どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

……手放すと楽になりました

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 で、デート……デートって何するの?僕は恋人居ない歴イコール年齢だし、きっと普通の子よりその辺りは疎くてピンときません。その点伽月君は何人かとお付き合い経験もあるし、まぁ……いわゆる童貞ではない、のでちょっと知恵を拝借しようかな?
 「あのぅ……つかぬ事を伺いますが」
 「なんだ?その喋り口調は。まぁ良いや、何だ?」
 「……デートって何するの?」
 へ?伽月君はそんな初歩的な質問されるなんて思ってなかったんだろうな、キョトンとして僕の顔を見つめています。
 「好きになった相手と出掛けたりとか、一緒に遊んだりとか……友達としてる事とそう大差は無いよ。そこに性欲というオプションが付くんだけど」
 「で、何話せば良いの?」
 「普段通りで良いって、そんなとこに意識向け過ぎんな」
 へぇ??。皆もっと違う感覚でいるのかと思ってた、どこかにメモしておこうかな?
 「そんなのメモなんて要らねぇよ、ってかむしろ録るな」
 伽月君はテーブルの上でばたついている僕の手を取り押さえます。どうして?そう訊ねる僕に向けて肩をすくめてきます。それよりメモを録ろうとしてたのよく分かったね。
 「頭で学ぶ事じゃないからだ、経験していくしかないんだよ」
 「そういうものなの?」 
 僕は確認を取るように伽月君の顔を見ます。
 「そういうモンだ、だから学ぼうとすんなっつってんだろ?」
 ……なんて話をしているといきなり部屋のドアが開きました。勇が夜食のおにぎりを持って立っています。
 「……何やってんの?」
 「それ聞く前にノックしてよ」
 「何度もしたよ、いつまで経っても気付いてくれないから開けちゃった」
 ……そうだったの?ゴメン、全然気付かなかった。
 「ひょっとして入るのマズかった?」
 「何で?」
 「だって手握って見つめあってんだもん、新たな恋でも始まったのかと……」
 あっ!僕は慌てて伽月君の手から自分の腕を抜き取ります。そう見えても仕方無いシチュエーションだったかぁ……。
 「これだとそう見えたか」
 うん。勇は伽月君に頷いてみせています。この前もそうだったんだけど、何で否定しないの?
 「兄ちゃん、伽月君と付き合いなよ。僕は歓迎するよ」
 「おぅ、そうか。なら考えようかな?」
 伽月君はテキトーに調子良い事言ってます。まぁそんな気さらさら無いから言えるんだろうけど。
 「考えなくて良い、否定しなさい」
 「何だよ、ノリ悪いな」
 「ノリでそういう事言わないで!僕免疫無いんだから」
 こんな状況下だとときめきもしないけど、雑貨店でのあの顔には本当にドキドキしちゃったんだよね。ちょっと星哉君に似てて……あっさりと撃沈した初恋を思い出してしまいました、相手が波那ちゃんだもん、勝てる訳がない。
 それにしても彼星哉君に似てきたなぁ、子供の頃は写真で見せてもらったお父さんにそっくりだったんだ……ちょっと感傷に浸りすぎちゃった。僕は我に返ると勇が伽月君と何やら神妙な顔付きで話しています。
 「僕冗談のつもりで言ってないからね」
 あれ?何か空気が緊迫してない?な、何があったの?
 「分かってるよ、真面目に考えるからさ」
 「ホントに?この際だから約束してよ」
 あぁ。伽月君かなり真顔だよ、さっきまでテキトー君だったのに……勇は伽月君の返事に納得したみたいで、おにぎりの乗ったお皿をテーブルに置いて部屋を出て行きました。
 「さっき勇と何の話してたの?随分と真剣だったけど」
 「男二人の内緒話なんだ」
 そう……それなら詮索しない方が良いよね、勇が特定の人に内緒話なんて珍しいな。隠し事がある時は誰にも口を割らないのに。伽月君はそれ以上の事は語らずに再び画用紙に向かって真剣に何かを描いています。
 「クーピー使うぞ」
 「うん。良いよ。さっきはゴメン、新品も必要な色なら使って良いから」
 「じゃ遠慮なく、紅色使うぞ」
 うん。僕も買ったばかりのアクリル絵の具を開封して絵本のイラストのイメージを思うままに描き出していきました。
 そう言えば私立高校の入試だった日に出会った子猫、一体どうなったのかな?真冬の寒い中用水路にはまって出られなくなっちゃってたんだよね……んでその子を一人で助けようとしてる男の子を手伝ってたら試験会場に間に合わなくて、担任の先生に叱られてしまったんです。
 僕はその時の子猫を描いてみましたがパンダにしか見えません。パ、パンダ模様だったんだよ、ただ僕の画力だと尻尾の長いパンダ……僕は子猫のスケッチに悪戦苦闘してる間に伽月君のお絵描きは完成した様です。
 「描けたの?」
 おぅ。彼は自信満々に作品を見せてくれました。相変わらず凄い画力、ただ……。
 「何で心臓なの?」
 「模型作りの下絵だよ、ある程度はちゃんとしたの描いとかないとな」
 ……いや、だからってそれはリアル過ぎるってば。でもその画力欲しかったなぁ、僕は今にも動き出しそうなその絵を見つめていました。
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