(休載中)下町のグランと公爵家のオリヴァー

rifa

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オリヴァーの昔話

幼少期の出会い・2

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「……でも、ミレーは忘れているようだが、ミレーだって小さい頃はこういう扱いを受けていたんだぜ?」
「なんでそう思うの?」
 そう問う口に、またリゾットが差し入れられる。
 黙って咀嚼していると、オリヴァーが静かに告げる。
「……実は、物心つく前のミレーとミレーのお母さんに一度会っているんだ」
 ぶーーーーッ!
 あまりに驚きすぎて、ミレーは咀嚼中のリゾットをすべて口から吹き出してしまった。
「何やってんだよ」
 呆れながら、オリヴァーはミレーの口元をナプキンで拭う。
 傍にいたカミラは、すぐミレーが吹きこぼしたリゾットの残骸を回収してテーブルを拭き綺麗な状態に戻した。
 幸いなことに、テーブルに置いてある他の料理に被害がなかったので、料理を無駄にすることはなかった。
 ゲホゲホとむせながら、「どういうこと?!」とオリヴァーを問い詰めるが、彼が「食事中にする話じゃなかったか」と斜め上を見上げながらそう言った。
「この話は食事が終わってからだ。もちろん、既定の食事を摂り終わるまでは話さねえからな?」
 にやりと口元をゆがめるオリヴァーのその口調は、グランのものだ。
 他の皆に聞こえないよう、ミレーの耳元で囁くだけならそういう言葉遣いでも良いと思っているのだろうか。
 そう不満がないわけだけではないが、彼から話を聞きだすために、そしてまたオリヴァーが話を煙に巻いて自分が追及するのを忘れないうちにと、ミレーは大きく口を開けた。
「……食べさせて!」
 先ほどより強気になったミレーに、オリヴァーが笑いながらリゾットのお代わりをくれた。
 食事量はオリヴァーとクラウドと同じ量なのに、ミレーはまだ食べるのに時間がかかるのだ。
 それは利き腕が使えず食べさせてもらっているからではなく、ただ単純に胃が供給される食事量にまだ慣れず、対応が追いつかないというだけである。
 しかし今は早く食べなければいけないと思って大口を開けたのに、オリヴァーは先ほどと変わらない、スプーンの半分の量しか掬って食べさせてくれなかったので、咀嚼を速めてさっさと飲み込むに徹した。

 やっと食べ終わったミレーは、両手を軽く合わせて空になった食器に祈りを捧げる。
 それも食事のマナーだと教わってから、ミレーはそれを毎食欠かさず実行した。
「オリヴァー、さっきの続き!」
「あぁ、そうだな」
 オリヴァーはミレーの隣の席から離れて、ミレーの向かい側の席に移動した。
 そこはクラウドの隣の席で、息子が隣に戻ってきたことを喜ぶクラウドと、隣に戻ってきてしまったことを不運そうにするオリヴァーの温度差が激しい。
 ミレーの食事を手助けしていたオリヴァーは、まだ食事を摂っていない。
 食べながら話してくれるということだろう。
 ミレーの食事介護をしている間に料理が冷めると懸念され、オリヴァーの食事はこれから作られる。
 食前に飲む紅茶を口に含みながら「どこから話すか」と悩んでいた。
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