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やっとこさ本編
…何てこった…
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『キスの中で一番好きな味って誰だった?』
頭の中で勇の質問がグルグルと回ってる。俺は誠の自宅を出て帰宅途中の電車に乗って自問自答状態だ。夕飯前に聞かれた事だからもう勇には答えたんだけど、実は咄嗟に嘘ついちまったんだ。
『う~ん、強いて言えば前カノかな』
確かに歳上で芸能活動なんかやってるレベルの美人だし、ご家族も美容系の仕事をされてる関係なのかセンスの良いフレグランス使ってたんだ。でもそれって本人の香りじゃないだろ?彼女とはもちろんセックスだってしてるけど、とにかく何と言うか……化粧品の使い方が上手くてほぼ必ず何らかの香りを纏ってたんだ。それで本来の体の匂いってのがよく分からなくてさ、勇の意図した答えになってない様な気がしてその質問が頭から離れないんだ。
『キスの味』……まぁあけすけに言ってしまえば直前に食べてた物の影響がでかい。あとぶっちゃけ歯磨き直後のミントな感じが多いと思うよ、やっぱり気にはなるだろ?特に女の子だとさ。だから体を寄せ合った時の微かに香る匂いの方が勇の質問の答えに近いのは間違い無いと思うけど、本当に純粋な答えとなると……誠なんだよ。
誠の持ってるあのふんわりとしたホットミルクみたいな甘い香り、何となくだけど死んだ母親の優しさを思い出すんだ。俺には母親の記憶を引き出せない、ただ誠の体の匂いが唯一それを思い出させてくれるんだ。記憶として思い出せなくても、遺影でしか顔を知らなくても、ちゃんと母親から愛情を貰えてたって安心感ももたらしてくれる。いくら兄貴から話を聞かされても実感沸かないしさ、ずっと入退院を繰り返してる人だったらしいから写真も残ってないんだよ。だからって事もないけど誠の存在は俺の癒しだし、形はどうあれ一生傍にいて欲しい、手の届く所に、せめて目の届く所に。
輝の事、どうするんだろう……?そんな事ばっかり考えてると危うく降り損ねるとこだった!俺は慌てて立ち上がり、電車を飛び降りた。
伽月君が家を出て、キッチンに立って洗い物をしてるところに勇がひょっこりやって来ました。
「手伝おうか?」
「大丈夫、もう終わるから」
そう。勇は風呂上がりだったみたいで、冷蔵庫から麦茶を取り出してます。食器棚からグラスを取り出して注ぎ入れると、ダイニングでお茶を飲み始めます。
「あのさぁ、ぶっちゃけキスした事ある?」
「へっ!?な、何?やぶからぼうに」
「いや、単なる興味本位で聞いてみただけ」
勇はそう言ってニンマリと笑います、こういう時アイツは何か企んでます。
「……まだしたこと無い」
当然氷泉のそれは数に入れてやりません。この前のはおまじない的な物だし……ちゃんとしたキスってやっぱり無いなぁ……。
「やっぱり、その嘘はもう通用しないよ」
えっ……?もしかしてあの時の事言ってんの?だってアレはキスとしてカウントしないって伽月君と話し合って……ってか何でお前が知ってんの!?
