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2話
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玄関の前で立ち止まる。
今の自分はシキネの愛する“トウリ”になれているだろうか。笑顔は?取引とともに置いてきた非情な自分はちゃんと捨て切れただろうか。
トウリは頬をパン、と打つ。それから、シキネの顔を思い浮かべる。朝の少し寝ぼけたシキネ。仕事の前のピリついたシキネ。仕事終わりの疲れたシキネ。料理をどこか嬉しそうに食べるシキネ。ベッドの中快感に耐え喘ぐシキネ。乱れるシキネ。気をやって恍惚とするシキネ。眠るシキネ。笑うシキネ。怒るシキネ。シキネ、シキネ、シキネ…………
「ただいまぁ」
愛する恋人を思い浮かべた今、自分はシキネの恋人の“トウリ”としていられる。笑顔は自然。シキネが頭の中にいっぱいいるから。
靴を脱いでリビングへ向かうと、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。時間的に夕食の頃だから、きっとシキネが作ってくれているんだ、そう思うと足取りが軽やかになる。
「ただいま、シキネ」
リビングのドアを開ける。アイランドキッチンに立つシキネの表情が少しだけ和らいだ。
「おかえり」
「シキネの手料理かぁ。嬉しいな。何作ってるの?」
「炒飯」
「わぁ、楽しみ」
トウリはシキネを背後から抱きしめて笑う。焼ける音と匂いを楽しみながら、シキネの髪に鼻を埋める。微かにシャンプーの匂いがして、トウリは笑みを深くする。
「料理中だ、向こうで待ってろよ」
「え~、やだ。仕事して疲れたからシキネに癒してほしいな」
「あとでいくらでも癒してやるから、テレビでも観て待ってろ」
「うーん……もうちょっと、もうちょっとだけ吸わせて」
「俺は猫じゃないんだぞ」
すー、と吸入音が髪をくすぐる。シキネは諦めて、しかしその割には嬉しそうに少しだけ頬を緩めて、フライパンとおたまを駆使し炒飯を仕上げる。塩胡椒で味を整え、味見……問題なし。
「盛り付けるからどいてろ」
「はぁい」
名残惜しげに腕を解くトウリは、食器棚から皿を用意する。そこに盛られた炒飯とスプーンを手にテーブルへ運ぶと、ついでにリモコンでテレビを点けた。
「いただきます」
「……いただきます」
向かいで腰を落ち着けて夕食を始める。昨日の残りのシチューも並べられ、やはりトウリのシチューの下には真っ白なご飯が。
「炒飯、美味しいよ。仕事したから、倍、美味しいな」
「お疲れ様」
シキネはシチューを口に運ぶ。好物は先に食べる主義だ。
テレビから流れるのはバラエティ番組。シキネもトウリもニュース番組が定番なので、テレビに目を向けることはない。バラエティ特有の作ったような笑い声と食器同士の当たる音だけが食卓に音をもたらす。
「ところでさ」
そんな心地よい静寂を遮ったのは、楽しそうな笑みを浮かべるトウリだった。料理に満足した、と呼ぶには不自然なほど気分良さげな表情に、シキネは首を傾げる。
「なんだ?」
「さっき、『あとでいくらでも癒してやる』って言ったでしょ?それはどのレベルまで癒してもらえるのかなぁって思って」
「……」
沈黙。シキネは思案しているようにも呆れているようにも見えた。トウリはニコニコと答えを待つ。答えを期待している、と言う方が正しいかもしれない。
シキネは水を一口飲むと、一言、
「頭くらいは撫でる」
とだけ答えた。ぶっきらぼうな口調だが、ハッキリと告げられた恋人とのコミュニケーション。しかし、トウリは口を尖らせる。
「他には?」
「他って……なんだ、最初から望みがあるなら言え」
「え、いいの?」
「恋人の希望を叶えてやるくらいは出来る……はずだ」
「わ、ほんと?嬉しいなぁ」
トウリはスプーンを持ったまま頬杖をついてまっすぐにシキネを見つめる。なんだ、と問おうとしたシキネの脚に、トウリの長い脚が触れる。撫でるようにつつ、と足先を滑らせ、絡めるように脚を膝裏に伸ばす。
───トウリの望みが分かった。
「……食事中に盛るな」
脚を振り払うことはせず、シチューを掬いながらシキネが窘める。トウリは熱い視線をシキネに送りつつ、脚を擦り寄せる。応えを急かすように、すりすりと。
「……だめ?」
甘えたような声で小首を傾げる。
トウリは知っている。シキネが自分に甘くて弱いことを。当然、自分もシキネに甘いし弱い。
