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1泊目 優しい嘘はお嫌いですか?
第14話 コクハク
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「さっ、くん……」
「俺が頼りないのはわかってるよ。ずっとゆい姉に守って貰ってばっかだったもん。カッコいいとこなんて一つも見せられなくて、情けないところばっかりで。だけど、ゆい姉が頼ってくれれば、俺はどんなことだってできる。だから、1人で辛いときは、そんな薄っぺらい嘘の好きな人じゃなくて、頼りない弟に預けて欲しいんだ」
言いたいことを言いきった俺と、ゆい姉の間にしばし無言の時が流れる。
周りの木々がざわざわと風に揺れる音が響き――不意に、それを割くように無機質なアナウンスが駅に流れる。
もうすぐ、ゆい姉の乗る列車がホームに滑り込んでくるのだ。
「……どうして?」
不意に、ゆい姉が呟いた。
「私は、さっくんを考えなしに傷つけて、謝らずに帰ろうとしていたのに。なんで、私をそこまで支えようとしてくれるの?」
「そりゃ、今まで助けてくれた分の恩返しとか、幼馴染みだからとか、理由っぽいのをあげればいくらでもあるけど……」
俺は改めてゆい姉を見据え、ずっと心に決めていた言葉を継げる。
ここを逃せば、もう二度と、ゆい姉の背中には追いつけない気がするから。
「ゆい姉が、好きだから」
ざわりと、周りの木々が騒ぐ。
そんな中でも、俺は自分の鼓動の音だけを強く感じていた。
「……え」
掠れた声が、ゆい姉の薄い唇からこぼれ落ちる。
それは、本当の本当に、そんな言葉がくるとは欠片も予想していなかったという表情で。
やっぱり、男の子としては見られていなかったんだなと、落胆する。でも同時に、チャンスだとも思っていた。
「あの、それってどういう――」
「言った通りだよ。俺はゆい姉――あなたのことが、ずっと前から好きでした」
近所のお姉ちゃんとしての好きってことだよね? なんて言わせない。
これだけ長い付き合いなんだ。俺の好きがどういう類いのものなのか、ここまで言ってゆい姉にわからないはずもないだろう。
「突然こんなこと言って、困らせてごめん。ゆい姉にとってはただの弟みたいな感じかもしれないけど……俺は、勝手に好きになっちゃった」
それが、俺がゆい姉を無制限に支えたいと思う根拠だ。
しばらく、ゆい姉は口を開けたり閉じたりを繰り返していた。
また困らせちゃったなと反省する半面、嬉しくもあった。いつも大人びていて、俺の一歩前を進んでいるゆい姉が、初めて俺を1人の男子として見てくれたから。
ぷおーんと、警笛の音が聞こえてくる。
見れば、カーブしているレールの先から、電車がやって来ていた。
「あの……えと」
しばらく逡巡するように視線を彷徨わせた後、ゆい姉はしどろもどろに言葉を紡ぐ。
「正直、今すごく驚いてるの。なんで私みたいな人を好きになったのって聞きたいし」
逆になんでゆい姉を好きにならないでいられるの?
「私、こんなに幸せでいいの? って思ってるし」
それはゆい姉がたくさん幸せをくれたからだよ。
「私……さっくんを、頼っていいの?」
いろんな感情を吐き出したあとに、ゆい姉は潤んだ瞳で俺を見据える。
俺は一秒も迷うこと無く頷いた。
「もちろん」
刹那、ホームに列車が滑り込んでくる。
強い風圧でゆい姉の長い髪が流れる。車輪が線路を叩き、ブレーキが軋む音が響く中。
靡く髪に手を当てて押さえるゆい姉の唇が動く。
その声は、列車から響く鋭い音に紛れて、俺の耳に確かに届いた。
「俺が頼りないのはわかってるよ。ずっとゆい姉に守って貰ってばっかだったもん。カッコいいとこなんて一つも見せられなくて、情けないところばっかりで。だけど、ゆい姉が頼ってくれれば、俺はどんなことだってできる。だから、1人で辛いときは、そんな薄っぺらい嘘の好きな人じゃなくて、頼りない弟に預けて欲しいんだ」
言いたいことを言いきった俺と、ゆい姉の間にしばし無言の時が流れる。
周りの木々がざわざわと風に揺れる音が響き――不意に、それを割くように無機質なアナウンスが駅に流れる。
もうすぐ、ゆい姉の乗る列車がホームに滑り込んでくるのだ。
「……どうして?」
不意に、ゆい姉が呟いた。
「私は、さっくんを考えなしに傷つけて、謝らずに帰ろうとしていたのに。なんで、私をそこまで支えようとしてくれるの?」
「そりゃ、今まで助けてくれた分の恩返しとか、幼馴染みだからとか、理由っぽいのをあげればいくらでもあるけど……」
俺は改めてゆい姉を見据え、ずっと心に決めていた言葉を継げる。
ここを逃せば、もう二度と、ゆい姉の背中には追いつけない気がするから。
「ゆい姉が、好きだから」
ざわりと、周りの木々が騒ぐ。
そんな中でも、俺は自分の鼓動の音だけを強く感じていた。
「……え」
掠れた声が、ゆい姉の薄い唇からこぼれ落ちる。
それは、本当の本当に、そんな言葉がくるとは欠片も予想していなかったという表情で。
やっぱり、男の子としては見られていなかったんだなと、落胆する。でも同時に、チャンスだとも思っていた。
「あの、それってどういう――」
「言った通りだよ。俺はゆい姉――あなたのことが、ずっと前から好きでした」
近所のお姉ちゃんとしての好きってことだよね? なんて言わせない。
これだけ長い付き合いなんだ。俺の好きがどういう類いのものなのか、ここまで言ってゆい姉にわからないはずもないだろう。
「突然こんなこと言って、困らせてごめん。ゆい姉にとってはただの弟みたいな感じかもしれないけど……俺は、勝手に好きになっちゃった」
それが、俺がゆい姉を無制限に支えたいと思う根拠だ。
しばらく、ゆい姉は口を開けたり閉じたりを繰り返していた。
また困らせちゃったなと反省する半面、嬉しくもあった。いつも大人びていて、俺の一歩前を進んでいるゆい姉が、初めて俺を1人の男子として見てくれたから。
ぷおーんと、警笛の音が聞こえてくる。
見れば、カーブしているレールの先から、電車がやって来ていた。
「あの……えと」
しばらく逡巡するように視線を彷徨わせた後、ゆい姉はしどろもどろに言葉を紡ぐ。
「正直、今すごく驚いてるの。なんで私みたいな人を好きになったのって聞きたいし」
逆になんでゆい姉を好きにならないでいられるの?
「私、こんなに幸せでいいの? って思ってるし」
それはゆい姉がたくさん幸せをくれたからだよ。
「私……さっくんを、頼っていいの?」
いろんな感情を吐き出したあとに、ゆい姉は潤んだ瞳で俺を見据える。
俺は一秒も迷うこと無く頷いた。
「もちろん」
刹那、ホームに列車が滑り込んでくる。
強い風圧でゆい姉の長い髪が流れる。車輪が線路を叩き、ブレーキが軋む音が響く中。
靡く髪に手を当てて押さえるゆい姉の唇が動く。
その声は、列車から響く鋭い音に紛れて、俺の耳に確かに届いた。
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