どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

…秘密が増えていくものなのか?…

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 文化祭初日を終えて僕はもうヘトヘトです、ご飯も喉を通りません。お母さんは少しでも良いから食べなさい、って体を気遣ってくれますが、お父さんが気を利かせて部屋で休みなさい、と言ってくれました。
 「お腹空いたら降りといで、うどんかお粥くらいなら食べられるでしょ?」
 「うん、そうする」
 僕は皆にお休みなさい、と声を掛けて部屋のベッドに入りました。相当疲れていたんだと思います、結局僕は早朝までぐっすりと眠りました。

 初日でやる事を終えている僕たち保育科一年三組の面々は思い思いに自由行動、ちょっと起きるの早すぎたけど、睡眠チャージのお陰で僕はすっかり復調してます。
 今日もひかりちゃんと行動中、僕たち基本的にペアになる事も多くて一時期は看護科の男子生徒に睨まれていましたが、彼女も僕より身長が高いのでカップルに見えません。最近は颯天君と下校する事もあって恋人がいるのも浸透し、何故か慰めてくる勘違い君も居たほどです。
 「今日は僕のワガママに付き合ってもらって良い?」
 僕は昨日渡された氷泉のクラスの出し物『執事カフェ』の入場券を見せました。
 「良いよ、実は私も持ってんだぁ。部活の先輩に頂いてたの」
 「良かった、一人で行くの勇気が要って……」
 「だよねぇ、先輩のクラスだしさ。じゃあお昼前に行こうよ、出し物には珍しくランチあるんだってさ」
 うん。僕たちはそれまでの間三年生のフリマを見たり、前評判の高かった看護科二年一組のお芝居を観て我が校の文化祭を満喫中です。

 昨日は誠の学校で行われた文化祭を観に行った俺は、今日は午前中だけ整体院でアルバイト、昼からは部活動を終えた輝と昼飯食って図書館で勉強する事になってる。普段ならその手の約束事は前もって予定してるけど、珍しく今朝になって電話が掛かってきて急遽そういう事になったんだ。
 バイトを終えて外に出ると輝は整体院が入店してる雑居ビルの一階入口前に居た。今日は何となく雰囲気が違う、ほぼ毎日会ってる奴なのにちょっとした緊張感が走る。
 「よぉ、部活もう終わったのか?」
 「うん……悪いね、急に誘ったりして」
 「良いよ、昼からは予定無かったんだ」
 俺たちは取り敢えずその場から離れて飯処を探す。輝は子供の頃から両親揃ってプロの料理人の手料理で育ってるせいかファーストフードを好まない。それで味覚と嗅覚が肥えてて店選びにも時間をかけるんだ、そのお陰で奴との外食はハズレ無し。
 「ん~、この辺りよく知らないんだ……でも悪くはなさそう」
 只今輝アンテナ発動中、ってか。この辺ビジネス街だからサラリーマン御用達の大衆食堂が多いんだ。ただ日曜日に休業してる店もあって所々シャッターが閉まってる。そう言えばこの辺り兄夫婦の職場が近いんだ。
 「そこちょっと行った所におばちゃん五人組の大衆食堂があるんだ、兄夫婦が美味いって言ってた。タクシーの運ちゃんに人気の店らしいから営業してんじゃないか?」
 「おばちゃん五人組?あぁ、聞いたことある」
 行ってみよ、輝の歩く速度が速まってあっという間にその店の前に到着する。店の名前は『娘食堂』。輝の足が止まり、店内から漏れる匂いに満足そうな笑みを浮かべて頷いた。
 「ここ良さそう、値段も良心的だしね」
 俺たちは”元“娘たちが運営している大衆食堂に足を踏み入れた。

 いらっしゃーい。おばちゃんたちが作り出してる店内の雰囲気は高校生の俺たちにも安堵を感じられる親しみ易さがある。子供の頃から女っ気の無い環境で育ってる俺にはお母さんとかおばあちゃん(はちょっと失礼か)がいる家庭的な温かさがあって俺は一発で気に入った。
 「こんな若いお客さん珍しいね、奥の連中色めき立っちまって仕事になんないよ」
 高校生かい?おばちゃんは輝の制服姿で俺たちを十代と判別したみたいだ。
 「はい、僕たちこの辺詳しくなくて」
 「そりゃそうでしょ、ここビジネス街だからオッサンしか来ないよ。ご注文は?」
 俺たちはメニューを開く事無く日替り定食を注文した。輝も俺もこういう時あまり悩まない、颯天は悩むと両方頼んであっさり完食するタイプで、誠は延々悩んで更にやめた方をいつまでも未練がましく覚えてるタイプ。因みに今日の日替り定食はハムカツ定食、お財布に優しい五百円♪
 「五百円って安いな」
 「うん、匂いだけの感じだと倍の値段取っても文句言われないクオリティだと思うよ」
 注文してから五分ほどで俺たちの前に日替り定食がやって来る。学校の食堂でもこんなに早くない、さすが時間と闘うサラリーマン御用達のお店だ。俺は妙な感心をしながら早速食事にありつく、うわっ、激ウマ♪
 「早い、安い、美味い。完璧な三拍子だね」
 輝は目の前の食事を美味しそうに食べてる、コイツ食は細めだけど美味そうに食うんだよ。ここの店相当気に入ったと見た、きっと通い出すぞ。
 「この店通おうかな?おばちゃんたち良い腕してるよ」
 「言うと思ったよ、でも確かに美味いや」
 今度誠に教えてやろ♪と思ったその時、輝が伽月、と神妙な声で俺の名前を呼んできた。
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