こうしておねだりして、その気にさせるように脚を絡ませ、熱っぽい視線でシキネを───ほら、耳が赤くなってきた。
「俺のこと、癒して?そしたら、シキネのこともたっぷり甘やかしてあげる」
甘く囁く。シキネの手は止まっている。視線はシチューに注がれたままだが、もうシチューを見ていない。表情筋の衰えた彼の表情はそのほとんどが無表情だ。だが、彼にだって多少なりとも表情とも呼べる機微があるし、所作や視線の動き、耳が赤くなるなどの生理現象で分かることもある。そういった点では、彼は非常に素直で人並みに雄弁だ。
「…………考えておく」
「うん、楽しみにしてる」
彼の答えは曖昧だ。しかし、含まれている意味は、トウリにはお見通しだった。照れ隠しのYES。耳は赤いまま、視線はどこかぎこちない。そんな恋人が可愛らしくて愛おしくて、トウリはその意味に気づかないふりをした。
───────
「ん……っ、ふ…………」
ベッドに腰掛けるトウリの股ぐらに、床に跪いたシキネが顔を埋める。既に硬く大きくそそり立ったトウリの陰茎を、シキネが奉仕していた。それは日本人男性の平均的なサイズを大きく超えており、全てを口に咥えるのは到底出来そうもない。毎回セックスする度に思うが、これが自分のナカに入っていると思うと、どうしようもない感情に襲われる。
「ん……シキネ、上手だね……」
髪を梳くように撫でられ、シキネは目を細める。存外、大人でもこういうのは嬉しいものらしい。
先端を上顎に擦り付けるようにして口で上下に扱く。喉奥に当たると苦しいが、トウリが声を漏らすのを聞くともっと聞きたくなった。頬の内側で先端をぐりぐりと刺激し、擦り上げながら舌を這わせる。どくん、どくん、と脈打つ雄の匂いにクラクラする。体液同士が混じり合い、潤滑剤代わりのように口淫をスムーズなものにしていく。
睾丸を揉みほぐしながら、裏筋の根元から先端までをべろりと舐め上げる。余裕無さげなトウリの表情がたまらない。シキネは口をすぼめて上下に扱く。じゅぽ、じゅぷ、と淫靡な音が伴う。
「……っ、シキネ、ストップ……」
言われて、シキネは動きを止めて見上げる。トウリは笑みを浮かべていた。余裕無さげな、しかし嬉しそうな笑み。その瞳の色は、獣の光を灯していた。
「シキネのナカで出したい……いいよね?」
「……ああ」
そういう瞳で捉えられるのは心地よい。瞳に映る自分は、きっと獅子を前にした仔兎のようなものだろう。それを情けないとは思わない。愛される者に食われるのならば、喜んで身を捧げよう。これはトウリにしか抱かない、特別な感情だ。誰にも汚させはしない。
シキネは口を離して、口の端に付いた先走り液だか唾液だか分からないものを手の甲で拭った。ベッドに乗り、腰を高く上げる。枕を抱いてちらりと背後を見やると、トウリの顔から笑みが消えていた。狩る者の表情。シキネは背筋に走るえも言われぬ感覚に震えた。
直後、ゆっくりとシキネのナカに割って入ってくる。風呂場で解してきても、何回濡れ場を経験しても、この大きさには慣れない。
柔らかな肉を割り、陰茎の先端が受け入れられた。カリ部分で浅く出し入れされ、もどかしくなる。アナルの縁をくすぐるように先で触れ、撫で、入れて抜いてを繰り返される。トウリに開発されたシキネの身体は、それだけで満足はしないが、過敏にその感覚に快感を得ていた。ねだるように無意識に腰が揺れる。
「はや、く……っ」
「ふふ……ごめんね、反応が可愛くて、つい」
ぐ、と腰を掴まれ、陰茎が挿入される。一番太い部分が肉壁を押し広げ、シキネは呼吸を詰まらせる。全部入り切っていないのに、内臓を押し上げられるような圧迫感。それはとうに異物感と呼ぶものではなくなり、既に快感に塗り替えられていた。
「ん、は……っ」
力を抜こうと深く呼吸する。それでも収まった半分だけの質量に呼吸の仕方を忘れそうになる。ぬぷ、と陰茎が抜かれる。きゅ、と締め付けるナカを堪能するようにゆっくりと抜かれたそれは、どちゅん、と勢いをつけて挿入された。いきなり許容範囲ギリギリを受け入れることになり、シキネの目の前で火花が散ったようだった。
腰を強く掴まれ、反射的に肉壁が締まる。抜かれるタイミングも相まって、肉壁はありありと陰茎の存在を象っていく。抜けていくそれが再び奥へと突き上げられ、シキネは嬌声を漏らした。ぱん、ぱん、と。ぐちゅ、ぐちゅ、と。抽挿の度に、その嬌声に混じって音が耳を犯し始める。それを気にしていられないのは、前立腺を何度も穿たれ、突き上げられ、責め立てられるからだ。
「あ……っ、とぉ……り……っ、そこ、ばっか……ぁう……っ」
「うん、気持ちいいね……?だって、ここ、好き……っ、だもんね……?」
声は優しいのにセックスは獣のように荒々しくて、でもやっぱりどこか甘美で。
シキネはシーツを握りしめ、襲い来る快感の波に必死に身を委ねようとする。だが、僅かな理性がトウリの前で恥を晒したくないと、ギリギリのところで完全に快楽に身を浸すことが出来ない。
肉襞が押し広げられ、限界まで開き切るような質量は、前立腺だけでなく、奥までもを暴こうとする。不意に最奥を突き上げられ、シキネは背中を弓なりに仰け反らせた。
「っ、あぁ……!」
きゅぅぅ、と締め付けたアナルが更に快感を敏感にキャッチし、指先がシーツに爪を立てる。ぱん、ぱん、ぱん。肌と肌が打ちつけ合う音がする。抜かれれば名残惜しげに締め付け、挿入されれば柔く受け止める。それはトウリの性欲を更に高めていく。責めが激しくなる。奥を突き上げ、シキネの悦いところを穿ち、そのお礼と言わんばかりの心地よい締め付けに、自身の陰茎に熱が集まっていくのを感じた。
シキネもまた、限界に近づいてきていた。抽挿の度に引き攣ったように痙攣する肉壁から、快感が全身に押し寄せてくる。熱に浮かされたように全身の感覚が鈍くなっているのに、快楽神経だけが研ぎ澄まされ、身体が快感に震える。
「んぅ……っ、は、ぁ…………っ、ぅ、あぁ!?」
結腸をぐん、と突かれ、シキネは甘く声を上げた。ナカを解され、ぐちゃぐちゃに掻き回される。乱暴なのに心地よくて、倒錯的な気分になる。追い詰められているのに、責め立てられているのに、精神は解放されたようで、肉体は許されたように快楽に溺れる。弱いところを何度も穿たれ、シキネは下腹部に熱が集まっていくのを感じた。しかし、感じただけでそれをどうしようも出来ずに、彼はトウリに縋った。
「と、り……っ、とぉり……っ」
「うん、出すよ……っ、受け止めて、シキネ……っ」
「あ、あ、ああぁぁ……っ!」
熱と快感が隘路を駆け抜け、解放される。下腹部から全身に快感が駆け巡り、伝播していく。ナカに熱い精が注ぎ込まれ、肉壁が甘く震える。肉襞の1本1本に塗りたくるように注がれたそれは、まるでそれがひとつの快楽のように、快感とともに染み渡っていく。太腿がガクガクと震え、快感を逃がすように背が仰け反った。背骨が甘く痺れる。身体が蕩けたように曖昧になり、シキネは余韻に浸りながら息を吐いた。
「ごめん、まだ足りない」
耳元で囁かれる。身体を背後からのしかかるように覆い被さられ、ドキ、と胸が高鳴る。逃げられないと思い知らされているのに、それがどうしようもなく嬉しい。
「……俺も」
シーツに顔を埋めて返すと、笑みを返される気配がした。それは雄々しくて優しい気配。再び始まった抽挿に、シキネは甘く鳴いた。
───────
3ラウンドを終え、シキネは腰の痛みと戦いながら左へ身体ごと向く。そちらにはトウリがシキネへ向いていて、優しく髪を撫でてくれた。さっきまで獣のような様子は無く、誰もが見惚れるような微笑でシキネを見つめていた。
「無理させちゃったかな?大丈夫?」
「ん……」
労いの言葉に、シキネは頷いて手に擦り寄った。自分より大きな手は傷が残っていて、彼もまた裏社会の住人なのだと思い知らされる。
「そうだ、シキネに伝えなきゃいけないことがあって……」
トウリは手を止めた。それからまっすぐにシキネを見つめて、再び髪を撫でる。
「明日の夜、東曜島の港の倉庫に依頼が入っても、受けちゃダメだよ」
「何かあるのか?」
「イタリア系マフィアの《サーペント・ロッソ》と日本のヤクザの《陸悠会》の取引があるんだ。他の組織も介入するかもしれないから、絶対に行っちゃダメだ」
「分かった、そういう依頼があっても断っておく」
「いい子だね、シキネ」
ちゅ、と額にキスを落とされる。それから胸に抱き寄せられる。温かく少しだけ速い鼓動が伝わった。シャワーを浴びて後処理をしなくては、と思うのに、肉体も精神も後の苦労より現在の幸福を選ぶらしい。いつの間にか髪に寝息がかかっている。なんだか、眠くなってきた。
───────
絵画が飾られた豪奢な応接室。
朱 憂炎はソファにゆったりと座り、煙管をふかしていた。その背後には林 咲存が無表情に周囲を警戒している。憂炎と咲存の向かい側には、4、5人のスーツ姿のイタリア系の男達が立っており、彼らの主がソファに寛いでいた。
「それで?御用は何でしょう?」