「まさかあの時……」
「それに関してはゴメン!その現場覗いちゃったんだ。ただ誰にも言ってないよ」
勇は顔の前で手を合わせます。
「そこは疑ってないから……」
「あっ、でもさっき伽月君には言った」
「良いよ、彼は当事者だから。でも何で三年も前の事を今になって?」
「何かさ、伽月君と兄ちゃんの関係ってそろそろてこ入れが必要なんじゃないかな、って」
てこ入れ?勇は一体何が言いたいんでしょうか?僕にはさっぱり分かりません。
「うん、これまでの関係をちょっとシフトチェンジしてみたら?」
「シフトチェンジ?」
「そっ。ただでさえ普通の男友達的な感じじゃないんだからさ」
「そうかな?普通の男友達だと思うけど」
「普通の男友達はキスなんてしない!例え話し込んでたにしても男二人シングルベッドで寝ない!」
「だって眠くなったら動くの面倒臭いじゃない」
「恋人でもない相手と体寄せ合うなんてむさ苦しいだろ?」
「まぁ……でも伽月君は友達だもん、そんな風に思った事無いよ」
僕は正直に言ってるんだけど、勇は僕よりも大きな目を一の字になるまで細めて疑わしげにしています。この顔する時は確実に僕の言葉を信じてません。
「何で信じてないの?僕正直に話してるよ」
「発言に無理があるから。ってか二人付き合えば?」
頭の中で勇の質問がグルグルと回ってる。俺は誠の自宅を出て帰宅途中の電車に乗って自問自答状態だ。夕飯前に聞かれた事だからもう勇には答えたんだけど、実は咄嗟に嘘ついちまったんだ。
『う~ん、強いて言えば前カノかな』
確かに歳上で芸能活動なんかやってるレベルの美人だし、ご家族も美容系の仕事をされてる関係なのかセンスの良いフレグランス使ってたんだ。でもそれって本人の香りじゃないだろ?彼女とはもちろんセックスだってしてるけど、とにかく何と言うか……化粧品の使い方が上手くてほぼ必ず何らかの香りを纏ってたんだ。それで本来の体の匂いってのがよく分からなくてさ、勇の意図した答えになってない様な気がしてその質問が頭から離れないんだ。
『キスの味』……まぁあけすけに言ってしまえば直前に食べてた物の影響がでかい。あとぶっちゃけ歯磨き直後のミントな感じが多いと思うよ、やっぱり気にはなるだろ?特に女の子だとさ。だから体を寄せ合った時の微かに香る匂いの方が勇の質問の答えに近いのは間違い無いと思うけど、本当に純粋な答えとなると……誠なんだよ。
誠の持ってるあのふんわりとしたホットミルクみたいな甘い香り、何となくだけど死んだ母親の優しさを思い出すんだ。俺には母親の記憶を引き出せない、ただ誠の体の匂いが唯一それを思い出させてくれるんだ。記憶として思い出せなくても、遺影でしか顔を知らなくても、ちゃんと母親から愛情を貰えてたって安心感ももたらしてくれる。いくら兄貴から話を聞かされても実感沸かないしさ、ずっと入退院を繰り返してる人だったらしいから写真も残ってないんだよ。だからって事もないけど誠の存在は俺の癒しだし、形はどうあれ一生傍にいて欲しい、手の届く所に、せめて目の届く所に。
輝の事、どうするんだろう……?そんな事ばっかり考えてると危うく降り損ねるとこだった!俺は慌てて立ち上がり、電車を飛び降りた。
伽月君が家を出て、キッチンに立って洗い物をしてるところに勇がひょっこりやって来ました。
「手伝おうか?」
「大丈夫、もう終わるから」
そう。勇は風呂上がりだったみたいで、冷蔵庫から麦茶を取り出してます。食器棚からグラスを取り出して注ぎ入れると、ダイニングでお茶を飲み始めます。
「あのさぁ、ぶっちゃけキスした事ある?」
「へっ!?な、何?やぶからぼうに」
「いや、単なる興味本位で聞いてみただけ」
勇はそう言ってニンマリと笑います、こういう時アイツは何か企んでます。
「……まだしたこと無い」
当然氷泉のそれは数に入れてやりません。この前のはおまじない的な物だし……ちゃんとしたキスってやっぱり無いなぁ……。
「やっぱり、その嘘はもう通用しないよ」
えっ……?もしかしてあの時の事言ってんの?だってアレはキスとしてカウントしないって伽月君と話し合って……ってか何でお前が知ってんの!?
「まさかあの時……」
「それに関してはゴメン!その現場覗いちゃったんだ。ただ誰にも言ってないよ」
勇は顔の前で手を合わせます。
「そこは疑ってないから……」
「あっ、でもさっき伽月君には言った」
「良いよ、彼は当事者だから。でも何で三年も前の事を今になって?」
「何かさ、伽月君と兄ちゃんの関係ってそろそろてこ入れが必要なんじゃないかな、って」
てこ入れ?勇は一体何が言いたいんでしょうか?僕にはさっぱり分かりません。
「うん、これまでの関係をちょっとシフトチェンジしてみたら?」
「シフトチェンジ?」
「そっ。ただでさえ普通の男友達的な感じじゃないんだからさ」
「そうかな?普通の男友達だと思うけど」
「普通の男友達はキスなんてしない!例え話し込んでたにしても男二人シングルベッドで寝ない!」
「だって眠くなったら動くの面倒臭いじゃない」
「恋人でもない相手と体寄せ合うなんてむさ苦しいだろ?」
「まぁ……でも伽月君は友達だもん、そんな風に思った事無いよ」
僕は正直に言ってるんだけど、勇は僕よりも大きな目を一の字になるまで細めて疑わしげにしています。この顔する時は確実に僕の言葉を信じてません。
「何で信じてないの?僕正直に話してるよ」
「発言に無理があるから。ってか二人付き合えば?」
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