どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

……見えてる世界が少し変わったかも

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 「あの、ウチの弟に何かご用でしょうか?」
 あっ、お姉ちゃんのお出ましです。すると案の定ナンパ女二人組はお姉ちゃんの頭のてっぺんから足の先まで凝視しています。
 「ど、どちら様……?」
 「この二人の保護者ですが、未成年相手に何されてんです?」
 まぁそうだよね、僕の保護者と聞いてこんな大女が来ると思わなかったんじゃないかな。今日は女性らしくしてるけど何気に身長百七十センチ以上あって筋肉隆々ですからね。
 「あ……私たち帰ろうか……」
 二人組は取り繕った笑みを浮かべてそそくさと散って行きました。お姉ちゃんは喉が乾いたと僕の隣に座り、オーダーを取りに来た店員さんにアイスコーヒーを頼みました。
 「伽月、あんたそれで足りるの?」
 お姉ちゃんは既に空になってるチョコレートパフェのグラスを見ています。もう食べちゃったの?
 「ん??、もうちょい食いたい」
 だろうね。お姉ちゃんは近くに居る店員さんを呼び、追加注文良いですか?と訊ねてから伽月君の方を見ました。
 「決まった?」
 「あぁ、イチゴパフェのキングサイズ」
 「えっ!?」
 どこが『もうちょい』なの?さすがにそこまで払えないよぉ!
 「お姉ちゃあん……」
 「分かってるわよ、その伝票もよこしなさい」
 助かったぁ……僕は支払う予定だった伝票をお姉ちゃんに手渡します。
 「何ならもうちょっとウロウロして夕飯も外で食べる?」
 「もう!お父さんもお母さんも居ないと思って……勇と晋は居るんだからね」
 「だったら一旦家帰って二人を連れ出せば良いじゃないの」
 「昨日お父さんが食料品の買い出ししてるの忘れたの?夕飯は僕が作るっ!」
 「分かったってば、夜勤明けでクタクタだから今日は手伝わないよ……伽月、あんたこの後どうする?」
 伽月君は再び球体を取り出していました。随分と気に入ってるみたいだね、それ……。
 「……誠の飯食ってから帰るわ、波那ちゃんに連絡しとく」
 そう言って球体をテーブルに置くと、ケータイをいじり始めました。それからほどなくアイスコーヒーとパフェが運ばれてきて、今度はパフェに夢中になってました。

 「久し振りだよね、まこ兄ちゃんの晩御飯」
 お姉ちゃんに送ってもらって帰宅した僕は、家でまったりする暇も無く台所で夕飯の支度中。お姉ちゃんはお風呂、伽月君は勇と勉強中です。
 「晋、宿題は?」
 「終わってるよ、それとね、週末隼人ハヤト君連れてきて良い?」
 「土曜日なら良いよ」
 分かった。晋は嬉しそうに頷きます。隼人君と言う男の子はお隣さんに住んでいて、産まれた時からずっと仲良くしてるんです。彼は一人っ子なので、早帰りの土曜日は家で晋と勉強したり遊んだりしています。クラスが違うので平日はなかなか一緒に居られないってこの前隼人君ボヤいてたんだよね。
 「またおやつ作ってよ、文化祭終わったんだから良いでしょ?」
 「うん、良いよ。久し振りにどら焼作ろうか?」
 約束だよ。晋に指切りを要求され、兄弟間での契約完了。この可愛さがいつまで続くのかな?元々所謂『素直で明るい』性格だから完全には無くならないと思うけど、その分反抗期がどうなるのか考えるだけで恐ろしい……。
 晋は僕の心配をよそにテレビを見始めました。ニュースでも見るように……はなってません、最近深夜にやってるアニメを録画して今の時間帯に見る事が多いんです。萌え系のものにでもハマった?かと思ったら学園スポ根ものでした、お兄ちゃんひと安心。
 予定外の来客とは言え、お父さん今日分だけの買い出しって言ってた割にかなり買い込んでる。食べられる可能性の低い刺身もあるし……レタスとラディッシュがあったのでちょっと気取って?カルパッチョを作ってみました。最近お母さんが美味しいドレッシングを頂いてきたのでそれとマヨネーズをかけて。
 オーブンの中ではピザを焼いてます、生地からちゃんと作ってるんだよ。シンプルにトマトソースにチーズにバジル、何気にこれが一番美味しいんだよね。んでお鍋ではレタスとベーコンのコンソメスープ、パスタの準備も万端だよ。梅干しと大葉の冷製パスタ、これくらいは作っておかないと成長期の僕たちと大食漢の伽月君のお腹は満たされないんです。最近勇の部活動も本格始動して、毎日お腹を空かせて帰ってきます。お父さんの様にはまだまだいかないけど、僕なりに張り切ったから思う存分食べてほしいなぁ。
 「兄ちゃん、久し振りに本格的じゃない」
 「うん、折角の代休だから」
 「手伝うよ、何したら良い?」
 「じゃあ冷蔵庫のパスタ盛り付けて」
 このところ勇とあまり話せなかったのですが、文化祭も見に来てくれて少しずつ会話も元に戻ってきてます。僕の受験で気を遣ってくれてると思ってたけど、案外去年が反抗期だったのかな?お父さんとお母さんも、性格上の『一歩退く』どころか参加してこない態度にちょっと困惑気味だったから。
 それから少し遅れて客人とお姉ちゃんの登場です。お姉ちゃんは早速冷蔵庫を開けてお酒を物色中、客人は僕の目を盗んでつまみ食いを目論み中。
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