彼らの主、テオ・シルヴェーリは至極丁寧な口調で憂炎に問いかけた。テオは《サーペント・ロッソ》の若きボスであり、本来なら敵対関係にある《灯虎》のボス、憂炎と話し合いが出来る人物ではない。しかし、テオは流暢な日本語で続ける。
「先日のウチのが殺された件について、と聞きましたが……何故、わざわざ貴方が、それを話しに来たのですか?」
「あんたらのとこのを殺したのも、うちのを殺したのも、どうやら同一人物らしくてねぇ……ここはひとつ、手を取り合って仇討ちするのも悪くはないんじゃないかと思ってね」
「そうですか。なら、その殺し屋を教えて貴方達は引っ込んでいてください」
テオが金髪を掻き上げて告げる。その鋭利な眼差しに、憂炎は目を逸らさずにまっすぐに返す。
「いやだね。こっちはちゃんとお互いの利があって提案しに来てるんだ、仲良くしようじゃないか」
「互いの利?」
眉根を顰めるテオ。対する憂炎は紫煙をゆっくりと吐いて笑う。余裕気なその顔に、《サーペント・ロッソ》側の構成員はイラつき始めた。その空気を感じ取ったのか、テオは「続けてください」と憂炎を促した。
「ああ。そちらさんは今度、《陸悠会》との取引があるでしょ?それにウチが加担してやるんだ。武器製造の部品を貰う代わりに金を支払う……そんなの、相手を殺して奪っちゃえばいいのさ」
「頭のお堅い日本人には、まだ使い道があるんです。そう簡単には手放せません」
「そうなの?部品製造ならウチもやってあげるのに」
「貴方の国のものは日本製と比べて品質が落ちるでしょう。それに……ただ単に、貴方達にとって《陸悠会》が邪魔なだけでしょう?」
「はは、そうとも言うね」
どちらも否定せず笑う。更に訝しんだのはテオだ。さっきから、憂炎は特に利とも思えない提案ばかり提示してくる。だが、敵地で愉快そうに煙管を手元で弄ぶ様子は、彼が一筋縄ではいかない曲者という印象だ。
「……早く用件を。私だって忙しい身なんですよ」
「そう?つまらないねぇ」
憂炎はそう言いつつも楽しげに口元を緩めてチャイナ服のポケットを漁る。取り出したのは1枚の写真。写真を見ながら、ニヤニヤと煙管でそれをつつく。
「いやぁ、僕の気のせいならいいんだけどねぇ?でも、もし僕の考えすぎじゃなかったら、なかなか面白いと思うんだよ」
「……」
早く言え、と無言の圧力を受け、憂炎はテーブルに写真を投げた。ひらひらと裏向きで落ちたそれを拾い上げると、テオは瞠目して写真に釘付けになった。信じられないものを見たような、そんな表情。笑みを深めたのは憂炎だった。
「彼、“不吉なもの”って呼ばれてる情報屋でね、あんたんとこの殺しもウチの殺しも実行した“フクロウ”って殺し屋と同棲してるらしくて……あぁ、恋人同士って言った方がいいのかな?あ、住所は裏に書いてあるよ」
「……何故、彼を知っているんです?」
「ウチの情報網をなめちゃダメだよ。フクロウ探しのついでに見つかっただけの、フクロウの弱点みたいなものでね。でも……あんたにとっては、フクロウの弱点以上に意味のある発見でしょ?」
「……ええ。彼はウチで預かります。殺し屋の方は好きにして構いません」
「話が早くて助かるよ」
憂炎は指をくい、と動かして咲存を呼ぶ。咲存が憂炎の足元に跪くと、憂炎は嬉しそうに咲存の顎を撫でた。咲存は目を瞑ってそれを堪能する。しかし、その右手は腰のホルスターに掛かっている。
「この情報を調べたのは僕の咲存でね……本当に有能で可愛い子だよ。ね、咲存?」
「もったいなきお言葉です」
「うん、そういうとこも可愛いね」
咲存の白髪を撫で、耳を指で愛撫する。耳に触れられ、彼は頬を赤らめて俯く。「咲存」と憂炎がそれを窘めると、咲存は素直に顔を上げて憂炎を熱い眼差しで見つめた。憂炎もまた、艶のある光を灯した瞳で彼を捉える。
「ここで発情しないでください。もう話は終わりでしょう?さっさと帰ってください」
「あぁ、やだやだ。そういうせっかちは早漏の始まりだよ?可愛い弟弟に嫌われちゃうかもね?」
「……朱 憂炎とその飼い犬がお帰りです。丁重にお送りしなさい」
その言葉に、テオの背後に控えていた男達が憂炎達を取り囲む。咲存はピクリと反応し、銃に手をかける。
「咲存」
「……はい」
憂炎の呼び掛けに、咲存はおとなしく銃から手を離して立ち上がる。す、と綺麗な姿勢で立ち上がった憂炎は、「玄関まで送ってくれよ」と余裕気に笑ってみせた。
憂炎と咲存が退室すると、テオはすぐに電話を掛けた。3コールもしないうちに出た相手に、テオは私情のみで告げた。
