わけあって美少女達の恋を手伝うことになった隠キャボッチの僕、知らぬ間にヒロイン全員オトしてた件

果 一

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第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる

第19話 ヤンキーJKに絡まれました

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 無言で見つめ合ったまま、しばらく時間が流れる。
 ――これは、あれだ。気まずいって現象だな。
 ようやく我に返ったらしい南嶋先輩の顔が、みるみる赤くなってゆく。

 ここは何も見なかったフリをして帰ることに――

「ちょ、ちょいちょいちょい!!」

 慌てたような声と共に、南嶋先輩が僕の方に来る。
 ま、マズい! 反射的に足を速める僕。

「ちょコラ! なに逃げようとしてんだテメェ!!」

 慌てて僕に追いすがり、ガッと肩を掴まれた。
 マズい、捕まった!

「いや、逃げてないです」
「いやいや、どう見ても逃げてただろ! ……そ、そんなことより! そ、その、見てた、よな?」

 バツが悪そうに語尾を落としながら、そう聞いてくる南嶋先輩。
 僕は、ふいっと目を逸らしつつ。

「……見て、ないです」
「おい嘘つけその目はなんだ」

 速攻でバレた。

「おい、お前。ネクタイの色的に1年だよな? しかも、休み時間に管理棟で会った……」
「そうですけど、それがなにか?」

 マズい。なんだかわからないけど、マズい流れになる気がする。
 そんな僕の予感は、どうやら当たったらしい。

「ちょっとツラ貸せや」
「……はい」

 僕は、ヤンキーに捕まった。

――。

 ツラを貸せ。
 そう言われたから、てっきり裏取引でもするみたいに校舎裏にでも連れて行かれるかと思ったのだが――

「で、ここはどこだ?」
「手芸部の部室です……まあ、正確には愛好会ですけど」

 僕等は、なぜか手芸部部室の扉の前にいた。
 なぜか、主導権は僕の方にあったのだ。落ち着いて話せる場所と言ったら、僕はここしか知らない。

 というわけで、僕は手芸部の部室のドアノブに手を掛け、ドアを開ける――

「あ。やっと来た。楓くん日直お疲れ様」

 と、なぜか先客がいた。
 部室の棚に並べられた過去の部員の作品をしみじみと眺めていた梨子が、僕の方を見て笑顔を見せてくる。
 ていうか、棚の上には僕の作った作品もあるから恥ずかしいんだけど……って、そんなことではなく!

「梨子さん? どうしてここに……」
「ん? 私も手芸部入ることにした」

 なにか、サラッととんでもないことを言った。
 
「手芸部入ったって……もうテニス部に入ってるんじゃ」
「ん? 兼部だって。ウチのテニス部弱小だし、顧問のやる気もないから、週3しか練習ないの」

 なるほど、なら確かに兼部も可能か。
 
「でも、なんでわざわざ手芸部に?」

 そう聞くと、梨子は少し寂しそうに、「私が入ったら嫌?」と聞いてきた。
 
「いや、そんなことないです」

 ただ、男女2人の部活っていうラブコメ展開に、僕の心臓が耐えられるだろうか? そこが不安である。

「じゃあ、これからよろしくね、楓部長」
「っ!」

 にこっと笑いかけてくる梨子に、ついドキッとしてしまう。
 ああ、これは心臓持たないな。「ん? 愛好会だから愛好長?」などと呟いている梨子を見つつ、僕はそう思った。
 ――と。

「おい、ウチの存在忘れてねぇか?」

 不意に後ろから不機嫌そうな声をかけられて、思わず飛び退く。
 そうだ。あまりの衝撃で、南嶋先輩のこと忘れていた。
 ――と、不意に部屋の空気が冷たくなったように感じる。
 見れば梨子が、瞬き一つせず南嶋先輩の方を見つめていた。

「り、梨子さん?」
「……楓くんが、女の子を連れ込んできた」
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