どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

文字の大きさ
67 / 145
やっとこさ本編

……やっぱり彼に食べて欲しい

しおりを挟む
 昨日作った桃のゼリー、ちょっと柔らかめに仕上がったのですが、味の方は問題なかったので半分は伽月君のお見舞い用に持って行く事にしました。僕は出掛ける前に波那ちゃんに通話発信します。
 『誠君?どうしたの?』
 僕は今何故か物凄く緊張してます……これまでだって大した用事が無くてもお菓子を持って行く事くらい何度となくしてるのに……自分でも分かる位に僕、変です。
 「あの……昨日ゼリー作ったので……今からご自宅に伺っても良いですか……?」
 『うん、良いよ。泰地も戻ってきてるから、待ってるね』
 ありがとうございます……波那ちゃんはあっさり了承してくれたので、僕は早速支度をしてゼリーを保冷バッグに入れて出掛けます。
 
 家を出てまずはJR駅へ。家からは私鉄の方が近いけど、乗り換えがあるのでトータルで考えるとこっちの方が早く着くんです。僕は二十分かけて駅まで歩き、三十分ほど電車に揺られて伽月君宅の最寄り駅に到着します。ここから十分ちょっと歩いて……と思ってたら、駅のロータリーに見慣れた水色の車が停車していました。
 「泰地君?」
 まさか迎えに来てくれるなんて……僕は思わずケータイを確認してしまいます。
 「送ってないよ、メール。ちょっと驚かせてやろうかと思ってさ……髪の毛、伸ばしてるのか?」
 そう、僕は高校に入ってから髪の毛を伸ばし始めているんです。重度の癖毛で、生活指導の先生が『それだけの癖毛だと長髪の方が扱い易い』と仰ってくださって。で、実際伸ばしてみると髪の毛の重みでうねりがマシになったように思いますが、ドライヤーがちょっとしんどいかな、時間かかるし。
 「うん、ある程度伸ばして縛った方が楽なんだって」
 「かもな、誠の癖毛だと」
 僕は泰地君の車に乗って畠中家に向かいます。
 「学校、楽しいんだってな。波那ちゃんの母校なんだよな?」
 「うん、クラスメイトは皆女の子なんだけど……初めて学校生活が楽しく感じる」
 そうか。泰地君は運転をしながら相槌を打ってきます。学校の事は伽月君から聞いてるみたいです。
 「文化祭でヒロインやったんだって?」
 そ、それも聞いてたんだね……恥ずかしいなぁ。
 「画像で見たけどむちゃくちゃ可愛いじゃん、誠の女装姿」
 自分ではそう思わないのですが、女の子と間違えて告ってきた人もいて、その度に男です。って訂正しなくちゃいけなくて……好意的な反応なのは嬉しかったのですが、正直かなり面倒でした。
 「そうかなぁ?僕のクラス結構可愛い子多いんだけど……」
 「まぁ良いじゃないか、出し物としてのインパクトが欲しかったんだと思うぞ」
 うん。今となっては貴重な体験が出来たと思うし、皆のお陰で僕の暗かった学校生活は一気に華やいで毎日が充実してるんです。実は僕今回のテスト結構手応えあるんだよね、学校で友達が出来ると自ずと勉強も楽しくなってくるのかな?僕これまでクラスメイトと一緒に勉強なんてした事無かったもん。
 「そのバッグの中身、ゼリーだよな?」
 「うん、昨日テレビで見たのが美味しそうで作ってみたんだ」
 「あぁ。今からの季節なら桃か?」
 スゴい、泰地君エスパーだ。
 「家に缶詰が残ってたんだ」
 「伽月に残しといてやらないとな、アイツゼリー好物だから」
 でも食べてくれるかな……?昨日は水を飲むのも辛そうにしてたから。それにあの疎外感がどうも気になっちゃって、ひょっとしたら食べてくれないかも知れないな。
 「誠?どした?浮かない顔して」
 「うん……伽月君お水飲むのも辛そうにしてたから……ものを食べるとなると……」
 「喉の痛みは大分引いたみたいだぞ、声はまだ出ないみたいだけど。今朝兄さんがサンドウィッチ持ってったよ」
 食事は摂れてるんだ……それを聞いてちょっとひと安心です。だって二人分をペロリと平らげる彼が食べ物を欲しがらないとなるとそれは死活問題なんです。
 「心配しなくても多分普通に食ってると思うよ、だから俺たちは今日のうちに食っとかないと取り分無くなるな」
 泰地君は僕に優しい笑顔を見せてくれました。そうだと良いな、だって彼に食べて欲しくて作ったんだもん……今はあまりネガティブに考えないでおこう、僕は泰地君に変な気を揉ませたくなくて、自分なりの精一杯の笑顔を返しました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

処理中です...