「人攫いの準備をしろ」
今の自分はシキネの愛する“トウリ”になれているだろうか。笑顔は?取引とともに置いてきた非情な自分はちゃんと捨て切れただろうか。
トウリは頬をパン、と打つ。それから、シキネの顔を思い浮かべる。朝の少し寝ぼけたシキネ。仕事の前のピリついたシキネ。仕事終わりの疲れたシキネ。料理をどこか嬉しそうに食べるシキネ。ベッドの中快感に耐え喘ぐシキネ。乱れるシキネ。気をやって恍惚とするシキネ。眠るシキネ。笑うシキネ。怒るシキネ。シキネ、シキネ、シキネ…………
「ただいまぁ」
愛する恋人を思い浮かべた今、自分はシキネの恋人の“トウリ”としていられる。笑顔は自然。シキネが頭の中にいっぱいいるから。
靴を脱いでリビングへ向かうと、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。時間的に夕食の頃だから、きっとシキネが作ってくれているんだ、そう思うと足取りが軽やかになる。
「ただいま、シキネ」
リビングのドアを開ける。アイランドキッチンに立つシキネの表情が少しだけ和らいだ。
「おかえり」
「シキネの手料理かぁ。嬉しいな。何作ってるの?」
「炒飯」
「わぁ、楽しみ」
トウリはシキネを背後から抱きしめて笑う。焼ける音と匂いを楽しみながら、シキネの髪に鼻を埋める。微かにシャンプーの匂いがして、トウリは笑みを深くする。
「料理中だ、向こうで待ってろよ」
「え~、やだ。仕事して疲れたからシキネに癒してほしいな」
「あとでいくらでも癒してやるから、テレビでも観て待ってろ」
「うーん……もうちょっと、もうちょっとだけ吸わせて」
「俺は猫じゃないんだぞ」
すー、と吸入音が髪をくすぐる。シキネは諦めて、しかしその割には嬉しそうに少しだけ頬を緩めて、フライパンとおたまを駆使し炒飯を仕上げる。塩胡椒で味を整え、味見……問題なし。
「盛り付けるからどいてろ」
「はぁい」
名残惜しげに腕を解くトウリは、食器棚から皿を用意する。そこに盛られた炒飯とスプーンを手にテーブルへ運ぶと、ついでにリモコンでテレビを点けた。
「いただきます」
「……いただきます」
向かいで腰を落ち着けて夕食を始める。昨日の残りのシチューも並べられ、やはりトウリのシチューの下には真っ白なご飯が。
「炒飯、美味しいよ。仕事したから、倍、美味しいな」
「お疲れ様」
シキネはシチューを口に運ぶ。好物は先に食べる主義だ。
テレビから流れるのはバラエティ番組。シキネもトウリもニュース番組が定番なので、テレビに目を向けることはない。バラエティ特有の作ったような笑い声と食器同士の当たる音だけが食卓に音をもたらす。
「ところでさ」
そんな心地よい静寂を遮ったのは、楽しそうな笑みを浮かべるトウリだった。料理に満足した、と呼ぶには不自然なほど気分良さげな表情に、シキネは首を傾げる。
「なんだ?」
「さっき、『あとでいくらでも癒してやる』って言ったでしょ?それはどのレベルまで癒してもらえるのかなぁって思って」
「……」
沈黙。シキネは思案しているようにも呆れているようにも見えた。トウリはニコニコと答えを待つ。答えを期待している、と言う方が正しいかもしれない。
シキネは水を一口飲むと、一言、
「頭くらいは撫でる」
とだけ答えた。ぶっきらぼうな口調だが、ハッキリと告げられた恋人とのコミュニケーション。しかし、トウリは口を尖らせる。
「他には?」
「他って……なんだ、最初から望みがあるなら言え」
「え、いいの?」
「恋人の希望を叶えてやるくらいは出来る……はずだ」
「わ、ほんと?嬉しいなぁ」
トウリはスプーンを持ったまま頬杖をついてまっすぐにシキネを見つめる。なんだ、と問おうとしたシキネの脚に、トウリの長い脚が触れる。撫でるようにつつ、と足先を滑らせ、絡めるように脚を膝裏に伸ばす。
───トウリの望みが分かった。
「……食事中に盛るな」
脚を振り払うことはせず、シチューを掬いながらシキネが窘める。トウリは熱い視線をシキネに送りつつ、脚を擦り寄せる。応えを急かすように、すりすりと。
「……だめ?」
甘えたような声で小首を傾げる。
トウリは知っている。シキネが自分に甘くて弱いことを。当然、自分もシキネに甘いし弱い。
こうしておねだりして、その気にさせるように脚を絡ませ、熱っぽい視線でシキネを───ほら、耳が赤くなってきた。
「俺のこと、癒して?そしたら、シキネのこともたっぷり甘やかしてあげる」
