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第二章 《最凶の天空迷宮編》

第五十六話 スキルの神髄――派生技

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 この状況は、かなり分が悪いと言っていいだろう。

 例えるなら、広大な砂丘に一粒だけ紛れている砂金を見つけ出すような作業だ。



 それも、エナの体力が尽きる前に見つけねばならない。

 時間は限られている。



「やるしかないのか……強行突破を!」



 この後にも、まだ強大な敵が控えているかもしれないから、スキル反動臨界症やMPが0になるリスクは避けたい。

 が、ここは最凶のダンジョン。



 少しでも手を抜けば、命を狩られるのは必至。



(使用するスキルは、MPが減る心配のない通常スキル《衝撃拳フル・インパクト》を選択……って、なんか毎回これ使ってる気がするな)



 最初に手に入れた攻撃系スキルだからか、一番手に馴染む。

 攻撃には向かない通常スキルの中で、頭一つ抜けた破壊力と扱いやすさを持つ、不思議なスキルだ。

 

 思えば、レベルが一桁の状態でSクラスのモンスターさえも粉砕できた。このスキルは、もしかしたら、単純なSTR(攻撃力)に比例した威力を出すだけではなく、何か特別な力を秘めているのかもしれないとすら思えてくる。



(《衝撃拳フル・インパクト》は、その扱いやすさゆえに、今までで一番多く派生技を生み出してきた。地面を叩き割る大地崩壊ガイア・ブレイク手刀しゅとうの衝撃波で斬撃を放つ手刀裂スプリット、スキルの重ね掛けで自壊するほどの超威力攻撃を放つ龍殺しドラゴン・キラー……。普通に扱えば、ただ高威力の一撃必殺を放つだけだけど、用途・目的に合った使い方をすれば、最大限の力を発揮できる。《衝撃拳フル・インパクト》に限らず、スキルっていうのはそういうものだ)



 なればこそ、今この場で最も有効な派生技を考えるのだ。



(拳に頼った一撃必殺では広範囲を削れない……であれば、一度に衝撃の波動をたくさん叩き込めばいいんだ!!)



 指を爪のように立て、《衝撃拳フル・インパクト》のエネルギーを五指に集中する。



「《衝撃拳フル・インパクト》―重炸裂フル・クラスターッ!」



 眼下の歪な海めがけて、腕を振るう。

 五条の光のラインがうねりを上げて水面へ迫り――衝突。

 五つの衝撃の波が広範囲に大穴を開けた。



 重炸裂フル・クラスター

 本来であれば腕に起動して指向性を持った一撃を抜き放つ必殺拳だが、五指で衝撃波を放つことで、一発当たりの威力は落ちるものの広範囲を吹き飛ばすことができる。



「まだまだぁ!!」



 もう片方の手にも《衝撃拳フル・インパクト》を起動し、重炸裂フル・クラスターを放ち続ける。



 スキル反動臨界症になる危険性を頭から外し、ひたすら水面めがけて衝撃波を放ち続ける。

 大量の穴が水面を埋め尽くし、蜂の巣のような独特の模様を生み出していく。



(くっ! どこだ……不死鳥を造っている本体は!!)



「うぉおおおおおおおおおおおおおッ!!」



 雄叫びを上げ、額から流れる汗を拭う間もなく、僕は重炸裂フル・クラスターを放ち続ける。

 この広大な海の中に、本体ソイツがいると信じて――

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