彼女いない歴=年齢 デート経験0の俺ですが、レンタル彼氏始めました!~一緒に《特別》作りませんか~

夜月桜

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プロローグ

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「ごめんねぇ、武蔵君。最近の不景気もあって、売り上げも落ち込んでてねぇ。このお店、今日一杯で閉店することになったんだよ」
 土曜日のバイト終わり。
 店長から告げられた突然の言葉に、俺は一瞬耳を疑った。
「え、マジですか?」
「うん、マジ」
 冗談、と言われるのを期待したが、店長は頷きを返してくる。
「その、他店舗に移動したりとかは?」
「ごめんねぇ。他の店舗も不景気で、取る気が無いらしくて」
「そう、ですか……」
「うん。で、申し訳ないんだけど、今日でバイト終わりってことで」
「はい……」
 こうして、俺は一年と三カ月ほど勤めたバイト先を失った。

 俺、宮原武蔵は、バイトに勤しむ高校二年生だ。
 数年前に両親が他界してしまい、現在は俺と二歳年下の妹で二人暮らしを送っている。
 目下の課題は、兎にも角にもお金が無い事だ。
両親が他界した際に、それなりの額の遺産が手に入った。しかし、俺たち二人が四年生大学を卒業するまでの金額を考えると、全然足りない。
 なので、俺にはバイトが必要だった。しかも、これから迎える夏休みは最大の書き入れ時だ。なんとしても、早急に新たなバイト先を探さなければならない。
……どれもこれも、なんかなぁ。
 駅に向かう道すがら、スマホでバイト募集のサイトを見てみるが、これといった募集が見つからない。
 夏休み前は、バイトの争奪戦だ。だから、悠長に悩んでいる暇などないのだが、だからと言って適当に申し込んでハズレを引いて、メンタルがやられては元も子もない。
 スクロールして、気になったものは「お気に入り」登録をして、ページを読み進めていく。
 特に「これだ!」といったバイトも見つからないまま、俺は駅の改札に到着していた。
 現時刻は、夜の七時。土曜日とはいえ、まだまだ人の数は多い時間帯だ。
 スマホをポケットにしまって、改札を通り抜ける。ホームへと向かう中で、俺は適当に広告を流し見ていた。
 お菓子、化粧品、週刊誌、漫画、etc……
 様々な広告が掲載されている。そんな中でも暇つぶしにもってこいだったのが、電子掲示板だった。
「ふわぁ」
 欠伸をしながら、切り替わる広告を何となく眺める。
「レンタル?」
 そんな中で、一つ俺の目に止まった広告があった。

『レンタル彼氏募集!』

 大きく表示されたその広告には、所謂イケメンな方々の写真が多く表示されていて、その後に一緒に街中を歩いているシーンが映像で流れた。
『レンタル彼氏』とスマホを開いて検索してみる。トップにヒットした『株式会社レンタル彼氏』をタップする。
 表示されたのは、顔写真付きの彼氏達。揃ってイケメンな彼らは一旦スルーして、ページ下部。
「これか」
彼氏募集中! と書かれた場所を見つけて、タップした。
 
『貴方も、最高の彼氏になってみませんか?』

 というキャッチコピーと共に、文章が長々と掲載されているページに飛んだ。何となく流し読みをして、下の方。そこには、彼氏への道。つまりは採用過程と、自給について書かれていた。
……時給5000円⁉
 そこには彼氏の一例が掲載されていたのだが、一時間当たりのレンタル料は、なんと5000円。彼氏の手取りとなると、そこからサイト登録料やら仲介手数料やらが引かれるので減りはするも、それでも普通にバイトするよりも倍以上稼げるのは確かだ。
 途端に興味を引かれて、詳しく調べてみる。
 まず年齢制限だが、高校生からOKとの事。ただし、未成年は保護者の許可証を提出する必要がある。これは、マンションの保証人になってくれている祖父母に話をすれば、どうにかなりそうだ。
 次に、求める人物像。『人と話すのが好き』『人を喜ばせたい』『ありがとうと言われたい!』『人気者になりたい!』等々。明るい文言が並んでいる。
……当然だけど、ハードル高いな。
 俺は、お世辞にも明るい人間ではない。自分で言うのは悲しいが、クラスでも目立たない、陰キャ、と言われるような部類だ。
そもそも、リアルで彼女が出来たことすらなく、異性と話すのは妹くらい。
……やっぱり無理か。
そう思って諦めようと思ったが、『初心者も安心!』という欄があるのを見つけて、タップした。
 それによると、彼氏として採用された場合には、デートに向けての解説マニュアルと参考動画を見て学べる! と書かれている。
 ここまでやってくれるのであれば、時給も高く悪くない。
 俺がこうしてバイトをするのは、そもそもが妹の為だ。妹には俺のようにバイトと勉強漬けの寂しい青春ではなく、キラキラとした青春を送ってほしい。それをサポートするのも、兄である俺の役目だ。
「相談、してみるかな」
 キキッーという甲高い音と共に、列車がホームへと到着した。
 俺は家で夕飯を作ってくれているだろう妹を思い浮かべつつ、そう決めた。
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