どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

文字の大きさ
19 / 145
やっとこさ本編

嫌な事ついでに思い出す……

しおりを挟む
 『君さぁ、思春期で色気付いちゃったんじゃないの?』

 中一の時、ちょうど地方大会であと一つ勝てば全国大会に進める。というところで負けてしまった時にスカウトマンに浴びせられた言葉だった。
 食べても食べても太れない、それを補うように筋力トレーニングだってやった。身長ばかりぐんぐん伸びて体重は減るばかり、それでも何とか勝ち上がって地方大会準々決勝。相手は全国優勝もしてる格上だったし、先生はむしろ痩せていってる俺の体の心配をしてくださる位だった。
 『結果なんてどうでもいい、ベストを尽くせ』
 その言葉に送り出されて試合に挑んだ俺は、対戦相手に初めて怖さを感じた。その時点で既に負けてる、でももしかしたら最後の大会になる可能性も帯びてる今、ひょっとして俺ツイてるんじゃないかとも思えてくる。こんな凄い相手そうそう当たらないし、ベストを尽くせば案外いい試合が出来るかも知れない。
 
 『はっけよい!』
 
 実は取組の事は何にも覚えていない、気付いたら土俵外で泥だらけで転がってた。ただ観客の盛り上がりは凄かった、何があったのかな?俺は負けた事実しか分からずぼんやりしていると、対戦相手の相馬ソウマさんが手を差し出してきた。俺は何も考えず彼の手を握ると、土俵上に引き上げて、ゴメン。と言ってきた。
 『俺君の事ナメてた、こんなしんどい取組初めてだったよ』
 へ……?俺の頭はまだぼんやりしていたが、行司に呼ばれた俺たちは最後に一礼して握手を交わしたらまた声を掛けてくれた。
 『また対戦しよう』
 俺は泣きそう……多分泣いてた。声が出なくて頷くだけで必死だった。退場する時負けた俺にも惜しみない拍手を送ってくれ、先生や仲間たちも、よくやった!と笑顔で迎え入れてくれた。ちょうどそんな時に、スカウトマンに掛けられて一言が『それ』だったんだ……その言葉は本当にショックだったけど、先生がその場で庇ってくれてその時はそれで大して気に留めなくて済んだ。
 それからは彼との再戦を誓って更に練習に励んだ。それでも体重の減少は止まらず、当たり稽古に耐え切れなくなってきた。その頃からあの一言が心に疼くようになってきて、これまで負ける事のなかった相手にも当たり負けする様になる。中二になって間もなく、体重が七十キロを切ってしまった事で、再戦叶わず相撲の道を諦める決断をした。

 それから結局入部を断り、少しは先生の言う事でも聞くかと寄り道をして本屋に立ち寄っていた。相変わらず数学が苦手な俺は、理系タイプの輝にオススメしてもらった参考書を買って勉強する事にした。
 さて帰るか。そう思って駅に向かっていると物凄い勢いで腕を掴まれ、まだ人気の無い歓楽街にずんずん入り、なぜかラブホに連れ込まれてしまった。
 それにしてもなんちゅう力してんだ!?腕っぷしに不安の無い俺でも振りほどけなかったほどの馬鹿力、今のところサングラスにマスクと怪しさ全開で顔を隠している。ただコイツ知ってる様な気が……なんて考えている間にホテルの一室に連れ込まれ、不本意ながらベッドに体を投げ付けられた。
 冗談じゃねぇ!俺は枕をそいつの顔面目掛けて投げ付けると、上手い具合にサングラスが吹っ飛んだ。その目には完全に見覚えあり!あのスカウトマンじゃねぇかよ!
 奴は顔がバレた途端強攻策に出やがり、無駄に早い身のこなしで俺の体はあっと言う間に組み敷かれてしまう。コイツひょっとして……。
 「わんぱく相撲レベルの君には負けませんよ、私柔道でオリンピック強化選手でしたので」
 そんな特技持ってやがったのかよ……!?ってかその才能をこんな使い方すんなオッサン!とは言え状況はあんま良くねぇなぁ、今腕の自由を奪われてるし……。
 「君やっぱり綺麗な顔してるねぇ」
 あんたそれ何人の青少年に言ってきた?多分相当数こんな事してるな。取り敢えず服脱がすなりの事はしてくるはずだ。ちょっと悠長な気もしたけど、腕の自由が効かないんじゃどうにもなんねぇ。
 変態は俺の首筋に顔を埋めて唇を這わせてくる。キスじゃなくて良かったんだろうけど気持ち悪すぎる!俺は歯をくいしばって声を殺し、とにかく腕を離せと願っていると、そいつの右手が俺のシャツを引き上げ、左手が自由になった俺は奴の腹を持ち上げる。
 「利き手じゃないとやりにくいでしょ?」
 「それはどうかな?」
 奴は多分減らず口だと思ってんだろうけど、俺左利きなんだよ。筆記と食事は右に直してるから知らなかっただろうけどな。俺と奴の体に隙間が出来て、左足を通して腹に足裏を固定する。もう股割りさまさま、力士の柔軟性ナメんなよ!足で奴の体を蹴り上げると奴はグワッ!と奇声を発して体勢が崩れる。俺の右手も自由になり、胸ぐらを掴んで思いっきり背負い投げてやった。奴は腰を強打した様でのたうちまわっていたがそんなもん知ったこっちゃねぇ。俺は学生鞄と買ったばかりの参考書を持ってホテルを出ると……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

処理中です...