どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

…秘密と隠し事の境界線…

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 「良かったぁ、混み始める前に入れて」
 昨日も大盛況だったらしいよ。僕たちは看護科二年二組の出し物『執事カフェ』にいます。テーブルはモロ教室の机ですが、とっても可愛いテーブルクロス、椅子にもお揃いのデザインのクッションを敷いてあってなかなか丁寧に作り上げられています。噂によると出し物部門では優勝候補になっているそうで、志方さんの美青年振りと氷泉の接客が人気を二分してるとか……。
 「私はいつぞやの印象でしかないけど、結構な人気者らしいよ」
 ひかりちゃんの言う『いつぞや』は先月昼食中に僕を拉致った日の事だと思います、その時ファーストキスを奪われたので嫌でも覚えてますが、よくトラウマにならなかったな、と我ながら不思議なんです。
 「僕もそれしか無い……」
 「だよねぇ。結構な節操無しだけど恨まれないって部活の先輩も仰ってたの、不思議と憎めなくていざって時の統率力はカリスマ性すら感じる、って」
 「人って見掛けじゃ分かんないもんだよね、僕にはド変態にしか見えなくて……」
 だろうねぇ。ひかりちゃんは僕を見て笑ってます。彼女はこの事を知ってます、まんまと誘導尋問に引っ掛かっちゃいました……。
 「きっと可愛い子が好きなのよ、まこちゃん掌サイズで小動物みたいじゃない」
 「小動物……それ絶対褒めてないよね?」
 「私的には褒めてるよ、だって外国の子供みたいで可愛いなぁ、って入学式の時思ったもん」
 「可愛い?僕が?」
 ひかりちゃんみたいな美少女が僕のルックスを褒めてくれるなんて夢にも思っていない事です、だって僕チビでサル顔で色黒だよ?
 「うん、まこちゃん超可愛いよ。私が欲しいもの全部持ってるよこの子って、出席順も近いし何とか仲良くなれないものかと……」
 そうだったんだぁ……僕もひかりちゃんに対して似たような感情持ってたんだよね。色白でお人形さんみたいで見た目も性格も良いなんて、と尊敬の念すらあったもん。
 「お互い無い物ねだりだったみたいだね、僕ひかりちゃんを見た時、非の打ち所が無いってこういう事なんだ、って思ったもん」
 「ホントに?私見た目で結構いじめられたんだよ、小学生の頃。中学でも尾を引いて付けられたあだ名が『貞子』もしくは『お岩』、もう幽霊扱いよ」
 彼女は暗いはずの過去を明るくさばさばとカミングアウトしています、僕も中学時代は似たような感じで、『媚び男』と言う嫌なあだ名を付けられてました。
 「僕も……くせ毛なのにパーマかけてるとか、地黒なのに日サロ行ってるとか変な言いがかり付けられて……」
 「ホントそう言うの嫌になるよね、中学生がそんなとこにお金かけられるはず無いのにさ。何でまことしやかに拡散されるのかがよく分かんない」
 彼女のメンタルの強さにはいじめられた経験が大きいと思いますが、昨日見た松戸さんとの関係も支えの一つになってるのかな……?
 「あのさ、松戸さんとは知り合って長いの?」
 「うん、母親同士が同級生で物心付く前から一緒に育ってる感じ。結婚させようとか考えてたらしいけど、優也君はゲイだし私はデブ専で恋愛感情で引き合う事が無かったのよ」
 「いじめられちゃうと学校の友達って出来にくくなるでしょ?そういう時松戸さんの存在って……」
 「確かにありがたかったなぁ、歳は二つ違うし性別も違うけど、学校とは別の所に居る友達って自分を純粋に見てくれるから……まこちゃんにとって畠中君がそうなんじゃない?」
 うん。僕は学校でいじめられていようがゲイである事をカミングアウトしようが、ずっと変わらず友達でいてくれる伽月君の存在は僕の人生のオアシスです。
 「それが恋の足枷になる事ってあった?颯天君に限って言えばそれは無いと思うけど」
 「昔はね。優也君変にイケメンだから誤解されちゃうの。『ちゃんと話せ』とは言ってくれてたけど、それはそれで信じてもらえなくて。その点颯天君は『なら紹介してよ』って、彼そう言うの気にしないみたいでそれも嬉しかったなぁ」
 今じゃ二人仲良しだよ。ひかりちゃんは嬉しそうに話してくれました。僕もそういう人見つけよう、輝君ならきっと……僕は彼とちゃんと向き合おうと考え始めていました。

 「伽月にとって誠君ってどんな存在?」
 「へ?どうしたんだ急に」
 俺は調子よく進んでた食事の手が止まる。どうと言われても……。
 「フツーに友達だよ、学校のって訳じゃないからお互い色んな事話し易かった分、多少密に見えなくはないらしいんだけど」
 「うん、そうだね。颯天もそんな事言ってたよ」
 ただね。輝は箸を置いて俺の顔を真剣に見つめてくる。コイツの言いたい事は大体分かったよ……俺も食事を中断して輝の顔を見返してやる。
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