わけあって美少女達の恋を手伝うことになった隠キャボッチの僕、知らぬ間にヒロイン全員オトしてた件

果 一

文字の大きさ
9 / 36
第一章 陰キャな僕とクラス1の美少女にもフラグは立つらしい

第9話 変わる日常~陽キャ達の視線が痛いです~

しおりを挟む
《境楓サイド》

 翌日の金曜日。
 登校した僕は、いつも通り誰とも会話すること無く、自分の席についた。
 ボッチというのはいい。仲がいい人がいないから、一々挨拶をする手間が省ける。

 それに、僕レベルの隠密スキルを使いこなす者ならば、誰にも気付かれずに自分の席について最短最速で読書にいそしめる。
 窓辺で友人と話していた飯島が、チラッとこちらを見た気がするが、うんたぶん気のせいだ。昨日のあの件があるから、ほとぼりが冷めるまではアイツとは関わらないようにしよう。
 なーに。人の噂も75日。二ヶ月半もあれば、きっとマイナスからゼロの関係値に戻って――うん、結構長くね?

 そんなことを思いながら、読みかけのラノベを開いたそのときだった。

 ガラガラと教室の扉が開いて、「おはよう」という明るくも涼やかな声が教室内に響き渡る。
 朝から気持ちのいい挨拶をするのは、朝比奈梨子。このクラスのアイドルだ。

「おはようりこちー」
「りこちーおはよう!」
「おっす!」
「おはー」
「朝比奈さんおはよう!」

 三枝蜜柑や畦上綾乃といった朝比奈カーストの面々だけでなく、他の陽キャ達が次々と挨拶を返す。
 そのまま、梨子は僕の横を通り過ぎ、朝比奈カーストの元へ向かおうとして――

「おはよ、楓くん」
「ッ!」

 あろうことか通り過ぎず、僕に声をかけてきた。
 え? は? 昨日の今日でなんかすごく距離が近づいてるんですけど!?

「お、おはよう……朝比奈、さん」

 僕は、ラノベから視線を上げて、しどろもどろに挨拶をした。
 思えば、僕は長いこと朝の挨拶というものを家族以外としていない。まして、女子となれば、四年前、祖母の親戚の亜実《あみ》ちゃんにしたくらいで――

「…………」
「あ、あの。朝比奈さん? どうしたの?」

 僕は、若干不機嫌そうにじっと睨んでくる梨子に問いかける。

「もう。朝比奈じゃなくて、下の名前で呼んでって、昨日言ったよね」

 あ、それで怒っていたのか。
 確かにそうだが、いきなり公衆の面前で下の名前呼びって、陰キャにとってはガードルが高すぎると思うのだが。

「それとも、下の名前で呼ぶの嫌……とか?」
「いや、そんなことないから! おはよう梨子さん!」

 不安そうにしてくる梨子に、慌てて下の名前で挨拶をすると、梨子は満足そうに「よろしい」とはにかんだ。

 ――と、そんなやり取りを見ていたクラスメイト達(主に男子)が、にわかにざわめく。

「お、おいどうなってんだよアレ?」
「朝比奈さんと知らんヤツが仲よさそうに喋ってんだけど」
「はぁ? 誰だよアイツ。いきなり下の名前呼びとか調子乗りすぎだろ」
「クッソ! あんなレベル1の陰キャ野郎で仲良くなれるなら、俺なんてもうヤることヤってるはずだ! なぜ朝比奈さんにいつも苦笑いされておわるんだ!」
「いや、息を吸うように下ネタ言うからだろ」
「てかマジ誰だよアイツ。どこのクラス?」

 おい。聞こえてるよこのヤロウ。
 印象の薄いヤツで悪かったな。僕は君らと同じクラスだよ。

 そんな風に思っていると、不意に敵意に似た視線を感じた。
 思わずそちらを向くと、窓辺にいた飯島が俺から視線を外し――何事もなかったように友人と話し始める。

 なるほど。
 俺の平穏な学校生活は、これから荒れそうだ。

――。

 昼休み。
 中学までと違うことと言えば、ずばり給食がなくなったことだ。
 弁当を持ってきている者、購買でパンを買う者、学食を利用する者。
 皆一様に、友人との食事の時間を思い思いの場所で楽しんでいる。

 そして、ボッチの僕がご飯を食べる場所と言えば――

「やはり、1人の空間は落ち着く」

 僕は、例の如く管理棟の手芸部部室に来て、1人で昼食を食べていた。
 別に教室で1人飯でもいいのだが、なんだか今日はやたらみんなからの視線を感じる。朝から陰キャがクラスカーストトップの美少女と話していたのだから、まあ注目くらい浴びるだろう。
 そんなわけで、僕はこの静かな聖域に避難してきたのだ。

「いただきます」

 弁当箱の蓋を開けて、いざ実食――
 ガチャリ。
 マヌケな音を立てて、扉が開いた。

「……え」

 入ってきた人物を見た僕は、中途半端に箸を取り出したままの格好で固まってしまった。

「やっぱりここにいたんだ。探したんだよ?」

 ――ラブコメの神様、これはいったいどういうことでしょう。
 朝比奈梨子が、お弁当の入った可愛らしい包みを後ろ手に持って、笑いかけてきたんですが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

処理中です...