76 / 145
やっとこさ本編
語り部ジャック 波那編 ちょっと寄り道してきます
しおりを挟む
さてさて、作戦決行の月曜日。仕事を終えてとっとと病院に行った僕は、とある学校の前の駄菓子屋さんで秘密兵器と待ち合わせしています。秘密兵器が通ってる学校は、クラブ活動が月曜日というちょっと珍しい時間割をしてるので、今日はそれが終わると帰宅できるそうなんです。そろそろ出てくるかな……?あっ、来た来た。イガグリ頭のノッポ君、もうお分かりでしょうか?
「すみません、ミーティングで遅くなってしまいました」
そう、ここは▼▼第二中学校。ここで登場してくる中学生と言えば勇君しか居ないですよね。何故彼が秘密兵器かって?だって今僕がしようと企んでる事を何年も前から密かに企ててる張本人だからです。しかもはなから長期戦設定で行動してる、きっと誰よりも適任だと思うよ。
「大丈夫だよ、さっき来たとこだから。ところで、帰宅途中に寄り道しても大丈夫?」
「大丈夫です、大人の方同伴なら」
「そう、ならあそこに入らない?」
僕は敢えて大人の雰囲気満載の純喫茶を指差しました。勇君ちょっと怖じ気付いてます、きっと入った事無いんだろうなぁ。
「そこ、両親がたまにデートに利用してるんです」
「入った事ある?」
予想通り、勇君は首を横に振りました。
「今からちょっと秘密めいた話をするからね、ああいった所の方が都合が良いんだ」
分かりました。オッサンの僕は、ほぼ同じ身長の中学生勇君を連れて純喫茶の中に入ります。うん、静かで密談には打ってつけ、客足もまばらでお店にとってはどうなのかはこの際無視しましょう。
なんて他人事の様に言っていますが、ここは僕にとっても馴染みのお店、星哉とのデートコースの中にこの純喫茶は大概含まれているんです。もちろんマスターとも顔馴染み、茶坊主並の口の固さで僕たちは初対面の様に接します。僕はホットティーを、勇君はミックスジュースを注文して、まずは近況を訊ねてみます。
「最近部活動忙しいみたいだね」
はい。勇君がレギュラーメンバーに入れてる事は誠君からリーク済みですから。
「地区予選は無事突破しました。もうじき地区大会決勝トーナメントが控えてます」
「試合には出たの?」
「はい、ピンチサーバーで何度か。あと最後の試合は途中出場しました」
凄いなぁ、一年生で。でも小学校のバレーボール部では四年生の後半からレギュラーメンバーだったから、本人としては当然の流れって考えもあるのかな?試合経験は豊富な方だろうし。
「でも上には上がいて、一年生で一試合フル出場した奴が一人居るんですよね。負けてられないっす」
「今から焦って一番になる必要無いよ、追われる方がしんどいから」
「はい、まずは追い付く事です。三年生の最後の大会までに追い抜けば良いんですから」
ホントこの子は冷静だ、小さい頃から学校の通信簿に『落ち着きがありすぎる』って毎度の様に書かれてる、って夏海さん苦笑いしてたもんなぁ。ちょっとフワフワしてる誠君のフォローをきっちりとこなし、天真爛漫な晋君への目配りも忘れない。完璧過ぎる真ん中っ子だよ、家で言うと三兄遼に近い感じかな。
学校生活は部活動を中心に充実してるみたいでオジサンひと安心、何かね、小田原三兄弟って産まれた頃から見てきてるから親戚の子供みたいで可愛いんです。もちろん三人の姉の子たちも可愛いんだけど、今は旦那さんの転勤とかで遠方で暮らしてるから、お盆と正月くらいしか会わなくて……連絡も滅多にしないし。今近くに居るのって麗未ちゃんくらいだな、しばらくは産休中だし、今度るりかの顔見に行こうかな?
