの髪とハニーブラウンの瞳を持つ可愛らしいリリアーナにそれはとても似合っている。
(いいえ。貴女だけは絶対に似合わないわ……)
毎日見せびらかしに来ないで……きちんと彼女に言わなければ。
「『全部返して!!』」
やはり声が出ない。アリーヤは何度も声を出そうとするが音にすらならない。リリアーナはそんなアリーヤを見て、指輪とドレスを見せびらすようにクルクル回ってはいやらしげに嗤っている。
(殿下……お兄様……)
いつの間にか、リリアーナの両隣には二人がおとぎ話の騎士のように立っている。レオナルドはいつもと同じように自分を嘲笑するが、オーランドはアリーヤに見向きもせず、オーランドの色を纏ったリリアーナに跪き手にキスをする。
(嫌!どうして…なんで!お兄様……!!)
いつしか3人は消え、アリーヤは上も下も右も左も自分がどこにいるのか分からない、暗い、粘つくような世界に立っていた。その中でレオナルドの嗤い声と、オーランドがリリアーナに甘く囁く声、それに嬉しそうに笑うリリアーナの声が聞こえる。それと同時にアップルグリーンの靄が視界の端を這い回る。「あの時」見た色の光が一瞬きらめく。 耳の奥では不協和音のような囁きが響く。
「言わない!お兄様はそんな事貴女だけには絶対言わない!お兄様、お願い言わないで!」
アリーヤは耳を塞ぎながら喉が痛くなるまで泣き叫ぶ。しかし声が音になることは無い。それどころか、叫ぶたびに喉が引き裂かれるような錯覚に陥り、霞は先程よりもを更にねっとりと特に喉や頭に纏わりつく。明らかに鮮やかになっていく緑が不気味だ。
「やめて!やめて!!お兄様、私を捨てないで!!」
叫ぶ度に口からはたくさんの血が零れる。纏わりつく霞は重みを持ってさらに自分の動きを封じてくる。それでも、アリーヤはオーランドに叫ぶ
「ここにいるって言ったじゃない!!」
ふと足元がぬるりと何かに掴まれ、引きずられるように落ちていく。得体の知れない薄気味悪い「あの緑」の色をした怪物が深淵の底から自分を飲み込もうとしていた。
「お兄様――!!」
何かを掴もうとして手を伸ばした瞬間、アリーヤはハッと目が覚める。喉を震える手で触れ、口元へと手をやり、その後手のひらを握っては開きを繰り返し体の自由を確認する。
(喉も痛くない。血も吐いてない……きちんと体も動く…)
アリーヤは部屋の水差しには目もくれず調理場へと向かう。しかし明かりは点いていない。
(そう言えば今日は……お兄様はリリアーナ様の所に……いえ、恋人の所に…行ったんだわ……)
いや、違う。その恋人がリリアーナなのだ。いいや違う。オーランドはリリアーナだけは嫌っている。でも、今日はいつもと違って執務室で会話をしていて……
ああ、ダメだ。頭が混乱する。水を飲んで落ち着こう。お兄様が入れてくれた甘い水が飲みたい。違う。昨日水を入れてくれたのは、たまたま起きていた料理長で――
アリーヤはクラクラしたまま水を飲み部屋へと戻る。眠りたくない。寝たらまたあの夢を見そうで怖い。
(お兄様――……)
アリーヤはベッドに戻ると、夢から身を守るように布団に潜り丸くなる。その時誰かが入ってきたようなそんな気がした。
食事に入浴が終ると、アリーヤは欠伸が出そうになる。淑女として口を大きく開ける事は何とか阻止したが、もししていたらスコーンが丸々一個簡単入ってしまう程に、大きい口を開けていただろう。
昼間散々眠ったから今夜はなかなか眠れないだろうと思っていたが、体は今までの仕事量や、レオナルドとリリアーナの対応に思った以上にストレスで疲れているらしい。
(頭痛も相変わらず取れないし、早く眠るのが一番ね。)
アリーヤがベッドに入るとミリーが静かに
