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65 ミリーサイド
しおりを挟む★ミリーサイド
そう。ミリーはアリーヤを大切に思って来た。害しようなどと一度たりとも思った事は無い。オーランドは何か決定的に勘違いをしている。
「それについては僕が話そう」
当然のようにこの執務室に最初からいた青年、会った事は無いがきっとオーランドの友人なのだろう。彼はこちらへ来て人好きする笑顔で微笑み
「君がミリーだね。僕はアレンだ。まぁ僕の事はその辺の子爵令息だと思ってくれれば良い。さて。ここからはミリーには辛い話だけど、君は確かにアリーヤ嬢に悪夢を見せていた張本人だ」
と自分を責める。自分はそんな事はしていないと泣きながら何度も首を振るが、アレンは済まなそうな顔をするだけだ。
「君は確かにアリーヤ嬢を大切に思っていたんだろう。でもね、それを逆手に取られた。君の恋人は確かマーチンと言ってドーソン伯爵家の騎士だと言っていたね?緑のペンダントを誕生日に貰ったそうだね?オーランドから全部聞いてるよ」
ミリーら思わずオーランドを睨んだ。外出した時、そこまで使用人の話を聞きたいものなのかと思いもしたが、浮名を流すオーランドなら有り得るとも思っていた。何よりアリーヤの兄で彼は気分屋だが人が好い。信じない訳が無い。なのに、あの時点でオーランドは自分を疑っていたとは。
「……はい。事実でございます。しかし、それがなんだと言うのですか?私個人の話です。何の関係もないでは無いですか!」
今度はアレンを感情のままに睨んでしまった。が、さすがはオーランドの友人と言った所か。自分の事など歯牙にもかけない。
「そうだね。本来なら関係ない話だ。けどね『マーチン』なんて騎士は居なかったよ」
「??何を仰ってるのか……?」
「マーチンは伯爵が雇い入れたゴロツキだよ」
「……ゴロツキ?」
アレンが何を言っているのかミリーにはさっぱり分からず思考が止まってしまうが、アレンは構わず続ける。
「アリーヤ嬢の侍女である君を落とす為に雇われたんだ。変な輩に絡まれている所を助けて貰ったんだって?だが、それも全て君の信用を得るための自作自演だ」
「……な、にを?」
「運命的な出会いだと思っていたそれは全て計画だった。アリーヤ嬢に呪詛をかける為の。君は君個人ではなく『アリーヤ嬢の侍女』だから選ばれた」
「……なっっ!そ、そんな訳ありません!!」
平々凡々で地味な自分を、きちんと見てくれる人がやっと出来たと喜んでいたのに、それが全て嘘などそんな訳がない。マーチンは実直で口下手だけど優しくて。女心を弄ぶような男じゃない。
「それも計算だよ。実直で口下手な騎士と女好きなオーランド、どっちが信用できるかなんて分かりきった事だろう?」
「チッ。俺を引き合いに出すな」
「一番分かりやすい例じゃないか」
「俺」と言う一人称で舌打ちをした金髪の男性は本当にあのオーランドなのだろうか。自分を突き出した時も、アリーヤの部屋で自分を問い詰めた時もまるでいつものオーランドと違った。もしや、オーランドの素はこちらであれは演技なのだろうか。そして、マーチンもオーランドと同じように演技をしていた……?
(ううん。そんな事ないわ!誰が疑っても恋人の私だけは彼を信じなきゃ!)
「そして、君は誕生日にあのペンダントを貰った。これもオーランドが話していたと思うけど、希少な宝石を君は本当に一介の騎士が買えると思っていたの?彼のその宝石は伯爵が君に渡すように用意したものだ。目と同じ色だったのは説得に使いやすいし嬉しい誤算だったろうね」
「待って!待ってください!仮にそうだとして!なぜ私がお嬢様に呪詛をかけたことなるのですか!?それに!もしその緑のペンダントが関係していたとしても、今日は何もしていません!」
ミリーは頭がおかしくなりそうだ。マーチンとの出会いが全て仕組まれていた?アリーヤを傷つける為に自分は利用されていたと?いや、そんな事あるはずない。
もし、緑のペンダントが伯爵からのものだとしてもそれは、マーチンだって騙されて私に渡したに違いない。それに今日は「露店」でたまたま見つけたペンダントをマーチンは買ってくれたのだ。
緑のペンダントが災いだったとしても、今日の事は説明できるわけが無い。
「ミリー……」
オーランドの低い声が響き思わずびくりと体が跳ねる。
「お前はもう少し賢い女だと思っていたが?露店で買い物?そんなものは初めから伯爵家と繋がりのある露店に置いて貰えば良いだけの話だ。そしてあたかもマーチンがそのペンダントに偶然気に入ったように見せる。」
「だとしても!どうやって私を街に!?送り出してくれたのはリュクソン家の使用人です!」
「それこそ『偶然』だ。リュクソン家の使用人達が善意からお前を外に出したが、それが無かったのなら、連れ出す理由を作れば良い。例えば俺がお前を連れ出した時のように『見舞いの品を送りたいが何を選んだら良いか分からない』とかな」
ミリーは目を丸くする。オーランドが自分誘ったのもつまりは全て計算だった。少しも違和感などなかった。オーランドはずっとアリーヤに付き添っていて、だからこそ気が晴れる物を渡したいと言っても不思議に思わなかった。
「お嬢様へのプレゼントはどうでも良かったのですね……」
ミリーはギリっと歯をかみ締めてオーランドを睨む。
「そう言われると耳が痛いな。お前をアリーヤから引き離すのが最優先だった。だが今とはなってはあの外出は『忘れらない刺激的な一日』になっただろう?これでも『俺』はともかく『私』は約束は守るほうでね」
オーランドは少しだけ軽口を言うと先程より鋭い視線を向け
「おかげで俺がペンダントを取り上げてからアリーヤは悪夢を見なかった。『今日』までな」
「……っっ!!」
「マーチンから貰ったペンダントを渡せ」
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