おっと、話が脱線するところでした。ちょこっと浸ってる間にホットティーとミックスジュース来ちゃってるや。
「ところで波那ちゃん、『秘密めいた話』って伽月君と兄ちゃんの事ですよね?」
さすが気付いてたね、中学一年生にして星哉よりも鋭い勘してる。まぁ三十二歳にしてあの鈍感っ振りをいかんなく発揮してる彼の方が問題あるとは思うけど……彼が空気読める様になったらそれこそつまらない男になっちゃうから。
「うん、そう。このところ誠君の気持ちの変化が顕著に表れてる様な気がしてね」
「そうなんですっ!最近兄ちゃんに牽制はかけたんですけど……」
やっぱり、勇君ちょっとずつ動いてる。伽月をけしかけたのもきっと彼だ。
「伽月とは何か話した?」
「いえ、ここ一週間は何も。ただその前にちょっと……」
「『ちょっと……』、何?」
僕は予測こそあるけれど、勇君がどんな返答をするのかじっと顔を見つめます。彼はミックスジュースを一口飲んでから僕の方に向き直りました。
「すみません、ミーティングで遅くなってしまいました」
そう、ここは▼▼第二中学校。ここで登場してくる中学生と言えば勇君しか居ないですよね。何故彼が秘密兵器かって?だって今僕がしようと企んでる事を何年も前から密かに企ててる張本人だからです。しかもはなから長期戦設定で行動してる、きっと誰よりも適任だと思うよ。
「大丈夫だよ、さっき来たとこだから。ところで、帰宅途中に寄り道しても大丈夫?」
「大丈夫です、大人の方同伴なら」
「そう、ならあそこに入らない?」
僕は敢えて大人の雰囲気満載の純喫茶を指差しました。勇君ちょっと怖じ気付いてます、きっと入った事無いんだろうなぁ。
「そこ、両親がたまにデートに利用してるんです」
「入った事ある?」
予想通り、勇君は首を横に振りました。
「今からちょっと秘密めいた話をするからね、ああいった所の方が都合が良いんだ」
分かりました。オッサンの僕は、ほぼ同じ身長の中学生勇君を連れて純喫茶の中に入ります。うん、静かで密談には打ってつけ、客足もまばらでお店にとってはどうなのかはこの際無視しましょう。
なんて他人事の様に言っていますが、ここは僕にとっても馴染みのお店、星哉とのデートコースの中にこの純喫茶は大概含まれているんです。もちろんマスターとも顔馴染み、茶坊主並の口の固さで僕たちは初対面の様に接します。僕はホットティーを、勇君はミックスジュースを注文して、まずは近況を訊ねてみます。
「最近部活動忙しいみたいだね」
はい。勇君がレギュラーメンバーに入れてる事は誠君からリーク済みですから。
「地区予選は無事突破しました。もうじき地区大会決勝トーナメントが控えてます」
「試合には出たの?」
「はい、ピンチサーバーで何度か。あと最後の試合は途中出場しました」
凄いなぁ、一年生で。でも小学校のバレーボール部では四年生の後半からレギュラーメンバーだったから、本人としては当然の流れって考えもあるのかな?試合経験は豊富な方だろうし。
「でも上には上がいて、一年生で一試合フル出場した奴が一人居るんですよね。負けてられないっす」
「今から焦って一番になる必要無いよ、追われる方がしんどいから」
「はい、まずは追い付く事です。三年生の最後の大会までに追い抜けば良いんですから」
ホントこの子は冷静だ、小さい頃から学校の通信簿に『落ち着きがありすぎる』って毎度の様に書かれてる、って夏海さん苦笑いしてたもんなぁ。ちょっとフワフワしてる誠君のフォローをきっちりとこなし、天真爛漫な晋君への目配りも忘れない。完璧過ぎる真ん中っ子だよ、家で言うと三兄遼に近い感じかな。
学校生活は部活動を中心に充実してるみたいでオジサンひと安心、何かね、小田原三兄弟って産まれた頃から見てきてるから親戚の子供みたいで可愛いんです。もちろん三人の姉の子たちも可愛いんだけど、今は旦那さんの転勤とかで遠方で暮らしてるから、お盆と正月くらいしか会わなくて……連絡も滅多にしないし。今近くに居るのって麗未ちゃんくらいだな、しばらくは産休中だし、今度るりかの顔見に行こうかな?
おっと、話が脱線するところでした。ちょこっと浸ってる間にホットティーとミックスジュース来ちゃってるや。
「ところで波那ちゃん、『秘密めいた話』って伽月君と兄ちゃんの事ですよね?」
さすが気付いてたね、中学一年生にして星哉よりも鋭い勘してる。まぁ三十二歳にしてあの鈍感っ振りをいかんなく発揮してる彼の方が問題あるとは思うけど……彼が空気読める様になったらそれこそつまらない男になっちゃうから。
「うん、そう。このところ誠君の気持ちの変化が顕著に表れてる様な気がしてね」
「そうなんですっ!最近兄ちゃんに牽制はかけたんですけど……」
やっぱり、勇君ちょっとずつ動いてる。伽月をけしかけたのもきっと彼だ。
「伽月とは何か話した?」
「いえ、ここ一週間は何も。ただその前にちょっと……」
「『ちょっと……』、何?」
僕は予測こそあるけれど、勇君がどんな返答をするのかじっと顔を見つめます。彼はミックスジュースを一口飲んでから僕の方に向き直りました。
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる