どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

……僕の気持ちと言われても

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 「ところでまこ兄ちゃんの気持ちはどうなの?」
 えっ……?隼人君は弟感覚で意識してたから……つまり恋愛感情で……。
 「……考えた事無かった」
 「だろうねぇ……」
 晋は僕の隣に座って顔を見上げてきます。
 「まこちゃん、もちろん返事は急がないよ。だって僕が結婚出来るまで八年あるからゆっくり考えてね」
 「う、うん。そうさせてもらえる?」
 は、八年後だよね……つまり結婚出来る年齢は十八歳だから、僕は二十四歳になってるのか。でもその頃には隼人君きっと素敵な恋人が出来てるよ、彼優しい子だから。
 「隼人、八年って結構長いぞ。気持ち変わらない自信あんのかよ?」
 あるっ!隼人君は自信満々に答えています。
 「そうなるとお前は十八で誠は二十四だ、その頃には誠がオッサンに見えてる可能性だってあるんだぞ」
 「そんな事無いもん!まこちゃんはずーっと可愛いまんまだもん!」
 い、いや……それは自信無いよ。僕今でも別に可愛くないし。
 「ただいまぁ、何やってんの?」
 勇が部活動から帰ってきました。時計を見ると午後三時三十分、もうそんな時間になってたんだ。ん?今朝の時点では無かったはずの紙袋が……。
 「お帰り、お弁当箱浸けておいてね」
 うん。勇はキッチンでお弁当箱を開けて流し台の桶に水を張っています。
 「あれ?お父さんは?」
 「まだ帰ってきてないよ、『夕方になる』ってメールはあったけど」
 「そう。珍しいね、そんなの」
 着替えてくる。勇は自分の部屋に向かおうとしたところでようやく田丸君に気付きます。
 「あっ、すみません、気付かないで……初めまして、弟の勇です」
 「田丸礼於梛と申します、お邪魔してます」
 二人はにこやかに挨拶しています、慌ててる風な割に落ち着いている様に見えるのは何なんだろう?お蔭で一杯助けられてるし安心でもあるんだけど。
 「猫がたくさん写ってますね、飼われてるんですか?」
 「えぇ、お兄さまに助けて頂いた子猫も写ってますよ」
 「着替えてきますので後で見せて頂けますか?」
 是非。と言う事で僕は勇のお茶の準備に取り掛かります。カレーライスは……食べるかな?
 「一応温めておけよ、部活で腹空かしてるかも知んねぇぞ」
 「うん、そうする」
 勇の分のご飯くらいは残ってるから、お父さんたちの分はまた炊き直そう。少し待つと洗濯物を抱えて降りてきました。
 「何か洗うものある?」
 勇は今から洗濯機を稼動させるつもりみたいです。日は長くなったとは言ってももう四時だよ。
 「無いよ、今から洗うの?」
 「うん、時間も遅いから乾燥までしちゃうけど」
 「そっか、それよりカレー食べる?」
 うん、食べたい。勇はそう返事してから洗面所に向かいます。そろそろ追加で作ったどら焼出そうかな?伽月君が調子良く消費してるみたいだから喧嘩とかになっちゃうのもね……って言ってるそばから始まったよ……。
 「一人で三つも四つも食べんなよ、伽月ぃ」
 「うっせぇなぁ、こんなもん早い者勝ちだろうが」
 伽月君は手にしているどら焼をあっと言う間に平らげてしまいます。少しは譲ったり出来ないの?一人っ子の隼人君は取り合いに慣れてないんだよ。伽月君も末っ子だし、泰地君は歳が離れてるだけにむしろ分けてあげてたのかな?僕は作り置きのどら焼を冷蔵庫から出して真っ先に隼人君に一つ差し出します。
 「はい、今日は多めに作ったから」
 「ありがとう、まこちゃん」
 隼人君は僕の手からどら焼を受け取ると、顔を近付けてきてチュッとキスをしてきました。へ……?僕の頭は麻酔が掛かったようにぼんやりとして大皿を落としそうになり慌てて持ち直します。
 「は、隼人君……?」
 「あら可愛い」
 「むはっ!?」
 ……晋、さっきから奇声上げてるけど大丈夫?それに田丸君、この状況案外楽しんでるでしょ。
 「はーやーとぉ、お前何ませた事してんだよ?」
 「ほっ他にお礼するものが無かったんだい!」
 「だからって恋人同士でもねぇのに何でキスすんだよ!?」
 伽月君、アナタは人の事言えないよね?僕たち恋人同士じゃないけど二度キスしてるからね、それに……。
 「キス以上の事してるくせに……」
 「余計な事言うんじゃねぇ!」
 一人言のつもりがちゃっかり聞かれてしまい、またしてもこめかみグリグリ攻撃を食らってしまいました。えーん、痛いよぉ~!
 「伽月ぃ!まこちゃんをいじめるなぁ!」
 隼人君が伽月君を何かでペチペチと叩いています。うわっ、それってハエタタキ?ホントに虫叩いてるやつだよ、それ。
 「うわっ!そんなもん振り回すな!」
 「嫌なら今すぐまこちゃんから離れろーっ!」
 「分かった!分かったって……いでぇ!」
 伽月君は慌ててその場から離れていき、隼人君は逃げる彼を追いかけます。隼人君もハエタタキを食べ物のあるリビングで振り回すのは良くない事を承知していて、もちろん本気で振り回してないし伽月君のふくらはぎにしか攻撃していません。すると隼人君の背後に人影が、その正体とは……。
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