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第8話 真打ち登場
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《レント視点》
「はぁ……グラウンドが騒がしいから何かと思って慌てて来てみれば、だな。お前等、勘の良いレント先生に感謝しろよ?」
「……「どうしせ大したことは起きてない」とか言ってそのまま昼寝しようとしていたのはどこの誰だったかしら」
俺の後ろに控えるアイラが、ジト目で俺を睨んでくる。
ちょっと何が言いたいのか、わかりませんね。
「はっ。誰かと思えば、噂の新人講師(笑)じゃねぇか」
ザーグが俺を見て、鼻で笑う。
後ろに控えるクラスメイト達も、俺を見て嘲笑を浮かべている。
俺はソイツ等を無視して、フィオネの方に近寄って行った。
他の連中も、地面に転がって呻いてはいるが、見た感じ命に関わるケガはない。
おそらく、最初に聞こえた音――爆発魔法の煽りを受けてケガを負った感じだろう。この場で一番ケガが酷いのは、フィオネだ。
「せ、先生~……ふぃ、フィオネちゃんが。フィオネちゃんがぁ……!」
大人しそうな顔の少女――たしか、サラと言ったか? が、目に涙を溜めて俺を見上げる。
「わかってる」
俺は膝を突いて、倒れているフィオネへ顔を近づけた。
「せ、先生……」
「来るのが遅くなって、悪かったな」
「へっ、こりゃいいや。何もできない無能が、無能を見て無様な顔してらぁ。ぎゃはははははは!」
ザーグが、俺達を見て笑い声を上げる。
その後ろの連中も。怪我をして涙まで浮かべている少女を無能呼ばわりして、笑っている。
それで、なんとなくこのFクラスの待遇を察した。
「なるほどな……いろいろ察してやれなくて、悪かったな」
「べ、別に今更謝る必要なんてありませんわ」
フィオネは、ふいっとそっぽを向く。心なしか、頬が赤くなっている気がした。
「アイツには、教師としてしっかりお灸を据えておく」
「だ、だめですわ……忌々しいですが、アイツは強い。収納魔法しか使えない先生では、とても勝ち目なんて……!」
悲痛な声を上げるフィオネ。
「ぎゃははは! ソイツの言う通りだぜ、無能な先生サマよぉ! あんた程度じゃ格好付けても恥を掻くだけだ。このDクラス一の天才、ザーグ=ファルスル様の魔法によって打ちのめされるだけなんだよぉ!」
はぁ……なるほど。
Dクラスねぇ。納得した。禿げちゃびん先輩の教え子達か。アイツに似て、随分と人として終わってる連中だ。
「まあ、お前を嬲るついでに、その辺に転がってる無能共もまとめて魔法で焼いてやるよ! ゴミは焼却処分、てな!」
高笑いするザーグ。
つくづく腹の立つヤツだが、正直滑稽と言わざるを得ない。
俺はサラとフィオネを庇うように前へ一歩踏み出して、ザーグに応じた。
「ふ~ん、で。その辺に転がってる無能共、って誰のことだ? 俺には見えないんだがな」
「はっ、決まってんだろ。テメェの可愛い教え子のことだよ。俺がさっき爆発魔法使って吹き飛ばした連中が、その辺にたくさん転がってんだろ?」
「そうか、そんなヤツら……どこにも見当たらないんだがな?」
「は……」
俺の言葉に訝しむように眉根をよせたザーグは、しかし次の瞬間目を見開いた。
「なっ!? い、いない……さっきまであちこちに転がってたのに……なっ!?」
慌てていたザーグは、更に驚愕の瞳を俺の真後ろに向けた。
不思議に思ったのか、サラとフィオネも後ろを向いて――同時に、硬直してしまった。
「な、なんでだ……ほんのさっきまで、その辺に転がってた連中が、なんで一瞬でテメェの背後に移動していやがる!?」
「わからないならそれでいい。さて、それより……覚悟はできてるよな?」
「っ!」
声のトーンを僅かに落とした俺に、ザーグは微かに動揺を見せる。
「俺の生徒を傷つけた落とし前、払って貰うぞ。もちろん手加減はしてやる。俺は教師だからな……だから、半殺しくらいで簡便してやるよ」
「はっ……はは。テメェごときに何ができるってんだよ」
俺から漏れ出る怒気と殺気に怯んだザーグは、それでも自分が圧倒的な優位に立っていることを疑わない。
「ああ、ちなみに反撃くらいならしてもいいぞ? もっとも、喰らってやるつもりはないが」
「な、舐めやがって! たかが収納魔法しか使えないザコの分際で!」
激高したザーグが、一歩飛び下がって右手を折れに向けた。
「死ね! 《ファイア・トルネード》!」
轟ッ!
