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オリヴァーの昔話
オリヴァーがグランになった日・6
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「……ん」
ロザリーが目を覚ました時、一番初めに目に飛び込んできたのは、見覚えのない天井であった。
それから、身体が重くて動かない。
寝返りを打ったとき、いつもの柔らかい布団の感触ではなく硬い布団の感触であったことで、はっきり目が覚めた。
「!」
(ここはどこ……?)
意識が混乱していると、聞き覚えのある声がロザリーを呼んだ。
「ははうえ!」
オリヴァーの声だ。
慌ててそちらへ向くと、可愛い息子はモコモコとした暖かい良い服に包まれ、ふっくらとしたように見える。
「オリヴァー……オリヴァー!」
息子の姿を見た時、ロザリーはようやく昨夜のことを思いだした。
不安そうに自分を見下ろすオリヴァーを抱きしめるため、ロザリーは気だるい身体を起き上がらせて、息子を強く抱きしめた。
「ははうぇ……」
自分の腕の中でつぶされるオリヴァーに、ロザリーは涙を零した。
「良かった……良かったオリヴァー! どこも痛くない? 苦しくない? 熱は下がった?」
無我夢中で息子に無事を確かめていると、今度は聞きなれない声と、扉を開く音が聞こえた。
「ははっ、そんなに矢継ぎ早に質問されては、オリヴァー様も困惑してしまいますよ。グランディア公爵夫人、ご気分はどうですか?」
扉を開いて入ってきたのは、昨夜自分たちを助けてくれたディザクライン侯爵であった。
アンドロは穏やかな笑みと穏やかな顔で語りかけ、昂っていたロザリーの心情を少しだけ和らげてくれた。
「ディザクライン侯爵! あ、ご迷惑をおかけしまして……」
ベッドから降りようとした時、目の前がぐらりと回転した。
そのまままたベッドの上に突っ伏してしまったロザリーに、アンドロが慌てた。
「あまりご無理をされませぬように。まだ熱が下がっていないのですから」
「……熱?」
「覚えておられませんか? 夫人は昨夜、馬車の中で高熱が原因で意識を失ってしまったのですよ」
「……えっと」
懸命に思い出そうとするが、その時のことが何故か思い出せない。
「申し訳ありません、ご迷惑をかけして……」
「もうしわけ、ございません……」
ロザリーがアンドロに頭を下げるのを、隣で見ていたオリヴァーが真似した。
そしてそれを見ていたマルクが、さらに真似をしてアンドロに頭を下げて謝るのを見て、ロザリーが慌てた。
なんでも真似してしまう幼い子たちは、ロザリーが謝る姿を見て真似をしてしまったのだろうと考えたら、恥ずかしくってしまい、手で顔を覆った。
「ははっ、子どもたちの前ではあまり迂闊なことが言えませんな。夫人、宿の者が食事を用意してくれました。持ってくるよう伝えておきますね」
「……食欲が、あまりなくて」
「無理のない範囲で良いですから、少し食べてください。体力回復にはやはり、食べるのが一番ですからね……それに」
アンドロが言い終わる前に、誰かのお腹がぐぅぅ~と大きな音を立てて鳴った。オリヴァーだった。
アンドロが苦笑しながら教えてくれた。
「オリヴァー様が、夫人が目を覚ますまでずっと食事を摂りたがらなかったのです。母親が目を覚まさないのに、自分だけが食べられない、と。ですから、オリヴァー様のお腹のためにも、召し上がっていただけませんか?」
そう伝えられ、母として恥ずかしい気持ちはあったが、切ない顔をしてロザリーを見上げるオリヴァーが愛おしく、「待っていてくれてありがとう」と声をかけ、一緒に食べることにした。
ロザリーが目を覚ました時、一番初めに目に飛び込んできたのは、見覚えのない天井であった。
それから、身体が重くて動かない。
寝返りを打ったとき、いつもの柔らかい布団の感触ではなく硬い布団の感触であったことで、はっきり目が覚めた。
「!」
(ここはどこ……?)
意識が混乱していると、聞き覚えのある声がロザリーを呼んだ。
「ははうえ!」
オリヴァーの声だ。
慌ててそちらへ向くと、可愛い息子はモコモコとした暖かい良い服に包まれ、ふっくらとしたように見える。
「オリヴァー……オリヴァー!」
息子の姿を見た時、ロザリーはようやく昨夜のことを思いだした。
不安そうに自分を見下ろすオリヴァーを抱きしめるため、ロザリーは気だるい身体を起き上がらせて、息子を強く抱きしめた。
「ははうぇ……」
自分の腕の中でつぶされるオリヴァーに、ロザリーは涙を零した。
「良かった……良かったオリヴァー! どこも痛くない? 苦しくない? 熱は下がった?」
無我夢中で息子に無事を確かめていると、今度は聞きなれない声と、扉を開く音が聞こえた。
「ははっ、そんなに矢継ぎ早に質問されては、オリヴァー様も困惑してしまいますよ。グランディア公爵夫人、ご気分はどうですか?」
扉を開いて入ってきたのは、昨夜自分たちを助けてくれたディザクライン侯爵であった。
アンドロは穏やかな笑みと穏やかな顔で語りかけ、昂っていたロザリーの心情を少しだけ和らげてくれた。
「ディザクライン侯爵! あ、ご迷惑をおかけしまして……」
ベッドから降りようとした時、目の前がぐらりと回転した。
そのまままたベッドの上に突っ伏してしまったロザリーに、アンドロが慌てた。
「あまりご無理をされませぬように。まだ熱が下がっていないのですから」
「……熱?」
「覚えておられませんか? 夫人は昨夜、馬車の中で高熱が原因で意識を失ってしまったのですよ」
「……えっと」
懸命に思い出そうとするが、その時のことが何故か思い出せない。
「申し訳ありません、ご迷惑をかけして……」
「もうしわけ、ございません……」
ロザリーがアンドロに頭を下げるのを、隣で見ていたオリヴァーが真似した。
そしてそれを見ていたマルクが、さらに真似をしてアンドロに頭を下げて謝るのを見て、ロザリーが慌てた。
なんでも真似してしまう幼い子たちは、ロザリーが謝る姿を見て真似をしてしまったのだろうと考えたら、恥ずかしくってしまい、手で顔を覆った。
「ははっ、子どもたちの前ではあまり迂闊なことが言えませんな。夫人、宿の者が食事を用意してくれました。持ってくるよう伝えておきますね」
「……食欲が、あまりなくて」
「無理のない範囲で良いですから、少し食べてください。体力回復にはやはり、食べるのが一番ですからね……それに」
アンドロが言い終わる前に、誰かのお腹がぐぅぅ~と大きな音を立てて鳴った。オリヴァーだった。
アンドロが苦笑しながら教えてくれた。
「オリヴァー様が、夫人が目を覚ますまでずっと食事を摂りたがらなかったのです。母親が目を覚まさないのに、自分だけが食べられない、と。ですから、オリヴァー様のお腹のためにも、召し上がっていただけませんか?」
そう伝えられ、母として恥ずかしい気持ちはあったが、切ない顔をしてロザリーを見上げるオリヴァーが愛おしく、「待っていてくれてありがとう」と声をかけ、一緒に食べることにした。
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