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第五話~side莉那~
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「ふふふぅ♪」
夜。夕食も入浴も終えて、各々自室に戻ってから。
私はベッドに寝転がり、デートの余韻に浸っていた。
カッコいいお兄ちゃんを思い出しながら、枕元を見る。
そこにあるのは、男性用のワックスと香水だ。
「やっぱり、良い匂いだよね?」
手に取って、香水の出口の近くで、鼻をスンスンして匂いを嗅ぐ。
ミント系の、爽やかな香りがする。
……うん。絶対合う。
これらは、デートの最中。トイレに行くと言ってこっそりと購入していた物だった。お兄ちゃんに喜んでもらおうと思って買ったから、ちょっと奮発してしまった。
そのせいで、クレープを食べる時にはお金が無くなっていたんだけど。
……う~ん。でも、平気かな?
絶対合う。これを付ければ、カッコいいお兄ちゃんはもっとカッコよくなる。それは間違いない。
だけど、私には不安なことが一つあった。
お兄ちゃんは気が付いていなかったけど、今日のちょっとオシャレなお兄ちゃんに、すれ違った女性たちは偶に視線を向けていた。
私には、それがお兄ちゃんに異性としての魅力を感じているものだと分かる。だって、私がお兄ちゃんを見る視線と、同じ類の物だったから。
これを付ければカッコよくなるし、何なら私がその横を歩きたい。だけど、実際に歩くのは、偽物とはいえ彼女。そう考えると、何となく胸のあたりがモヤモヤとした影に覆われる気がする。
それに、今日のお兄ちゃん。最初こそミスを連発していたけど、お店を出た後なんかは何も言わずに手を繋いでくれたり、人混みには壁になって気遣ってくれたり。
なんだかんだ、ドキドキする場面の連続だった。
……あんなの、惚れない女がいるの?
絶賛惚れている私からすれば、いない、と断言できるほどだ。本当は、一生私の事だけを見ていて欲しい。
「はぁ」
私は、手元のワックスの入れ物をクルクルと転がす。さっきまでの幸せな気分は霧散して、後に残ったのは不安だけ。
昨日から、この胸に刺さった不安という名の棘が、チクチクと痛んでいる。
それでも、許可した以上は応援しないといけない。その結果が、たとえ私の望んでいない未来だったとしても。
「ドラマでも見よっと」
そう思って、香水とワックスを片付ける。スマホを起動して、動画を見始めた。
私が今見ているのは、交際を始めたカップルが、まさかの幼いころに分かれた兄妹だった、というドラマ。
登場人物を私とお兄ちゃんに置き換えると、とても感情移入ができてすっかり嵌っている。
「あぁ、私も抱きしめて欲しいなぁ」
画面には、彼氏(兄)に、彼女(妹)が抱きしめられているシーンが映っている。私もいつか、と憧れているシチュエーションだ。
……もし、これをお兄ちゃんが頼まれたら。抱きしめるのかな?
ふと、そんな考えが頭を過る。
レンタルとはいえ、彼氏。どこまで、サービスとして許可されているのだろう?
気になって、簡単にスマホで検索して調べてみるも、エッチやキスがNG、程度の事しか分からなかった。
何となく淀んだ気分のままドラマに戻っても、今度は全然集中できなかった。
「はぁ、寝ちゃお」
これ以上は無駄だと判断して、私は頭まで布団を被って目を瞑る。
私は、真っ暗な視界の中で、祈った。
……お兄ちゃんと、ずっと一緒にいれますように。
ギュッ、と目を瞑って。
私は、睡魔が訪れるのを待つのだった。
夜。夕食も入浴も終えて、各々自室に戻ってから。
私はベッドに寝転がり、デートの余韻に浸っていた。
カッコいいお兄ちゃんを思い出しながら、枕元を見る。
そこにあるのは、男性用のワックスと香水だ。
「やっぱり、良い匂いだよね?」
手に取って、香水の出口の近くで、鼻をスンスンして匂いを嗅ぐ。
ミント系の、爽やかな香りがする。
……うん。絶対合う。
これらは、デートの最中。トイレに行くと言ってこっそりと購入していた物だった。お兄ちゃんに喜んでもらおうと思って買ったから、ちょっと奮発してしまった。
そのせいで、クレープを食べる時にはお金が無くなっていたんだけど。
……う~ん。でも、平気かな?
絶対合う。これを付ければ、カッコいいお兄ちゃんはもっとカッコよくなる。それは間違いない。
だけど、私には不安なことが一つあった。
お兄ちゃんは気が付いていなかったけど、今日のちょっとオシャレなお兄ちゃんに、すれ違った女性たちは偶に視線を向けていた。
私には、それがお兄ちゃんに異性としての魅力を感じているものだと分かる。だって、私がお兄ちゃんを見る視線と、同じ類の物だったから。
これを付ければカッコよくなるし、何なら私がその横を歩きたい。だけど、実際に歩くのは、偽物とはいえ彼女。そう考えると、何となく胸のあたりがモヤモヤとした影に覆われる気がする。
それに、今日のお兄ちゃん。最初こそミスを連発していたけど、お店を出た後なんかは何も言わずに手を繋いでくれたり、人混みには壁になって気遣ってくれたり。
なんだかんだ、ドキドキする場面の連続だった。
……あんなの、惚れない女がいるの?
絶賛惚れている私からすれば、いない、と断言できるほどだ。本当は、一生私の事だけを見ていて欲しい。
「はぁ」
私は、手元のワックスの入れ物をクルクルと転がす。さっきまでの幸せな気分は霧散して、後に残ったのは不安だけ。
昨日から、この胸に刺さった不安という名の棘が、チクチクと痛んでいる。
それでも、許可した以上は応援しないといけない。その結果が、たとえ私の望んでいない未来だったとしても。
「ドラマでも見よっと」
そう思って、香水とワックスを片付ける。スマホを起動して、動画を見始めた。
私が今見ているのは、交際を始めたカップルが、まさかの幼いころに分かれた兄妹だった、というドラマ。
登場人物を私とお兄ちゃんに置き換えると、とても感情移入ができてすっかり嵌っている。
「あぁ、私も抱きしめて欲しいなぁ」
画面には、彼氏(兄)に、彼女(妹)が抱きしめられているシーンが映っている。私もいつか、と憧れているシチュエーションだ。
……もし、これをお兄ちゃんが頼まれたら。抱きしめるのかな?
ふと、そんな考えが頭を過る。
レンタルとはいえ、彼氏。どこまで、サービスとして許可されているのだろう?
気になって、簡単にスマホで検索して調べてみるも、エッチやキスがNG、程度の事しか分からなかった。
何となく淀んだ気分のままドラマに戻っても、今度は全然集中できなかった。
「はぁ、寝ちゃお」
これ以上は無駄だと判断して、私は頭まで布団を被って目を瞑る。
私は、真っ暗な視界の中で、祈った。
……お兄ちゃんと、ずっと一緒にいれますように。
ギュッ、と目を瞑って。
私は、睡魔が訪れるのを待つのだった。
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