甘く囁く。シキネの手は止まっている。視線はシチューに注がれたままだが、もうシチューを見ていない。表情筋の衰えた彼の表情はそのほとんどが無表情だ。だが、彼にだって多少なりとも表情とも呼べる機微があるし、所作や視線の動き、耳が赤くなるなどの生理現象で分かることもある。そういった点では、彼は非常に素直で人並みに雄弁だ。
「…………考えておく」
「うん、楽しみにしてる」
彼の答えは曖昧だ。しかし、含まれている意味は、トウリにはお見通しだった。照れ隠しのYES。耳は赤いまま、視線はどこかぎこちない。そんな恋人が可愛らしくて愛おしくて、トウリはその意味に気づかないふりをした。
───────
「ん……っ、ふ…………」
ベッドに腰掛けるトウリの股ぐらに、床に跪いたシキネが顔を埋める。既に硬く大きくそそり立ったトウリの陰茎を、シキネが奉仕していた。それは日本人男性の平均的なサイズを大きく超えており、全てを口に咥えるのは到底出来そうもない。毎回セックスする度に思うが、これが自分のナカに入っていると思うと、どうしようもない感情に襲われる。
「ん……シキネ、上手だね……」
髪を梳くように撫でられ、シキネは目を細める。存外、大人でもこういうのは嬉しいものらしい。
先端を上顎に擦り付けるようにして口で上下に扱く。喉奥に当たると苦しいが、トウリが声を漏らすのを聞くともっと聞きたくなった。頬の内側で先端をぐりぐりと刺激し、擦り上げながら舌を這わせる。どくん、どくん、と脈打つ雄の匂いにクラクラする。体液同士が混じり合い、潤滑剤代わりのように口淫をスムーズなものにしていく。
睾丸を揉みほぐしながら、裏筋の根元から先端までをべろりと舐め上げる。余裕無さげなトウリの表情がたまらない。シキネは口をすぼめて上下に扱く。じゅぽ、じゅぷ、と淫靡な音が伴う。
「……っ、シキネ、ストップ……」
言われて、シキネは動きを止めて見上げる。トウリは笑みを浮かべていた。余裕無さげな、しかし嬉しそうな笑み。その瞳の色は、獣の光を灯していた。
「シキネのナカで出したい……いいよね?」
「……ああ」
そういう瞳で捉えられるのは心地よい。瞳に映る自分は、きっと獅子を前にした仔兎のようなものだろう。それを情けないとは思わない。愛される者に食われるのならば、喜んで身を捧げよう。これはトウリにしか抱かない、特別な感情だ。誰にも汚させはしない。
シキネは口を離して、口の端に付いた先走り液だか唾液だか分からないものを手の甲で拭った。ベッドに乗り、腰を高く上げる。枕を抱いてちらりと背後を見やると、トウリの顔から笑みが消えていた。狩る者の表情。シキネは背筋に走るえも言われぬ感覚に震えた。
直後、ゆっくりとシキネのナカに割って入ってくる。風呂場で解してきても、何回濡れ場を経験しても、この大きさには慣れない。
柔らかな肉を割り、陰茎の先端が受け入れられた。カリ部分で浅く出し入れされ、もどかしくなる。アナルの縁をくすぐるように先で触れ、撫で、入れて抜いてを繰り返される。トウリに開発されたシキネの身体は、それだけで満足はしないが、過敏にその感覚に快感を得ていた。ねだるように無意識に腰が揺れる。
「はや、く……っ」
「ふふ……ごめんね、反応が可愛くて、つい」
ぐ、と腰を掴まれ、陰茎が挿入される。一番太い部分が肉壁を押し広げ、シキネは呼吸を詰まらせる。全部入り切っていないのに、内臓を押し上げられるような圧迫感。それはとうに異物感と呼ぶものではなくなり、既に快感に塗り替えられていた。
「ん、は……っ」
力を抜こうと深く呼吸する。それでも収まった半分だけの質量に呼吸の仕方を忘れそうになる。ぬぷ、と陰茎が抜かれる。きゅ、と締め付けるナカを堪能するようにゆっくりと抜かれたそれは、どちゅん、と勢いをつけて挿入された。いきなり許容範囲ギリギリを受け入れることになり、シキネの目の前で火花が散ったようだった。
腰を強く掴まれ、反射的に肉壁が締まる。抜かれるタイミングも相まって、肉壁はありありと陰茎の存在を象っていく。抜けていくそれが再び奥へと突き上げられ、シキネは嬌声を漏らした。ぱん、ぱん、と。ぐちゅ、ぐちゅ、と。抽挿の度に、その嬌声に混じって音が耳を犯し始める。それを気にしていられないのは、前立腺を何度も穿たれ、突き上げられ、責め立てられるからだ。
「あ……っ、とぉ……り……っ、そこ、ばっか……ぁう……っ」
「うん、気持ちいいね……?だって、ここ、好き……っ、だもんね……?」
