どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

成長を見せる親友が……

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 五時限目終了後、俺は誠の長いメールを読みに屋上に居る。普段は立入禁止なんだけど、今日は警備員さんが来てるからそれが嫌でなければ利用出来るんだ。
 『おはよう、今起きました』
 書き出しの文面と共に眠そうにしてるイラストがスタンプされてる。芝居の後に教室に寄ってくれてありがとう、と言う礼と練り歩きはかなり疲れたと書いてあった。
 『人生でこんなに人に囲まれたのは初めてです。好意的なものなのは嬉しかったのですが、如何せん不慣れな状況で……』
 ……相変わらず文面が堅いよ、知らない人からプレゼントとか花束を貰って良いものかと戸惑ったみたいだけどアイツの嬉しさが文字だけでも十分に伝わってくる。おじさんとおばさんも喜んでたみたいだ。
 『そのお芝居は一年生ながら二位に輝きました。本当ならクラス委員が表彰を受けるのに、気を利かせて僕に受け取らせてくれたんです』
 初めての経験で緊張しました、か……普通そんな事まで報告しないのによっぽど嬉しかったんだな。
 『昨日は一日文化祭を楽しむ事が出来ました。浅元ひかりちゃんと先輩のクラスのカフェで一緒にランチしました』
 で、高校生の料理とは思えぬクオリティのランチプレートの写真を添付してきてる。う、美味そうだけど昨日のやつなんだよな……。
 『きっと伽月君の胃袋では少ないかも』
 ……余計なお世話だ、俺はケータイ相手にムッとする。昨日その時間帯は『娘食堂』に居たんだっけ、あそこ美味かったな♪返信の時に教えてやろ。
 『先輩のクラスのカフェ』ってのがアイツのファーストキスを奪った男が居るらしいんだけど、このところ手荒なアプローチはしてこないそうだ。トラウマになってないのが不思議だ、メールにもそう書いてある。
 『ひょっとすると“アレ”の効力が発揮されてるのでしょうか……?』
 “アレ”?……って何だ?俺は一人頭を悩ませる。昨日から何やかんや考え事してる状態だから思い出せなかったんだ。まぁ、返信する時に訊ねてみるか。メールにはまだ続きがあって、この代休を利用して絵本の構想を練ろうと大型雑貨店に行こうと思う、と書いてある。
 『良かったら買い物付き合って欲しいんだけど』
 むっ、まさかとは思うけどこの展開……。
 『荷物持って帰るの手伝って欲しくて』
 ……やっぱりか、アイツチビで非力だからな。輝に頼めよ、自宅近いんだから。とは思ったが、性格考えたらまだハードル高いかぁ。しょうがない、とそれに関する了承だけを返信して、授業に間に合うように屋上を出て教室に戻った。

 ……ら、俺の席に光畑が座っていて輝と仲良く談笑中。この二人の間に恋のライバルという緊張感は全く存在しない。まぁ『仲良き事は美しきかな』なんて言うし、昼休みに顔を合わせてもう気が合ってるってのも凄い縁だな、お前ら。
 「あっゴメン、席借りてる」
 「構わないよ、そのまま座ってな」
 俺は猛の席に座ると、遵斗からさっきまで田丸がここに居た事を聞かされる。
 「悪い、面倒な事になっちまって」
 「畠中のせいじゃないよ。ただ昼休みのメール?『あれ絶対お兄さんじゃない』って変に勘ぐってやがってさ」
 どうでも良いだろそんな事。田丸を完全に毛嫌いしてる遵斗は嫌そうな顔して毒づいてる。それにしても良い勘してやがる、あの男……。
 「いずれにせよ、あの過干渉は頂けないよな」
 まぁな。俺は一つため息を吐くと教室に戻ってきた颯天に笑われる。
 「変なのに好かれると気苦労が絶えないな」
 同情するよ。颯天の奴、他人事だと思って随分と呑気そうじゃねぇか……ってそらそうか。
 「『同情するなら金をくれ』」
 「は?何だそれ?」
 「昔流行ったテレビドラマの名台詞だとさ、今となっては親世代じゃないと分かんないらしいけど。俺も誠のお母さんから聞いた事があるだけでどんなドラマなんだか……」
 へぇ。なんて話をしてるとチャイムが鳴り、担任の史生谷先生が入ってくる。つまりは六時限目は地獄の数学にござんす。六月に入ってるからもうじき期末テストか……、俺前回赤点取ってるからきっとスパルタ補習が待ってるはずだ。
 「授業に入る前に一つ連絡事項がある、井口イグチ神崎カンザキスミ、畠中、松尾マツオ宮本ミヤモト結嶋ユイジマの七人は今日もしくは木曜日に補習を受けるように」
 うわぁ??、やっぱり来たよ……普段はむしろ温厚で話の通じる方なんだけど、数学となると話は別な様で、この前の補習も恐ろしくて終わる頃にはグッタリだったんだからな。ってか俺今日駄目だったわ。
 「先生、今日は用事があるんで木曜日でお願いします」
 「そうか。畠中は木曜、と……お前には出来れば両日参加してほしいところだがな」
 先生の発言に笑いがおこる。まぁ俺当てられてちゃんと答えられた試し無いからな、相当な数学音痴なのはもうクラス皆にばれちまってるんだ。
 「デートかよ?畠中」
 「だと良いんだけど違うよ、残念ながら」
 「コラ、私語はそこまでだ。今日は一時間みっちり練習問題を解いてもらう、ここに問題出すから出席順で六人ずつ前に出ろ」
 ……こうしてスパルタ史生谷の本領発揮、出す問題出す問題得意な奴でも悪戦苦闘する問題を容赦なく出しやがる。ほとんどの奴が一問目で乗り切れず、当然俺はほぼボードに向かうだけの一時間だった。
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