どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

久々に相撲に触れ……

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 正直波那ちゃんがその答えを出してくるとは思っていなかった俺の食事の手が止まる。
 「変なクッションは要らないと思うよ、個人的に大会の応援に行くとかたまに見学させてもらうとかで充分なんじゃない?」
 僕はそう思うけど。波那ちゃんは口の回りにソースをいっぱい付けているであろう俺にティッシュペーパーの箱を差し出してくれる。普段ならあまりストレートな発言をしないだけに、まるで見透かされてる様な気分になる。
 「今はとにかく専門教科の勉強をしていたいんでしょ?ならそっちに時間を使うべきだと思うよ、僕は」
 「まぁどっちにしろ決めるのはお前だ、自分の気持ちに正直な返事なら答えは何であれ納得してくれるさ」
 このところ二ヶ月に一度のテレビ中継以外で相撲に触れる機会が無いのがちょっと寂しかったりもしてるから、二人ともそこには気付いてたのかな?俺はうん、と頷いて焼きそばを頬張った。

 それから何日かして、俺は授業が終わった後格闘技系の部活動が集まっている第二体育館をウロウロしていた。確か相撲部の専用稽古場がこの辺に……あれかな?真新しい小屋みたいな建物を発見した俺は、戸が開いてるのを良いことにちょっと中を覗いてみる。
 あっ、やってるな……その空間はピンと張り詰めている状態で他を寄せ付けない緊張感があった。ちょっと入りづらいなぁ、内心怖じ気付いている俺の背中にこんにちは、と言う男子生徒の声についビビってしまう。恐る恐る振り返ると体操服姿の小柄で細い男子生徒、体操服は学年ごとに色分けされてるから……この人はネイビー、って事は三年生か。
 「こんにちは……」
 「見学ですか?ちょっとそのままお待ちくださいね」
 はい。返事する俺に一度笑顔を見せてから緊迫した空気をものともせず中に入っていく。見た感じマネージャーさんぽい、三年生だし慣れてて当たり前か。そう言えば俺国木田さんにも颯天にもこの事話してないや、でもまぁ二人共細かい事グズグズ言う性格じゃないし別に大丈夫だろ。
 今日はバイトも無いし……と考える間もなく、それから本当に確認取ったのか?って聞きたくなるくらいの早さで戻ってきたマネージャーさんは、どうぞ。と手招きして中に入れてくれた。
 中では部員たちが泥まみれになって稽古に励んでいる。昔俺もやってたな……懐かしさもありながら練習風景を真剣に見ていたんだけど、ある来客の登場で俺の緊張感が一気に高まった。
 「お邪魔致します……いかがですか?仕上がりは」
 なんて事を言いながら俺の前を通り過ぎて、監督に声を掛けながら奥にずかずかと入り込んでいく。まぁこの人相撲部屋のスカウトマンだから初めから許可は取ってるだろうけど。正直あんま関わりたくないから退散しようかな……?
 「そろそろミーティングに入りそうなんだけど」
 ずっと俺の隣に居てくれているマネージャーさんが、気を利かせて退席する様仕向けてくれる。
 「ではこれで失礼します、今日はありがとうございました」
 「見学くらいならいつでもおいで、って部長が言ってたよ」
 「たまにフラッと伺います」
 そう言って稽古場を出ようとした時……。
 「君、ここの生徒だったんだね」
 ……何で声掛けてくるかなぁ?俺は聞こえてない振りをして無視を決め込んだが、何を思ったか駆け寄る様に回り込んできて俺の行く道を阻んでくる。
 「えぇ、まぁ」
 俺は曖昧な返事で逃げるきっかけを探す。しかしそいつは俺の顔をニヤニヤしながらねちっこく見回してきやがる。
 「すっかりモデル体型だね、わんぱく時代の見る影も無いじゃない」
 へぇへぇ悪うございましたね、折角目ェかけてくださってたのにモノにならなくて。
 「何だか本当に色気付いたみたいだね、恋人でも居るの?」
 いえ。素っ気なく答えてほぼ同じ身長のそいつの顔を睨む。あ~ヤな事思い出しちまったよ……。
 「すみません、部外者への声掛けは止めてもらって良いですか?」
 監督とは別の男性が俺たちの間に割って入る。って事はこの人が顧問の先生……あっ、日本史の先生だ。
 「畠中じゃないか、丹波から話は聞いてるけど立ち話は控えてくれ」
 先生は敢えて俺に注意してその場から立ち去らせるようにしてくださる。そのご厚意をありがたく思い、先生に一礼して俺はさっさと稽古場をあとにした。
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