どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

語り部ジャック 泰地編 帰省しました

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 皆様、弟の伽月がお世話になっております、兄の畠中泰地と申します。普段は新潟で暮らしてるのでそう登場はしませんが、弟の検査入院のため一週間の休暇を頂きました。アイツ今声出ないし、誠も忙しいみたいだから(?)語り部二人にはちょっと休んでもらってここに居る間だけ俺が代役を努めます。
 伽月は物怖じしないから心配してなかったけど、誠はあがり症でウィスパーボイスだから最初は語り部なんて務まるのか?とも思ってたんだけど、何とかやってる様なんで俺の取り越し苦労でむしろホッとしてるくらいです。
 俺の自己紹介とか……別に要らないですよね?一週間経って新潟に戻ればほとんど登場しませんし、伽月の兄貴とさえ認識して頂ければ、それ以上の事は特に必要な情報も無いですからね。

 『伽月が学校で倒れました』

 昨日俺は早朝出勤で会社のオフィスに居た。体育会系のせいか事務業務は苦手なんだけど、この日に限って言えば現場の業務じゃなかった事が幸いしたとも言えるのか。でないと颯天からの連絡を受け取れなかったかも知れないし、こうやって休暇を頂けたとも限らない。
 新潟に来てから業務の半分は事務業務となっていて、体は楽なんだけど疲労感が心地良くなくてちょっとフラストレーション溜まってたところだった。
 『もう七年目だからそろそろ事務業務も覚えていこうか』
 新潟勤務になって最初に言われた上司の言葉だ。俺てっきり現場社員の補充だと思ってただけにちょっと肩透かし、事務業務覚える事なんて一生無いかな、と。正社員とは言え高卒の俺に事務業務とは……まぁ大抵は研修期間に現場に出てから事務業務覚えて営業職、ってのが大卒の出世街道ルートで、俺には無縁なハズなんだけど……世の中何が起こるか分からないな。

 話が脱線してしまいましたが、ちょっと大袈裟めに言って休暇を勝ち取り、午前中に仕事を切り上げて当日中の帰省を目指そうと支度を済ませて車移動。幸い道は空いてて夕方……面会時間スレスレで間に合った。翌日にしても良かったんだけど、可愛い(?)弟が入院したと聞かされたらさすがに居ても立ってもいられない。『検査入院』と分かってても、やっぱり顔は見ておきたい。今でこそすくすくと俺の身長をあっさり抜き去って病気もほとんどしなくなったけど、子供の頃は色白でガリガリでしょっちゅう寝込んでたんだ。それをヘタに知ってるだけに顔見るまでは安心できなかったなぁ……。

 ……で、いざ見舞いに行くと体の方は声が出ないのと気管支の状態以外はそうでもなさそうだ。喘息の再発も見た感じしてなさそうだけど、こればっかりは素人では何とも言えない。ただちょっと浮かない顔してる、体云々とは違う元気の無さが気に掛かる。正直そっちの方が心配になってきた、伽月が悩む事と言えば大概はアレだ。
 「悩み事ありそうな顔してるな」
 って探りを入れてみたら、案の定首を横に振りやがった。コイツこの手の話題になると一旦は否定するんだ、心配掛けたくないとか負担になりたくないとか考えてやがる。普段はむしろスパスパ物事決められるくせに、こうなるとグズグズするんだよ、昔から。
 「顔見りゃ分かる、俺を誰だと思ってんだ?」
 こうでも言わなきゃ口を割らない、まぁ強要する事でもないとは思うけど、伽月は自分の事となると変に我慢するところがあって、こうでもしないとアウトプットせずにストレス溜め込むんだ。それに自分のせいで俺が将来を諦めてると思ってるフシすらある、その事についてはちゃんと話してやらないとな。
 ようやっと勘念した弟はノートに悩み事を書き始めた。割とスラスラ書いてたんだけど、それをなかなか見せようとしない。多分だけど俺の勘が正しければ……まぁ見せにくいよな。
 「……」
 伽月は『驚かないか?』とでも言いたげな表情を見せてからおずおずとノートを差し出した。その内容と言うのが……。

 【誠を好きになった】

 ……やっぱり、俺からすると『遂に来たか』だ。コイツはゲイじゃないけど誠の事となると話は別だ、多分男を好きになって悩んでる訳じゃない、誠に恋愛感情を持った事に悩んでる。生涯の友でいる事をその若さで決めちゃってるだけに、それとは違う感情が支配し始めて自分の気持ちもて余してるんだろうな。
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