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1泊目 優しい嘘はお嫌いですか?
第11話 覚悟の朝
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着替えなんてあるはずがないから、私服は昨日と同じ。
ただ、ウチの宿に来る人の大半は都合良く着替えなど持っていないのがわかりきっているから、基本はお客様が寝ている間に洗濯をしておくのだ。
もちろん、ウチのサービスで。
また一歩、破産に近づいたね☆
「ご気分はいかがですか?」
「悪くない……かな。勝手に心を除かれたのは、その……少し恥ずかしいけど」
私の問いに対して、悟くんは頬を掻きつつ答える。
若干不服そうに眉根をよせてこそいるが、その表情は憑き物が落ちたように晴れやかだった。
私はうんうんと頷きつつ、
「わかります。いつでも丸裸にできるんですよ、この人。そりゃもう、私の心も体も丸裸に……なんていやらしい」
「勝手に変な想像してゴミを見るような目で睨んでくるのやめてくれません!? しかも一部ガセネタが入ってる!」
確かにデリカシーのない能力だとは自分でも思いますが! と頭を抱えつつ反論するオーナー。
しかし、私はもう半分大人な年齢なのだ。
ここは海よりも広い心で受け入れてあげよう。え? 心は広いのに胸は小さいのはなんでかって?
やかましいです胸のデカさと心のデカさは反比例するんです間違いありません。
ともかく、ひとしきり騒いだあと私は、悟くんの席に朝食のプレートを置いた。
「あの、俺朝ご飯を食べてる暇は……」
運ばれてきた朝食にゴクリと喉をならしつつ、しかし悟くんはチラチラと時間を気にしている。
おそらく、今日の朝早くにゆい姉がこの町を離れるのだろう。
それに間に合わないかもしれないと、そう思っているのだ。
しかし――
「ダメですよ。ちゃんと朝ご飯は食べること」
私は、そわそわしている悟くんに、しっかりと言い聞かせる。
「大切なこと、伝えるんでしょう? だったら、ちゃんとエネルギー補充して、心の底から思いの丈をぶつけないと」
悟くんは少しの間逡巡して、やがて「うん」と頷くと、スプーンを手に取った。
――。
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
綺麗に朝食を平らげた悟くんに微笑みかけ、私はお皿を下げる。
「いつも助かってますよ、コック長。ただ……もう少し、質素というか素朴なメニューにしてもいいんですからね? 具体的に言うと僕のお財布がピンチというか――」
冷や汗をかきながら私に耳打ちしてくるオーナーに、私は一言。
「わかってますよ。だから家庭菜園で育ててる野菜とか、ご近所さんからのお裾分けでできるだけコストを抑えてるんです。大丈夫ですよ」
「やだこの子有能……! ていうか、いつの間にご近所とそんな繋がりを?」
「ほら、このあたりって海とか山ばっかで高齢化と過疎化が進んでるじゃないですか?」
「み、身も蓋もない……」
「で、そんな中で私はぴっちぴちのJKなわけですよ」
もちろん、JKになっていてもおかしくない年齢というだけで、実際にJKというわけではない。
だって、学校通ってないし。
「つまりですね。ご近所のおじいちゃんおばあちゃんが、めっちゃ甘やかしてくるんですよ。つまり私は、この地域のアイドルなわけで、野菜とか卵とか、そのあたりは私への貢ぎ物なわけですね」
「い、一番調子にのらせちゃマズいタイプの人を調子に乗らせてる……」
なぜかげっそりとしているオーナーを放っておき、私は悟くんに向き直る。
「さ、それでは準備して行きましょうか。愛しのお姉様の元へ」
ただ、ウチの宿に来る人の大半は都合良く着替えなど持っていないのがわかりきっているから、基本はお客様が寝ている間に洗濯をしておくのだ。
もちろん、ウチのサービスで。
また一歩、破産に近づいたね☆
「ご気分はいかがですか?」
「悪くない……かな。勝手に心を除かれたのは、その……少し恥ずかしいけど」
私の問いに対して、悟くんは頬を掻きつつ答える。
若干不服そうに眉根をよせてこそいるが、その表情は憑き物が落ちたように晴れやかだった。
私はうんうんと頷きつつ、
「わかります。いつでも丸裸にできるんですよ、この人。そりゃもう、私の心も体も丸裸に……なんていやらしい」
「勝手に変な想像してゴミを見るような目で睨んでくるのやめてくれません!? しかも一部ガセネタが入ってる!」
確かにデリカシーのない能力だとは自分でも思いますが! と頭を抱えつつ反論するオーナー。
しかし、私はもう半分大人な年齢なのだ。
ここは海よりも広い心で受け入れてあげよう。え? 心は広いのに胸は小さいのはなんでかって?
やかましいです胸のデカさと心のデカさは反比例するんです間違いありません。
ともかく、ひとしきり騒いだあと私は、悟くんの席に朝食のプレートを置いた。
「あの、俺朝ご飯を食べてる暇は……」
運ばれてきた朝食にゴクリと喉をならしつつ、しかし悟くんはチラチラと時間を気にしている。
おそらく、今日の朝早くにゆい姉がこの町を離れるのだろう。
それに間に合わないかもしれないと、そう思っているのだ。
しかし――
「ダメですよ。ちゃんと朝ご飯は食べること」
私は、そわそわしている悟くんに、しっかりと言い聞かせる。
「大切なこと、伝えるんでしょう? だったら、ちゃんとエネルギー補充して、心の底から思いの丈をぶつけないと」
悟くんは少しの間逡巡して、やがて「うん」と頷くと、スプーンを手に取った。
――。
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
綺麗に朝食を平らげた悟くんに微笑みかけ、私はお皿を下げる。
「いつも助かってますよ、コック長。ただ……もう少し、質素というか素朴なメニューにしてもいいんですからね? 具体的に言うと僕のお財布がピンチというか――」
冷や汗をかきながら私に耳打ちしてくるオーナーに、私は一言。
「わかってますよ。だから家庭菜園で育ててる野菜とか、ご近所さんからのお裾分けでできるだけコストを抑えてるんです。大丈夫ですよ」
「やだこの子有能……! ていうか、いつの間にご近所とそんな繋がりを?」
「ほら、このあたりって海とか山ばっかで高齢化と過疎化が進んでるじゃないですか?」
「み、身も蓋もない……」
「で、そんな中で私はぴっちぴちのJKなわけですよ」
もちろん、JKになっていてもおかしくない年齢というだけで、実際にJKというわけではない。
だって、学校通ってないし。
「つまりですね。ご近所のおじいちゃんおばあちゃんが、めっちゃ甘やかしてくるんですよ。つまり私は、この地域のアイドルなわけで、野菜とか卵とか、そのあたりは私への貢ぎ物なわけですね」
「い、一番調子にのらせちゃマズいタイプの人を調子に乗らせてる……」
なぜかげっそりとしているオーナーを放っておき、私は悟くんに向き直る。
「さ、それでは準備して行きましょうか。愛しのお姉様の元へ」
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