裏切られてダンジョンの最下層に落とされた僕。偶然見つけたスキル、《スキル交換》でSクラスモンスターの最強スキルを大量ゲット!? 

果 一

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第二章 《最凶の天空迷宮編》

第三十九話 僕がダンジョン攻略を始めたワケ

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――しばらくして、町外れの村にやってきた。



 石造りの綺麗な建物が建ち並ぶ街の中心部に対し、この村の家屋はどれも木造だ。

 道も石で舗装されているわけではなく、馬車や人が通った道のりが、そのまま道として利用されている。



 人口は500人ほど。

 村の近くに二本の川が流れているため、それを利用した畑作を主軸に村の経済が回っている。

 

「なんか、すごく廃れ……趣のある所だね」

「何気に今酷いこと言いかけたよね?」

「き、気のせいじゃない?」



 口笛を吹いて誤魔化すクレアに呆れ、小さくため息をつく。



「そ、それより、どうしてここに来たの?」



 あからさまに話題を変えてきたクレアに「ああ、それは――」と答える。

 が、僕が言うよりも早くエナが答えた。



「ふふ。それはね、ここがエランくんの故郷だからだよ?」

「へぇ! そうなんだ! 急に素敵な場所に見えてきた!」

(今まで寂れた場所にしか見えなかったって、遠回しに認めちゃったよこの子)



 まるで宝物でも見つけたかのように、キラキラした目で古びた家屋や水車を凝視するクレアを流し見て、もう一度深くため息をつくのだった。

 

 僕が故郷の村――カラール村に帰ってきた理由は二つ。

 一つは、家に戻って疲れた身体を休めるため。

 そしてもう一つは――



「おお、エランだ!」



 そのとき、畑を耕していた若い男がこちらに気付いて声を上げた。

 それを皮切りに、周りにいた人々へ次々に伝播していく。



「おぉ、久しぶりじゃのう」

「おーい! みんな、エランさんが帰ってきたぞぉ!」

「まことか!」



 僕に気付いた人達がわらわらと近寄ってきて、たちまちさっきと同じような状況に陥ってしまった。



「エラン殿、無事じゃったか」

「はい村長。まあ、なんとか今回も」



 感極まったように目を細める村長の名はアルタ。御年80を迎える女性の長老だ。

 しかし、顔にきざまれた深い皺や白く色づいたちぢれ髪のわりに足腰はしっかりしている。



 そんな村長に、微笑み返す。

 それから金貨の入った革袋を一つ残してあとは全て村長に手渡した。



「いつも通り、攻略者ギルドで交換してきた報酬です。今回は、今までとは比べものにならない量ですよ」

「な、なんと……! これだけの金貨を、どうやって……?」



 あまりの衝撃だったのか、腰を抜かしてしまう村長。

 周りに立っている村人達も、「信じられない」と言わんばかりにあんぐりと口を開けている。



 この村に来たもう一つの理由。それは、村の生活を豊かにするための資金稼ぎ。

 幼くして病気で両親を失った僕は、以来村長の家で育てられ、今は小さな家を一つ借りて一人で住んでいる。



 村長に育てて貰った恩返しと、村の経済を豊かにしたいという願いから、(成功すれば)お金が大量に手に入るダンジョン冒険者をやっているのだ。

 あんないけ好かないリーダーの元でこき使われ――いや、働いていたのは、そのためである。



 尻餅をついていた老婆は僕の方をじっと見つめていたが、ふと何かに気付いたように笑った。



「……そうか。おぬし、遂に成功者の側になったのじゃな」

「はい」



 こくりと頷いて、できる限りの笑顔を見せる。

 胸元に付いている《攻略者の証》が、太陽の光を受けて燦然と輝いた。



△▼△▼△▼



 一通り村長や村の人々と話した後、解散の運びとなった。



「それではな、エランどの。疲れただろうから、家でゆっくり休むといい」

「はい。そうさせていただきます」



 村長に礼を言い、踵を返す。

 ――が。



「ああ、そうだ。もう一つ言いたいことがあったんじゃった」

「なんです?」



 呼び止められ、振り向いた僕の瞳に、年甲斐もなくニヤついている村長の顔が映った。



「遊びたい年頃なのはわかるがの……契りを結ぶのは、ちゃんとどちらかに絞るんじゃぞ?」

「……え?」



 一瞬何のことかわからず、首を傾げるが、両隣に美少女がいる事実に気付き、村長の言わんとしていることを悟った。



「んなっ!? こ、この二人とは別にそういう関係じゃなくて――ッ!」

「そうかそうか。ああ、誤魔化さずともよーくわかっておる。これが若者の言う、はーれむというヤツなんじゃろ?」

「ぜ、全然わかってない!」



 完全に誤解された。

 まあ、状況だけ見ればハーレムというのも間違っていないのだが……年配の女性に言われると、もの凄く罪悪感が湧いてくるのだ。



 しかも、村長はドロドロした関係のハーレムと思っていそうだから、たちが悪いのである。

 そして――こんな絶好の機会を、KYアタッカーのクレアが見逃すはずもない。



(マズイ! 絶対「エランくんとはもう熱い夜を過ごしたよ!」とかわけわかんない捏造をされる!)



 戦々恐々として、脂汗を滝のように流す。

 が、どういうわけかいつまで経ってもクレアが爆弾発言を放ってこない。

 不思議に思い彼女の方を見ると、俯いて唇を噛みしめていた。



「どうしたのクレア。なんか、顔色悪いけど……大丈夫?」

「……え? う、うん」



 僕の方を向いたクレアは、笑顔を作ってみせる。



「そう。ならいいけど」



 気のせいだろうか。やはり、少し顔色が優れないように見えた。

 まあ、本人が大丈夫と言うのだからこれ以上首を突っ込む気はないけど、「大丈夫」というのは大丈夫じゃないときに使う常套句だ。



 心配じゃないはずもなかった。

 そんな不安が胸に引っかかったまま、僕達は家に向かうのだった。

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