灼熱の炎が、ザーグの掌より生じ、真っ直ぐに迫ってくる。
対して、俺は瞬きの一つもせず、一言呟いた。
「――収納」
「はぁ……グラウンドが騒がしいから何かと思って慌てて来てみれば、だな。お前等、勘の良いレント先生に感謝しろよ?」
「……「どうしせ大したことは起きてない」とか言ってそのまま昼寝しようとしていたのはどこの誰だったかしら」
俺の後ろに控えるアイラが、ジト目で俺を睨んでくる。
ちょっと何が言いたいのか、わかりませんね。
「はっ。誰かと思えば、噂の新人講師(笑)じゃねぇか」
ザーグが俺を見て、鼻で笑う。
後ろに控えるクラスメイト達も、俺を見て嘲笑を浮かべている。
俺はソイツ等を無視して、フィオネの方に近寄って行った。
他の連中も、地面に転がって呻いてはいるが、見た感じ命に関わるケガはない。
おそらく、最初に聞こえた音――爆発魔法の煽りを受けてケガを負った感じだろう。この場で一番ケガが酷いのは、フィオネだ。
「せ、先生~……ふぃ、フィオネちゃんが。フィオネちゃんがぁ……!」
大人しそうな顔の少女――たしか、サラと言ったか? が、目に涙を溜めて俺を見上げる。
「わかってる」
俺は膝を突いて、倒れているフィオネへ顔を近づけた。
「せ、先生……」
「来るのが遅くなって、悪かったな」
「へっ、こりゃいいや。何もできない無能が、無能を見て無様な顔してらぁ。ぎゃはははははは!」
ザーグが、俺達を見て笑い声を上げる。
その後ろの連中も。怪我をして涙まで浮かべている少女を無能呼ばわりして、笑っている。
それで、なんとなくこのFクラスの待遇を察した。
「なるほどな……いろいろ察してやれなくて、悪かったな」
「べ、別に今更謝る必要なんてありませんわ」
フィオネは、ふいっとそっぽを向く。心なしか、頬が赤くなっている気がした。
「アイツには、教師としてしっかりお灸を据えておく」
「だ、だめですわ……忌々しいですが、アイツは強い。収納魔法しか使えない先生では、とても勝ち目なんて……!」
悲痛な声を上げるフィオネ。
「ぎゃははは! ソイツの言う通りだぜ、無能な先生サマよぉ! あんた程度じゃ格好付けても恥を掻くだけだ。このDクラス一の天才、ザーグ=ファルスル様の魔法によって打ちのめされるだけなんだよぉ!」
はぁ……なるほど。
Dクラスねぇ。納得した。禿げちゃびん先輩の教え子達か。アイツに似て、随分と人として終わってる連中だ。
「まあ、お前を嬲るついでに、その辺に転がってる無能共もまとめて魔法で焼いてやるよ! ゴミは焼却処分、てな!」
高笑いするザーグ。
つくづく腹の立つヤツだが、正直滑稽と言わざるを得ない。
俺はサラとフィオネを庇うように前へ一歩踏み出して、ザーグに応じた。
「ふ~ん、で。その辺に転がってる無能共、って誰のことだ? 俺には見えないんだがな」
「はっ、決まってんだろ。テメェの可愛い教え子のことだよ。俺がさっき爆発魔法使って吹き飛ばした連中が、その辺にたくさん転がってんだろ?」
「そうか、そんなヤツら……どこにも見当たらないんだがな?」
「は……」
俺の言葉に訝しむように眉根をよせたザーグは、しかし次の瞬間目を見開いた。
「なっ!? い、いない……さっきまであちこちに転がってたのに……なっ!?」
慌てていたザーグは、更に驚愕の瞳を俺の真後ろに向けた。
不思議に思ったのか、サラとフィオネも後ろを向いて――同時に、硬直してしまった。
「な、なんでだ……ほんのさっきまで、その辺に転がってた連中が、なんで一瞬でテメェの背後に移動していやがる!?」
「わからないならそれでいい。さて、それより……覚悟はできてるよな?」
「っ!」
声のトーンを僅かに落とした俺に、ザーグは微かに動揺を見せる。
「俺の生徒を傷つけた落とし前、払って貰うぞ。もちろん手加減はしてやる。俺は教師だからな……だから、半殺しくらいで簡便してやるよ」
「はっ……はは。テメェごときに何ができるってんだよ」
俺から漏れ出る怒気と殺気に怯んだザーグは、それでも自分が圧倒的な優位に立っていることを疑わない。
「ああ、ちなみに反撃くらいならしてもいいぞ? もっとも、喰らってやるつもりはないが」
「な、舐めやがって! たかが収納魔法しか使えないザコの分際で!」
激高したザーグが、一歩飛び下がって右手を折れに向けた。
「死ね! 《ファイア・トルネード》!」
轟ッ!
灼熱の炎が、ザーグの掌より生じ、真っ直ぐに迫ってくる。
対して、俺は瞬きの一つもせず、一言呟いた。
「――収納」
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