声は優しいのにセックスは獣のように荒々しくて、でもやっぱりどこか甘美で。
シキネはシーツを握りしめ、襲い来る快感の波に必死に身を委ねようとする。だが、僅かな理性がトウリの前で恥を晒したくないと、ギリギリのところで完全に快楽に身を浸すことが出来ない。
肉襞が押し広げられ、限界まで開き切るような質量は、前立腺だけでなく、奥までもを暴こうとする。不意に最奥を突き上げられ、シキネは背中を弓なりに仰け反らせた。
「っ、あぁ……!」
きゅぅぅ、と締め付けたアナルが更に快感を敏感にキャッチし、指先がシーツに爪を立てる。ぱん、ぱん、ぱん。肌と肌が打ちつけ合う音がする。抜かれれば名残惜しげに締め付け、挿入されれば柔く受け止める。それはトウリの性欲を更に高めていく。責めが激しくなる。奥を突き上げ、シキネの悦いところを穿ち、そのお礼と言わんばかりの心地よい締め付けに、自身の陰茎に熱が集まっていくのを感じた。
シキネもまた、限界に近づいてきていた。抽挿の度に引き攣ったように痙攣する肉壁から、快感が全身に押し寄せてくる。熱に浮かされたように全身の感覚が鈍くなっているのに、快楽神経だけが研ぎ澄まされ、身体が快感に震える。
「んぅ……っ、は、ぁ…………っ、ぅ、あぁ!?」
結腸をぐん、と突かれ、シキネは甘く声を上げた。ナカを解され、ぐちゃぐちゃに掻き回される。乱暴なのに心地よくて、倒錯的な気分になる。追い詰められているのに、責め立てられているのに、精神は解放されたようで、肉体は許されたように快楽に溺れる。弱いところを何度も穿たれ、シキネは下腹部に熱が集まっていくのを感じた。しかし、感じただけでそれをどうしようも出来ずに、彼はトウリに縋った。
「と、り……っ、とぉり……っ」
「うん、出すよ……っ、受け止めて、シキネ……っ」
「あ、あ、ああぁぁ……っ!」
熱と快感が隘路を駆け抜け、解放される。下腹部から全身に快感が駆け巡り、伝播していく。ナカに熱い精が注ぎ込まれ、肉壁が甘く震える。肉襞の1本1本に塗りたくるように注がれたそれは、まるでそれがひとつの快楽のように、快感とともに染み渡っていく。太腿がガクガクと震え、快感を逃がすように背が仰け反った。背骨が甘く痺れる。身体が蕩けたように曖昧になり、シキネは余韻に浸りながら息を吐いた。
「ごめん、まだ足りない」
耳元で囁かれる。身体を背後からのしかかるように覆い被さられ、ドキ、と胸が高鳴る。逃げられないと思い知らされているのに、それがどうしようもなく嬉しい。
「……俺も」
シーツに顔を埋めて返すと、笑みを返される気配がした。それは雄々しくて優しい気配。再び始まった抽挿に、シキネは甘く鳴いた。
───────
3ラウンドを終え、シキネは腰の痛みと戦いながら左へ身体ごと向く。そちらにはトウリがシキネへ向いていて、優しく髪を撫でてくれた。さっきまで獣のような様子は無く、誰もが見惚れるような微笑でシキネを見つめていた。
「無理させちゃったかな?大丈夫?」
「ん……」
労いの言葉に、シキネは頷いて手に擦り寄った。自分より大きな手は傷が残っていて、彼もまた裏社会の住人なのだと思い知らされる。
「そうだ、シキネに伝えなきゃいけないことがあって……」
トウリは手を止めた。それからまっすぐにシキネを見つめて、再び髪を撫でる。
「明日の夜、東曜島の港の倉庫に依頼が入っても、受けちゃダメだよ」
「何かあるのか?」
「イタリア系マフィアの《サーペント・ロッソ》と日本のヤクザの《陸悠会》の取引があるんだ。他の組織も介入するかもしれないから、絶対に行っちゃダメだ」
「分かった、そういう依頼があっても断っておく」
「いい子だね、シキネ」
ちゅ、と額にキスを落とされる。それから胸に抱き寄せられる。温かく少しだけ速い鼓動が伝わった。シャワーを浴びて後処理をしなくては、と思うのに、肉体も精神も後の苦労より現在の幸福を選ぶらしい。いつの間にか髪に寝息がかかっている。なんだか、眠くなってきた。
───────
絵画が飾られた豪奢な応接室。
朱 憂炎はソファにゆったりと座り、煙管をふかしていた。その背後には林 咲存が無表情に周囲を警戒している。憂炎と咲存の向かい側には、4、5人のスーツ姿のイタリア系の男達が立っており、彼らの主がソファに寛いでいた。
「それで?御用は何でしょう?」
彼らの主、テオ・シルヴェーリは至極丁寧な口調で憂炎に問いかけた。テオは《サーペント・ロッソ》の若きボスであり、本来なら敵対関係にある《灯虎》のボス、憂炎と話し合いが出来る人物ではない。しかし、テオは流暢な日本語で続ける。