「お嬢様に『分け隔てない幸福が永遠に続きますように』」
といつものように優しく頭を撫でる。
「ミリーにも。『分け隔てない幸福が永遠に続きますように』」
アリーヤもいつものように返し眠る。
* * *
「見て、アリーヤさん!私オーランド様からドレスと大きな指輪を貰ったの!」
いきなり執務室に現れたリリアーナが、大きな新緑と海とが混ざったようなパライバトルマリンの指輪に、上品な金のドレスを見せてきた。波打つピンクブロンドの髪とハニーブラウンの瞳を持つ可愛らしいリリアーナにそれはとても似合っている。
(いいえ。貴女だけは絶対に似合わないわ……)
毎日見せびらかしに来ないで……きちんと彼女に言わなければ。
「『全部返して!!』」
やはり声が出ない。アリーヤは何度も声を出そうとするが音にすらならない。リリアーナはそんなアリーヤを見て、指輪とドレスを見せびらすようにクルクル回ってはいやらしげに嗤っている。
(殿下……お兄様……)
いつの間にか、リリアーナの両隣には二人がおとぎ話の騎士のように立っている。レオナルドはいつもと同じように自分を嘲笑するが、オーランドはアリーヤに見向きもせず、オーランドの色を纏ったリリアーナに跪き手にキスをする。
(嫌!どうして…なんで!お兄様……!!)
いつしか3人は消え、アリーヤは上も下も右も左も自分がどこにいるのか分からない、暗い、粘つくような世界に立っていた。その中でレオナルドの嗤い声と、オーランドがリリアーナに甘く囁く声、それに嬉しそうに笑うリリアーナの声が聞こえる。それと同時にアップルグリーンの靄が視界の端を這い回る。「あの時」見た色の光が一瞬きらめく。 耳の奥では不協和音のような囁きが響く。
「言わない!お兄様はそんな事貴女だけには絶対言わない!お兄様、お願い言わないで!」
アリーヤは耳を塞ぎながら喉が痛くなるまで泣き叫ぶ。しかし声が音になることは無い。それどころか、叫ぶたびに喉が引き裂かれるような錯覚に陥り、霞は先程よりもを更にねっとりと特に喉や頭に纏わりつく。明らかに鮮やかになっていく緑が不気味だ。
「やめて!やめて!!お兄様、私を捨てないで!!」
叫ぶ度に口からはたくさんの血が零れる。纏わりつく霞は重みを持ってさらに自分の動きを封じてくる。それでも、アリーヤはオーランドに叫ぶ
「ここにいるって言ったじゃない!!」
ふと足元がぬるりと何かに掴まれ、引きずられるように落ちていく。得体の知れない薄気味悪い「あの緑」の色をした怪物が深淵の底から自分を飲み込もうとしていた。
「お兄様――!!」
何かを掴もうとして手を伸ばした瞬間、アリーヤはハッと目が覚める。喉を震える手で触れ、口元へと手をやり、その後手のひらを握っては開きを繰り返し体の自由を確認する。
(喉も痛くない。血も吐いてない……きちんと体も動く…)
アリーヤは部屋の水差しには目もくれず調理場へと向かう。しかし明かりは点いていない。
(そう言えば今日は……お兄様はリリアーナ様の所に……いえ、恋人の所に…行ったんだわ……)
いや、違う。その恋人がリリアーナなのだ。いいや違う。オーランドはリリアーナだけは嫌っている。でも、今日はいつもと違って執務室で会話をしていて……
ああ、ダメだ。頭が混乱する。水を飲んで落ち着こう。お兄様が入れてくれた甘い水が飲みたい。違う。昨日水を入れてくれたのは、たまたま起きていた料理長で――
アリーヤはクラクラしたまま水を飲み部屋へと戻る。眠りたくない。寝たらまたあの夢を見そうで怖い。
(お兄様――……)
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