どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

…ちょっと気が早くないですか?…

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 「伽月何やってんの?」
 波那ちゃんはケータイをいじってる伽月君を見ています、多分ですが動物園のウェブサイトでセイコちゃん試乗の予約フォームを覗いてる……と思います。でもいつ行くの?アナタ今年お父様の七回忌じゃなかったっけ?
 「動物園のウェブサイト見てる。事前予約でセイコちゃんに乗れるんなら八月上旬にでも予約取ろうかと思って」
 「何言ってんの?その時期お父様の七回忌でしょ?バタバタするから時期ずらしな」
 「敢えて七回忌の日に行くんだよ。そしたら家族揃うし、今回早苗さんのご厚意で波那ちゃんのご実家でさせてもらえるからさ。兄貴も早出のシフトにしたら前乗り出来るっつってたし、小泉家面々も誘えばいいじゃん。誠、お前も一緒に行くか?」
 へっ⁉僕はすっかり無関係気分で話を聞いてたので想像以上にびっくりしてます。イヤイヤ、そこは家族団らんしようよ……。
 「誠君がそんな厚かましい事する訳ないでしょ……法事に参列させるなんて変な気遣わせる様な事考えてないよね?」
 そっそれはさすがに遠慮させてもらいたいです……だって僕お父様と面識無いんだよ。僕はチラッと伽月君の窺うと、いい案だと思ったんだけどなぁ、と呑気そうに頭を掻いています。
 「そのタイミングで誠君を紹介したいのは分かるけど、直接面識の無い方の法要に参列出来るほどのメンタル高校生が持ち合わせてないって」
 波那ちゃんの仰る通りでございますよ伽月君、そう言えば今日僕リビングに立ち寄ってなかったごめんなさい……。
 「あ、あの……僕まだお線香あげてないです……」
 「んじゃ今から行こうぜ」
 伽月君は僕の二の腕を掴んで軽々と立たせてくれます。もうすっかり開き直っている風に手を繋いでくるので今かなり恥ずかしいです……心なしか波那ちゃんこっちを見てニヤニヤしてるみたいだし、リビングに入ったら入ったで星哉君と泰地君も生温かい視線を送ってくるし……。
 でも彼はそんなの全くお構い無しでロウソクに火を灯してお線香にも火を点けています。お父様のご遺言で仏壇が無く、生前ご愛用されていた箪笥の上にご位牌、香炉、ロウソク、御水、ご遺影がちょんと乗っています。下にある敷いてあるクロスは波那ちゃんのお手製だそうです。

 父さん、今更だとは思うけどコイツが小田原誠だよ。長いこと友達だったし男なんだけど、今日から恋人として付き合ってく……俺は頭の中でそう話し掛けると気持ちがスーッと軽くなった。
 なぎさと話をするまでぐずぐず悩んでたのに……最初からこうすりゃ良かったって話だな、恰好付けて無理矢理友達で居続けようとしてかえっておかしな事になっちまってた。んでいざ思いが通じ合った途端俺の脳内はいかに誠と一緒にいる機会を増やそうか……などと考えていて、これまでに無く浮かれ回っている状態なんだ。
 こんな事今まで無かった、前の三人の時は(面倒臭かったから)相手に合わせてただけだったし、なぎさの時でもここまで浮かれてた記憶が無い。そもそも俺自分から告った事無かったわ(いや、だからってモテてる訳じゃねぇぞ)、流される様に付き合っていつの間にかフラれる(フッた事も無い)のが常だった様な気がする。
 「……」
 取り敢えず父さんへの報告を済ませて顔を合掌を解くと、誠はまだ手を合わせてる。何話し掛けてんだろうな?輝の事でも猛省してんのか?だとしたら俺にだって責任の一端はあるぞ、気に病むより正直に向き合っていくしかないと思う。
 少しして誠は晴れやかな表情で合掌を解くと俺の顔を見上げてきた。子供の頃からほぼこの身長差だから今更見慣れた光景ではあるんだけど……変に意識しちまって気恥ずかしくなる。
 「部屋……戻るか」
 うん、と誠が頷いてきたので俺は小さな手を握って部屋に戻る。兄さんたちはそんな姿を生温かく見ていたが敢えて無視だ、波那ちゃんはキッチンに移動して夕飯の支度始めてる。これはもしや……。
 「波那ちゃん、お手伝いさせてください」
 やっぱり言うと思ったよ、普段なら「じゃあ何してもらおうかなぁ〜」って展開なんだけど、今日は珍しく「ダメッ」とばっさり断ってきた。
 「遊園地帰りで疲れてるでしょ?それに淳二さんにここに居る事、ちゃんと伝えてる?」
 その言葉にはっ!と焦りの表情を見せた誠は慌てて部屋に入りケータイをいじり始める。俺も部屋に戻るか、と思ったところで波那ちゃんに声を掛けられた。
 「晩ご飯、部屋で誠君と食べる?」
 う〜ん、ここ一週間ほぼ部屋で飯食ってたからなぁ……折角だから皆でワイワイ食事を摂るのも良いな。
 「皆で食べたい、体も元気になってるし」
 「恋患いが治ったからでしょ?ったくヤキモキさせてくれるんだから」
 「こっ恋患いじゃないから!!!先生も仰ってたろ、『気管支炎』だって」
 「はいはい、そういう事にしておいてあげるよ」
 だからそうなんだって……そう言いたかったけど波那ちゃんは再び背を向けて支度を再開させている、なぜが上機嫌に鼻歌歌いながら。
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