「先日のウチのが殺された件について、と聞きましたが……何故、わざわざ貴方が、それを話しに来たのですか?」
「あんたらのとこのを殺したのも、うちのを殺したのも、どうやら同一人物らしくてねぇ……ここはひとつ、手を取り合って仇討ちするのも悪くはないんじゃないかと思ってね」
「そうですか。なら、その殺し屋を教えて貴方達は引っ込んでいてください」
テオが金髪を掻き上げて告げる。その鋭利な眼差しに、憂炎は目を逸らさずにまっすぐに返す。
「いやだね。こっちはちゃんとお互いの利があって提案しに来てるんだ、仲良くしようじゃないか」
「互いの利?」
眉根を顰めるテオ。対する憂炎は紫煙をゆっくりと吐いて笑う。余裕気なその顔に、《サーペント・ロッソ》側の構成員はイラつき始めた。その空気を感じ取ったのか、テオは「続けてください」と憂炎を促した。
「ああ。そちらさんは今度、《陸悠会》との取引があるでしょ?それにウチが加担してやるんだ。武器製造の部品を貰う代わりに金を支払う……そんなの、相手を殺して奪っちゃえばいいのさ」
「頭のお堅い日本人には、まだ使い道があるんです。そう簡単には手放せません」
「そうなの?部品製造ならウチもやってあげるのに」
「貴方の国のものは日本製と比べて品質が落ちるでしょう。それに……ただ単に、貴方達にとって《陸悠会》が邪魔なだけでしょう?」
「はは、そうとも言うね」
どちらも否定せず笑う。更に訝しんだのはテオだ。さっきから、憂炎は特に利とも思えない提案ばかり提示してくる。だが、敵地で愉快そうに煙管を手元で弄ぶ様子は、彼が一筋縄ではいかない曲者という印象だ。
「……早く用件を。私だって忙しい身なんですよ」
「そう?つまらないねぇ」
憂炎はそう言いつつも楽しげに口元を緩めてチャイナ服のポケットを漁る。取り出したのは1枚の写真。写真を見ながら、ニヤニヤと煙管でそれをつつく。
「いやぁ、僕の気のせいならいいんだけどねぇ?でも、もし僕の考えすぎじゃなかったら、なかなか面白いと思うんだよ」
「……」
早く言え、と無言の圧力を受け、憂炎はテーブルに写真を投げた。ひらひらと裏向きで落ちたそれを拾い上げると、テオは瞠目して写真に釘付けになった。信じられないものを見たような、そんな表情。笑みを深めたのは憂炎だった。
「彼、“不吉なもの”って呼ばれてる情報屋でね、あんたんとこの殺しもウチの殺しも実行した“フクロウ”って殺し屋と同棲してるらしくて……あぁ、恋人同士って言った方がいいのかな?あ、住所は裏に書いてあるよ」
「……何故、彼を知っているんです?」
「ウチの情報網をなめちゃダメだよ。フクロウ探しのついでに見つかっただけの、フクロウの弱点みたいなものでね。でも……あんたにとっては、フクロウの弱点以上に意味のある発見でしょ?」
「……ええ。彼はウチで預かります。殺し屋の方は好きにして構いません」
「話が早くて助かるよ」
憂炎は指をくい、と動かして咲存を呼ぶ。咲存が憂炎の足元に跪くと、憂炎は嬉しそうに咲存の顎を撫でた。咲存は目を瞑ってそれを堪能する。しかし、その右手は腰のホルスターに掛かっている。
「この情報を調べたのは僕の咲存でね……本当に有能で可愛い子だよ。ね、咲存?」
「もったいなきお言葉です」
「うん、そういうとこも可愛いね」
咲存の白髪を撫で、耳を指で愛撫する。耳に触れられ、彼は頬を赤らめて俯く。「咲存」と憂炎がそれを窘めると、咲存は素直に顔を上げて憂炎を熱い眼差しで見つめた。憂炎もまた、艶のある光を灯した瞳で彼を捉える。
「ここで発情しないでください。もう話は終わりでしょう?さっさと帰ってください」
「あぁ、やだやだ。そういうせっかちは早漏の始まりだよ?可愛い弟弟に嫌われちゃうかもね?」
「……朱 憂炎とその飼い犬がお帰りです。丁重にお送りしなさい」
その言葉に、テオの背後に控えていた男達が憂炎達を取り囲む。咲存はピクリと反応し、銃に手をかける。
「咲存」
「……はい」
憂炎の呼び掛けに、咲存はおとなしく銃から手を離して立ち上がる。す、と綺麗な姿勢で立ち上がった憂炎は、「玄関まで送ってくれよ」と余裕気に笑ってみせた。
憂炎と咲存が退室すると、テオはすぐに電話を掛けた。3コールもしないうちに出た相手に、テオは私情のみで告げた。
「人攫いの準備をしろ」
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