どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

文字の大きさ
29 / 145
やっとこさ本編

…少しずつ何かが変わる?…

しおりを挟む
 “白雪姫”の話自体はオーソドックスなもので、王様役の女子生徒は恰幅が良く、継母役の女子生徒は手当たり次第物を破壊するなかなか強烈なキャラになっていた。最初は人形だった白雪は成長して誠になり、継母の策略により山中に棄てられる。誠の女装姿はあの時よりも磨きがかかってメイクも上手くなってるもんだから、男と分かっててもめちゃくちゃ可愛くなってんだよ。そのせいなのかは知らないけど、一般客の男共が色めき立ってる。
 んで七人の小人の家に居候する白雪の元に、魔女に扮装した継母が毒入り林檎を食わせて死んでしまったところに王子様役の野口さんが現れてキスして白雪目覚めて大円団で終了……って感じ、ただ俺誠の芝居にハラハラしてストーリーどころじゃなかったよ。
 もちろん下手くそなのは承知で見てたんだけど、初めて会った日の事とか、中学時代に色々あってしょっちゅう泣いてた頃の事とか何故か思い出されて俺一人多分違う感動をしてたと思う。ホント良かったよ、水の合った高校に入って友達にも恵まれて……このクラスの団結力は舞台上からも伝わってきた。
 俺は終演して明るくなってから後方を見るとおじさんとおばさん感激して泣いちゃってるよ、ハンディカムの操作も結局綾姉さんに任せちゃってるしさ。んで勇が二人の事なだめるのに苦労してるみたいだから、お節介を承知で挨拶してこようかな?何となくだけど俺と似たような見方してたと思うんだ。
 「俺家族と合流するわ」
 俺は隣に居る輝に声を掛けて席を立った。
 「うん、僕もそうしようと思ってたとこなんだ。颯天は彼女と会うんでしょ?」
 おぅ。颯天が頷いたのを見てから二人と別れて小田原一家と兄夫妻の所へ移動すると、おばさん嬉し泣きでおじさんと抱き合っちゃってるよ。勇はもうお手上げみたいで俺に向けて首を振ってきた。
 「気持ちは分かるんだけど、家に帰ってからにしてほしいよ」
 「まぁ良いじゃないか、親ならではの思いがあるんだって」
 とは言っても勇はモロ思春期、恥ずかしさもあるよな。
 「この後兄ちゃんの所行くんだろ?そんな顔見せたら心配掛けるだろ?」
 「それもそうだな……ホラ、涙吹いて」
 おじさんはおばさんに寄り添ってハンカチで目元を拭ってる。ホントいつ見ても仲良くてまさに理想の夫婦像だな、兄夫妻もこうなれる様目指してるみたいだけどまだちょっとだけ負けてるかな?おばさんは鏡を取り出して目元を気にすると、トイレに行くと言って席を立った。綾姉さんも席を立って、勇にハンディカムを預けておばさんに付いていく。
 「誠が学校行事であんなにイキイキした姿見せたの初めてだったから……人目も憚らず興奮しちゃったよ」
 「分かります、俺も途中から芝居どころじゃなくなってました」
 おじさんは俺に笑顔を向けて頷いてる、多分学校での嫌な事を俺に打ち明けてる事勘付いてらっしゃるんだろうな。
 「この後一緒に行こう、誠の所へ」
 「是非。波那ちゃんたちはどうする?」
 「僕はこの後急遽同窓会なんだ、当時のクラスメイトに会ったら懐かしくなっちゃって。星哉は実家へ行くんだよね?」
 「あぁ、早苗サナエさんとるりかの子守りだよ。麗未レミさんたまには夫婦だけで過ごしたいんだと」
 兄さんは波那ちゃんのご実家に行くんだな。因みに早苗さんは波那ちゃんのお母さん、麗未ちゃんは双子のお姉さんなんだ。るりかは麗未ちゃんの娘で先月末一歳になったばかり、夫の大輔ダイスケさんは酒造メーカーに勤務しててこの四月から松山で単身赴任中なんだ。嫁と娘恋しさにほぼ週末毎に帰ってきて家族サービスしてる良いパパっ振りなんだよ。俺の周囲は不思議と仲良しカップルが多くて自然と結婚願望が強めだったりする、と思う。
 ってな訳で俺は小田原一家にくっついて誠の顔を拝みに行くため、保育科の校舎に向かった。

 お芝居はどうにか無事に終了した僕たちは予想以上の集客と手応えに皆浮き足立っています。僕も頭がフワフワしていて思考はまともに働いておりません。すると継母役の関川友奈セキカワユウナさんが僕の所にやって来ました。
 「まこちゃん、友達来てるよ。○○高校の男の子」
 伽月君かな?そう思った僕は、知り合いだと思うと告げて外に出ると、彼ではなく輝君でした。
 「お芝居お疲れ様、良かったら受け取って」
 輝君はとっても可愛い花束を差し出してきました。僕はちょっとためらいましたが、彼の厚意が素直に嬉しくて、ありがとうと言ってそれを受け取りました。
 「少しだけ良いかな?」
 僕は誘われるまま外に出て人気の少ない所に移動します。僕の先を歩いていた輝君はちょっと固い表情を向けてくるので、緊迫した空気が僕たちを包みます。
 「単刀直入に聞くね、伽月とはどんな関係なの?」
 え……?どうしてそんな事を聞いてくるのか、僕には理解出来ませんでした。
 「友達だよ」
 「本当にそれだけ?君たちちょっと特殊っぽいから」
 そう見えてるんだ……確かにちょっと密な感じに映ってたのかな?でも彼恋愛感情の有無を聞いてる、んだよね?きっと。
 「そんな風に見えた?」
 「うん、伽月が羨ましくてね。僕君に一目惚れしてるから」
 ……えっ?言い方は悪いですが冗談にしか聞こえません。嫌われる事はあっても好きと言われる事なんて一度も無かったんです。ましてや輝君は美青年、ひょっとしてからかわれて……ないよね?見た感じ真面目に言ってくれてる様に見えるし……僕どう答えれば良いんだろう?
 「返事は急がないから、伽月と何も無いなら僕と付き合う事考えてほしいんだ」
 それじゃまた。輝君は綺麗な笑顔を見せて去っていきました。僕は大きな宿題を突き付けられた気分になって、終演直後の高揚感は見事に払拭されてしまいました……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

処理中です...