どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

文字の大きさ
105 / 145
やっとこさ本編

……翌朝

しおりを挟む
 あれから一夜明けた月曜日、いつもの様に六時半に起床してまずは顔を洗おう……と思うんだけど体がダルくて動きづらいです。心なしか視界もボンヤリしてるし頭もふわふわしてて顔が熱い……昨日のキスの余韻かな?イヤイヤ、引きずり過ぎだよね?
 僕はヨロヨロと立ち上がって部屋を出ます。体がふらついて痺れも少し出てきてる……ひょっとして風邪引いた?でも今日ひかりちゃんたちにお土産渡す約束してるし、学校も楽しいから出来れば休みたくないなぁ……。
 でもどのみち熱は測っておいた方が良いよね?体温計は下にしか無いし。僕は重い体を引き摺るように階段まで到達しましたが、そこがとてつもなく難関に見えて降りるのを躊躇ってしまいます。まずは手摺をしっかりと掴んで……一段一段ゆっくりと降りていきましたが、こんな時に朝練でいそいそと支度をしている勇と鉢合ってしまいました。
 「おはよう、ちょっと端に寄ってくれる?……顔色悪いよ」
 ……おはよ〜。へっぽこな挨拶をして言われた通り端に寄ろうとしたら、視界が一気にぐらついて体が前のめりになってしまいました。これってもしかして落ちる?手摺を掴んでる手に力が入らなくて手元が滑る感覚がありました。
 
 「兄ちゃんッ!?」

 勇の声が聞こえてきましたがそこから先の記憶がありません。気が付いた時は自室のベッドで横になり、起きた時とは違うパジャマを着ていました。
 「気が付いたか?学校には“休む”って連絡入れたから今日はゆっくり休みなさい」
 声のした方に顔を向けるとスーツ姿のお父さんが僕の額に冷却シートを貼ってくれました。学校を休む事になっちゃって脳内では慌てていますが体が動いてくれません。
 「……ごめんなさい」
 「何謝ってんの?」
 お父さんは不思議そうに僕を見て笑っています。そう言えば今何時なのかな……?
 「……仕事は?」
 「大丈夫、昼からだから」
 えっ?そんな訳ないよね?あ〜また迷惑掛けちゃった……。
 「綾が起きたら仕事に行くよ、ついでにお昼も食べちゃおうかな」
 お父さんは仕事の時間が減って案外楽しそうです、だって高校生の僕がちょっと熱出したくらいで仕事休まないでしょ?子供の頃から何かに付け仕事より僕たち家族を優先してくれて、『他所のお父さんはどうか知らないけど僕は家族最優先!』と公言してるくらいですから。仕事柄海外出張の多いお母さんの方がそうもいかないので、我が家ではそれが良いバランスになっているんです。お姉ちゃんは夜勤中心、土日出勤有りの仕事に就いてて、多分僕たち子供の為極力平日に家が空かないようにしてくれているんです。
 「おはよ〜。まこ起きてたんだね」
 お姉ちゃんが寝起きの顔で部屋に入ってきました。お父さんと僕も挨拶を返すと、十時かぁと呟きました。えっ?そんな時間なの?って事は僕軽く三時間は寝てたんだね……。
 「お父さん、そろそろ変わるから支度したら?」
 「もう出来てるよ、いっそ今日は休んじゃおうかとすら……」
 お父さんは嬉しそうにそう言うと、別に良いんじゃない?とお姉ちゃんもあっさりした返事をしています。それって良いの?大丈夫なの?基本仕事ではやる気見せないよね……?するとお父さんは早速ケータイを取り出して通話を始めます。
 「……お疲れ様です、小田原です……今日は終日休みます、息子を病院に連れて行きますので……はい……はい、失礼します」
 ピッ。
 「出勤するの面倒臭くなっちゃった♪」
 「大丈夫なの?」
 「大丈夫だよ、お父さん一人居ないくらい。それで潰れるような会社なら逆にその方が良いんじゃない?」
 相変わらず凄いよその持論……でも病気の時って独りで居たくないし、お父さん特製のミルク粥が食べられる♪から嬉しさも半分……以上です。
 「じゃあ着替えてくるよ、綾も顔くらいは洗ってきたら?」
 「んー、お風呂入るわ。入る気力無く寝ちゃったから」
 「分かった、ついでに何か作るよ。誠はお粥ね、綾は何食べたい?」
 「私もお粥食べたい。何ならここで三人一緒に食べる?」
 それ良いね。二人共何だか楽しそうです。
 「病院は夕方に行くの?」
 僕は確認がてら訊ねてみます、返事は分かってるけど……。
 「「行く訳無いじゃない」」
 「……ですよねぇ」
 何故なら僕は患者として病院へ行くとほぼ間違いなく二次災害を抱えて帰ってくる……つまり誰かの病気を頂いてしまうんです。マスクを付けてて予防しても結果は同じで、それが判明して以来行きつけの診療所の先生が家に来てくれるようになりました。お見舞いや付き添いの時は大丈夫なんだけど……僕一体どんな体質なんだろう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

処理中です...